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第一章 ラバネス半島編
18.商会の人員面接②
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『ロンメル商会』の人員確保のために面接を行っていると、応募者の中から魔族が現れた。
ジョルドは怯えた表情をしている隣でレイミアが腰の片手剣を抜いて立ち上がる。
それを僕は片手を広げて抑えた。
「一応、応募者だから話を聞こうよ」
すると目の前に座っているアグウェルさんが礼儀正しく深々と頭を下げる。
「どうやら私の素性を知られてしまったようですね。勇者タケルに魔王が破れてから、我々の種族はグランタリア大陸をちりぢりに逃げ去ったのですよ。それから五百余年もの間、私は旅の商人として人々に溶け込んでいたわけです」
どうやら魔族だからと言って、すぐに暴れ回ることはないようだな。
それなら少しは話し合うことができるかもしれないね。
「なぜ僕達の面接に応募されたんですか? そのまま旅商人をやっていてもよかったように思うけど?」
「それはシオン様、あなたの作り出す商品に興味がでたからです。そう……あなたのそのアイデアと知識は勇者タケル、賢者タナカに似たモノがあると感じたものですから」
「シオン様は天才ですからね」
レミリアがプルルンと豊満な胸を張る。
今まで剣を手にアグウェルさんのことを警戒していたのはどこへいったの?
勇者タケル、賢者タナカ……これってアグウェルさんには僕が転生者だって気づかれてるよね。
僕が転生者だということは、父上もアレン兄上も知らないことだ。
できることなら転生者ということは誰にも知られずに隠しておくつもりだったんだけど……。
「私の勘が囁くのです。シオン様が将来的に大きなことをされるだろうと、ですからお傍で置いていただきたいのです。私のことを信じられぬなら、『奴隷紋』を交わしてもよいと私は考えています」
『奴隷紋』とは魔法による契約の一つで、奴隷に落されると施される魔法だ。
この『奴隷紋』の魔法を使うと、強制的に主従関係となり、主人の命令に逆らうと命を落すことになる。
それは魔族であっても免れないはず。
「そんなことをする必要はないよ。あなたのことは一先ず保留ということでいいかな。全ての人の面接が終わってから、もう一度、僕と二人で話をしよう」
「この男は危険です。私も共にいます」
危険かもしれないのに、レミリアが僕を一人にするわけないよね。
彼女は僕が赤ちゃんのころから着き従ってくれている。
レイミアはすでに僕の家族も同様……彼女なら信頼できるし、僕とアグウェルの話しを聞かれてもいいよね。
「わかった。僕達が話しをする時はレミリアも一緒にいてね。ではアグウェルさんは別室で待っててもらえるかな」
「仰せのままに」
そう言ってアグウェルさんは立ち上がると面接会場から去っていった。
それから後、応募者の面接は続き、最後の応募者が扉を開けて姿を現した。
あれ? 僕よりも背が小さい……子供っぽいけど子供じゃないよね?
僕は『鑑定帽』に魔力を流して、応募者を見つめる。
すると僕の頭の中にするすると情報が流れてきた。
その子供のような容姿の彼の名はアロム……年齢は三十二歳……種族はハーフリング……魔獣使い(テイマー)の能力を持っているのか。
「僕の名前はアロム。種族はハーフリングだよ。冒険者ギルドの掲示板を見て来たんだ、よろしくね」
「では、アロムは何ができるの?」
「僕は魔獣使いさ。色々な魔獣をテイムできるんだ。魔獣とだって会話できるだぜ。すごいだろ」
うーん、商会の運営に携わる人員を募集したのに、なぜこんな人達が集まってくるんだろ。
才能のある人員は多くいてもいいから、さほど気にはならないけど、やはり冒険者ギルドに依頼したのは場違いだったかもしれないな。
「商会で働いてもらうことになるけど、読み書きと計算はできるかな?」
「まっかせなさーい」
「では採用します」
「やったー! 旦那には損はさせないぜ!」
アロムは嬉しそうに立ち上がると、天井に向けて拳を突き上げた。
本人も言ってることだし、ここは信用しておこう。
別に商会の仕事ができなくても、他の仕事をしてもらえばいいし。
全ての応募者の面接がすみ、ジョルドに会場の後片付けを頼んで、僕とレミリアはアグウェルさんが待っている別室へと向かった。
アグウェルさんさんが座っている対面のソファへ、レミリアと二人で座る。
「どうして旅商人をやめられるんですか? 旅商人を続けていても支障はなかったはずですよね」
「この五百余年、我々魔族は正体を隠して、グランタリア大陸中を暮らしてきました。その中で人族に正体を見破られた同族は捕まって殺されていった。だから私達は定住をせず、旅の商人として逃げ暮らしてきたのです。正直に申し上げれば、そういう荒んだ生活に疲れたのですよ」
「それで『ロンメル商会』に雇われたいと」
「商会というよりはシオン様個人に仕えたいのです。魔族というのはプライドが高いのですよ。ですから普通の人族の下につくのは魔族の矜持がゆるさない。しかし、勇者タケルと同じ転生者であれば話は別ですからね」
やはり僕が転生者だということを、アグウェルさんは見抜いていたようだね。
うーん、これは僕の正体を隠すためにも彼を雇ったほうがいいかも……
ジョルドは怯えた表情をしている隣でレイミアが腰の片手剣を抜いて立ち上がる。
それを僕は片手を広げて抑えた。
「一応、応募者だから話を聞こうよ」
すると目の前に座っているアグウェルさんが礼儀正しく深々と頭を下げる。
「どうやら私の素性を知られてしまったようですね。勇者タケルに魔王が破れてから、我々の種族はグランタリア大陸をちりぢりに逃げ去ったのですよ。それから五百余年もの間、私は旅の商人として人々に溶け込んでいたわけです」
どうやら魔族だからと言って、すぐに暴れ回ることはないようだな。
それなら少しは話し合うことができるかもしれないね。
「なぜ僕達の面接に応募されたんですか? そのまま旅商人をやっていてもよかったように思うけど?」
「それはシオン様、あなたの作り出す商品に興味がでたからです。そう……あなたのそのアイデアと知識は勇者タケル、賢者タナカに似たモノがあると感じたものですから」
「シオン様は天才ですからね」
レミリアがプルルンと豊満な胸を張る。
今まで剣を手にアグウェルさんのことを警戒していたのはどこへいったの?
