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第一章 ラバネス半島編
37.シオン、さらわれる!
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二日間の船旅を終え、僕達はグランタリア大陸の東南東の海岸にある港街チョンタルに到着した。
チョルタンの街並みは、家々の壁の色が黄色がかった薄茶色で、屋根は全て赤茶けた瓦が敷き詰められいた。
この街はイシュガルド帝国の東の端の港町で、この街で馬車を借りて帝都イシュタルへ向かう予定となっている。
僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人は、馬と馬車を買うために馬の販売所を探していた。
販売所に行ってみると、馬の変わりに体長二メートルほどの大きさの蜥蜴がいた。
「この蜥蜴はレントリザードと呼ばれています。亜竜種の中では一番足が遅いと言われていますが、一時間に十五キロほどを楽々と走りきります。性格が従順でテイムしやすいため、グランタリア大陸では馬の代用品として重宝されている魔獣なのです」
柵に両手で握って顔を近づけると、レントリザードが「グルルルル」と喉を鳴らす。
その姿がとても可愛く見え、手を伸ばすとレントリザードが頭をこすりつけてきた。
「どうやら懐かれたようですね。このレントリザードを購入しましょうか」
「うん」
僕が頷くとアグウェルは販売所へ入って行き、二体のレントリザードと大きな馬車を購入した。
レントリザードは雑食性で何でもよく食べ、あまり水分を必要としないので、砂漠地帯や荒地を走るのに適しているという。
僕達はチョンタルの街で一泊した後、西へ向けて街道を出発した。
しばらく走っていると、地面が乾燥した荒地へと変わっていく。
アグウェルの話では、イシュガルド帝国には二本の大河が流れており、そこからたくさんの支流に分かれて川が流れているけど、地面は荒れ地が多いという。
馬車の窓から外を眺めていると、リムルが暇そうに腕を伸ばす。
「シオン様、馬車なんて面倒な旅をしないで、空を飛んでいこうよ」
「人族は空を飛べないから目立つでしょ。だから馬車で帝都イシュタルまで行くことにしたんじゃないか」
「えー雲の上を飛んでいけば問題ないよ」
僕の言葉を聞いて、リムルは不服そうに唇を尖らせる。
イシュガルド帝国は人族至上国で、亜人や獣人を見下す傾向があり、人族以外に対しては排他的なお国柄であるとアグウェルが教えてくれた。
今はアグウェルもリムルも、いつも以上に人族に近い顔へと体を変化させている。
だから自由奔放な彼女には馬車の旅は退屈かもしれないけど、もし空を飛んでいて人族に見つかったら、魔族とバレてしまうかもしれない。
だから、ここは可哀そうだけど我慢してもらおう。
馬車で五時間ほど走るとタントンという城壁街へと辿り着いた。
この街は港町チョンタルと王都イシュタルとの中間地点にあり、交易都市として栄ているという。
街の大通りには敷物を敷いた商人達がイシュガルド帝国の各地から運んできた品々を売っていた。
そして人々が歩いている中には、頭にターバンを巻いて、笛を吹いて毒蛇を操る大道芸人や、足の下に長い木靴を履いて、背丈が三メートルほどの大道芸人が大股で歩いていたりする。
……これって前世の日本の記憶にある大道芸人にそっくりなんだけど……まさか勇者タケルや賢者田中が広めた芸じゃないよね……
僕達は厩舎に馬車を止め、このタントンの街の高級宿で一泊することにした。
安宿に泊まってもよかったんだけど、値段が安い宿は風呂がないから、そうなると女性達が可哀そうだよね。
宿の料理はブリタニス王国の料理よりも甘辛かったり激辛だったりと、今まで味わったことのない料理ばかりだ。
レミリア、アグウェル、リムルの三人も異国の料理を楽しんでいるようだった。
食事を食べ終わり、レミリアとリムルは宿の大浴場へ二人で行ってしまったし、アグウェルは帝都イシュタルまでの経路を確認すると言って出かけている。
一人で窓の外を見ていると、通りの魔導ランプが通路に明かりを灯してとてもキレイだ。
ブリタニス王国も街中の通りに魔導灯はあるけど、これほどの数は多くないんだよね。
まるで昼のように明るい通りを見て、僕は外へ出たくなった。
でも一人で出かけると怒られそうなので我慢する。
何もすることがないのでベッドにゴロリと横になって、毛布に包まって寝ていると、ガタっという小さな音が鳴り、急に近くから人の気配を感じた。
「誰?」
そのことに驚いてベッドの上で上半身だけ起こして、周囲を見回していると、首筋がヒヤリとして短剣の刃が押しつけられている。
「しー、静かにしろ。動かなければ殺しはせぬでござる」
囁くような小さな声が聞こえ、僕はコクコクと小さく頷く。
すると首に当てられていた短剣が静かに外された。
恐る恐る後ろを振り向くと、灰色装束を身にまとった、僕より小さな犬の顔をした人が立っていた。
今まで亜人、獣人などの色々な人達を見てきたけど、獣の体なのに人語を話せる人と会うのは初めてだ。
「君は誰?」
「拙者のことはいいでござる。お主を誘拐するでござる」
犬の人はそう言うと、僕の口を塞いで、屋根裏の穴へと跳躍した。
