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序章
しおりを挟む「ご令嬢。私に、貴女と踊る名誉を授けてくださいませんか?」
完璧な容姿に、完璧な所作。
貴公子然としたやわらかさを持ちながらも、ひ弱さの欠片も無い凛々しい態度。
この国において、王子よりも王子らしいと言われるそのひとが、ピエレットへと手を差し伸べている。
「喜んで」
持てる礼節の限りを尽くし、淡い微笑みを浮かべながらそのひとの手を優雅に取ったピエレットは、しかし酷く緊張し、混乱していた。
この方、エヴァリスト・デュルフェ公爵令息よね?
あの、王子殿下より王子らしいと言われる。
現在進行形でピエレットの手を取るエヴァリスト・デュルフェは、途轍もない有名人である。
王弟を父に持つ公爵令息であるその身分はもちろん、頭脳明晰、容姿端麗、冷静沈着、そのうえ剣聖とも言われるほどに剣の腕も立つ、と彼を誉める言葉に限りは無いと言われるほどの逸材。
今日デビュタントを迎えた貴族子息、令嬢のなかでも、文句無しで一番の注目株。
そのひとが、今。
ピエレットの手を取り、優しい笑みを浮かべて踊っている。
凄い。
リードも完璧。
それに、とても踊りやすい。
エヴァリストの踊り方は、デビュウしたての令息にありがちな、自分本位で身勝手な部分など微塵も無く、ピエレットを見つめる瞳同様、ピエレットを思いやる優しさに満ちている。
見た目だけでなく、有能さだけでもなく。
デュルフェ公爵令息って、本当に素敵な方なのね。
エヴァリストの吸い込まれそうになほどに美しい蒼の瞳を見つめ、ピエレットはこの夢のような幸運を、人生ただ一度きりのデビュタントの思い出と出来た事に、心から感謝した。
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