勇者タケル、賢者タナカ……これってアグウェルさんには僕が転生者だって気づかれてるよね。
僕が転生者だということは、父上もアレン兄上も知らないことだ。
できることなら転生者ということは誰にも知られずに隠しておくつもりだったんだけど……。
「私の勘が囁くのです。シオン様が将来的に大きなことをされるだろうと、ですからお傍で置いていただきたいのです。私のことを信じられぬなら、『奴隷紋』を交わしてもよいと私は考えています」
『奴隷紋』とは魔法による契約の一つで、奴隷に落されると施される魔法だ。
この『奴隷紋』の魔法を使うと、強制的に主従関係となり、主人の命令に逆らうと命を落すことになる。
それは魔族であっても免れないはず。
「そんなことをする必要はないよ。あなたのことは一先ず保留ということでいいかな。全ての人の面接が終わってから、もう一度、僕と二人で話をしよう」
「この男は危険です。私も共にいます」
危険かもしれないのに、レミリアが僕を一人にするわけないよね。
彼女は僕が赤ちゃんのころから着き従ってくれている。
レイミアはすでに僕の家族も同様……彼女なら信頼できるし、僕とアグウェルの話しを聞かれてもいいよね。
「わかった。僕達が話しをする時はレミリアも一緒にいてね。ではアグウェルさんは別室で待っててもらえるかな」
「仰せのままに」
そう言ってアグウェルさんは立ち上がると面接会場から去っていった。
それから後、応募者の面接は続き、最後の応募者が扉を開けて姿を現した。
あれ? 僕よりも背が小さい……子供っぽいけど子供じゃないよね?
僕は『鑑定帽』に魔力を流して、応募者を見つめる。
すると僕の頭の中にするすると情報が流れてきた。
その子供のような容姿の彼の名はアロム……年齢は三十二歳……種族はハーフリング……魔獣使い(テイマー)の能力を持っているのか。
「僕の名前はアロム。種族はハーフリングだよ。冒険者ギルドの掲示板を見て来たんだ、よろしくね」
「では、アロムは何ができるの?」
「僕は魔獣使いさ。色々な魔獣をテイムできるんだ。魔獣とだって会話できるだぜ。すごいだろ」
うーん、商会の運営に携わる人員を募集したのに、なぜこんな人達が集まってくるんだろ。
才能のある人員は多くいてもいいから、さほど気にはならないけど、やはり冒険者ギルドに依頼したのは場違いだったかもしれないな。
「商会で働いてもらうことになるけど、読み書きと計算はできるかな?」
「まっかせなさーい」
「では採用します」
「やったー! 旦那には損はさせないぜ!」
アロムは嬉しそうに立ち上がると、天井に向けて拳を突き上げた。
本人も言ってることだし、ここは信用しておこう。
別に商会の仕事ができなくても、他の仕事をしてもらえばいいし。
全ての応募者の面接がすみ、ジョルドに会場の後片付けを頼んで、僕とレミリアはアグウェルさんが待っている別室へと向かった。
アグウェルさんさんが座っている対面のソファへ、レミリアと二人で座る。
「どうして旅商人をやめられるんですか? 旅商人を続けていても支障はなかったはずですよね」
「この五百余年、我々魔族は正体を隠して、グランタリア大陸中を暮らしてきました。その中で人族に正体を見破られた同族は捕まって殺されていった。だから私達は定住をせず、旅の商人として逃げ暮らしてきたのです。正直に申し上げれば、そういう荒んだ生活に疲れたのですよ」
「それで『ロンメル商会』に雇われたいと」
「商会というよりはシオン様個人に仕えたいのです。魔族というのはプライドが高いのですよ。ですから普通の人族の下につくのは魔族の矜持がゆるさない。しかし、勇者タケルと同じ転生者であれば話は別ですからね」
やはり僕が転生者だということを、アグウェルさんは見抜いていたようだね。
うーん、これは僕の正体を隠すためにも彼を雇ったほうがいいかも……
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