そして屋根裏から屋根の上へと移動し、僕の体を肩に担いだまま、タタタタタと街の家々と飛び移っていく。
こうして僕は謎の犬の人に誘拐され、街のどこかへ連れ去られたのだった。
チョルタンの街並みは、家々の壁の色が黄色がかった薄茶色で、屋根は全て赤茶けた瓦が敷き詰められいた。
この街はイシュガルド帝国の東の端の港町で、この街で馬車を借りて帝都イシュタルへ向かう予定となっている。
僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人は、馬と馬車を買うために馬の販売所を探していた。
販売所に行ってみると、馬の変わりに体長二メートルほどの大きさの蜥蜴がいた。
「この蜥蜴はレントリザードと呼ばれています。亜竜種の中では一番足が遅いと言われていますが、一時間に十五キロほどを楽々と走りきります。性格が従順でテイムしやすいため、グランタリア大陸では馬の代用品として重宝されている魔獣なのです」
柵に両手で握って顔を近づけると、レントリザードが「グルルルル」と喉を鳴らす。
その姿がとても可愛く見え、手を伸ばすとレントリザードが頭をこすりつけてきた。
「どうやら懐かれたようですね。このレントリザードを購入しましょうか」
「うん」
僕が頷くとアグウェルは販売所へ入って行き、二体のレントリザードと大きな馬車を購入した。
レントリザードは雑食性で何でもよく食べ、あまり水分を必要としないので、砂漠地帯や荒地を走るのに適しているという。
僕達はチョンタルの街で一泊した後、西へ向けて街道を出発した。
しばらく走っていると、地面が乾燥した荒地へと変わっていく。
アグウェルの話では、イシュガルド帝国には二本の大河が流れており、そこからたくさんの支流に分かれて川が流れているけど、地面は荒れ地が多いという。
馬車の窓から外を眺めていると、リムルが暇そうに腕を伸ばす。
「シオン様、馬車なんて面倒な旅をしないで、空を飛んでいこうよ」
「人族は空を飛べないから目立つでしょ。だから馬車で帝都イシュタルまで行くことにしたんじゃないか」
「えー雲の上を飛んでいけば問題ないよ」
僕の言葉を聞いて、リムルは不服そうに唇を尖らせる。
イシュガルド帝国は人族至上国で、亜人や獣人を見下す傾向があり、人族以外に対しては排他的なお国柄であるとアグウェルが教えてくれた。
今はアグウェルもリムルも、いつも以上に人族に近い顔へと体を変化させている。
だから自由奔放な彼女には馬車の旅は退屈かもしれないけど、もし空を飛んでいて人族に見つかったら、魔族とバレてしまうかもしれない。
だから、ここは可哀そうだけど我慢してもらおう。
馬車で五時間ほど走るとタントンという城壁街へと辿り着いた。
この街は港町チョンタルと王都イシュタルとの中間地点にあり、交易都市として栄ているという。
街の大通りには敷物を敷いた商人達がイシュガルド帝国の各地から運んできた品々を売っていた。
そして人々が歩いている中には、頭にターバンを巻いて、笛を吹いて毒蛇を操る大道芸人や、足の下に長い木靴を履いて、背丈が三メートルほどの大道芸人が大股で歩いていたりする。
……これって前世の日本の記憶にある大道芸人にそっくりなんだけど……まさか勇者タケルや賢者田中が広めた芸じゃないよね……
僕達は厩舎に馬車を止め、このタントンの街の高級宿で一泊することにした。
安宿に泊まってもよかったんだけど、値段が安い宿は風呂がないから、そうなると女性達が可哀そうだよね。
宿の料理はブリタニス王国の料理よりも甘辛かったり激辛だったりと、今まで味わったことのない料理ばかりだ。
レミリア、アグウェル、リムルの三人も異国の料理を楽しんでいるようだった。
食事を食べ終わり、レミリアとリムルは宿の大浴場へ二人で行ってしまったし、アグウェルは帝都イシュタルまでの経路を確認すると言って出かけている。
一人で窓の外を見ていると、通りの魔導ランプが通路に明かりを灯してとてもキレイだ。
ブリタニス王国も街中の通りに魔導灯はあるけど、これほどの数は多くないんだよね。
まるで昼のように明るい通りを見て、僕は外へ出たくなった。
でも一人で出かけると怒られそうなので我慢する。
何もすることがないのでベッドにゴロリと横になって、毛布に包まって寝ていると、ガタっという小さな音が鳴り、急に近くから人の気配を感じた。
「誰?」
そのことに驚いてベッドの上で上半身だけ起こして、周囲を見回していると、首筋がヒヤリとして短剣の刃が押しつけられている。
「しー、静かにしろ。動かなければ殺しはせぬでござる」
囁くような小さな声が聞こえ、僕はコクコクと小さく頷く。
すると首に当てられていた短剣が静かに外された。
恐る恐る後ろを振り向くと、灰色装束を身にまとった、僕より小さな犬の顔をした人が立っていた。
今まで亜人、獣人などの色々な人達を見てきたけど、獣の体なのに人語を話せる人と会うのは初めてだ。
「君は誰?」
「拙者のことはいいでござる。お主を誘拐するでござる」
犬の人はそう言うと、僕の口を塞いで、屋根裏の穴へと跳躍した。
そして屋根裏から屋根の上へと移動し、僕の体を肩に担いだまま、タタタタタと街の家々と飛び移っていく。
こうして僕は謎の犬の人に誘拐され、街のどこかへ連れ去られたのだった。
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