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第一章 ラバネス半島編
40.授与式!
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商業ギルドの建物の中にある宿のリビングで休憩していると、褐色の肌を持つ青年―オルデンから声をかけられた。
彼はイシュガルド帝国の南にあるダルシアン王国の商人だという。
人好きのする笑顔を絶やさないオルデンは、会話も上手く僕達はすぐに仲よくなった。
「へえー白磁の陶器に代わる『ボーン食器』か。陶器よりも軽くて割れにくくて、それに光沢があって肌触りもいい食器か。それは興味があるな」
「僕もオルデンの扱ってる商品に興味があるよ」
「僕の仕入れている商品は食品関係、特にスパイス類かな。スパイスは大陸の長旅でも腐ることがないからね。後は塩だったり小麦だったり、トウモロコシだったり、米だったりを取引しているよ」
僕はオルデンの『米』という言葉に思わず取り乱す。
「米があるの?」
「米やトウモロコシなんて鳥や豚の肥料じゃないか。イシュガルド帝国の周辺の国々なら幾らでもあるよ」
……スパイス……米……カレーが食べられるじゃないか!
僕が転生してから十年……前世の日本の記憶はあるけど、料理の味についておぼろげになっているモノもある。
でもカレー味だけは強烈に覚えている。
「今、スパイスと米ってありますか?」
「ああ、帝都イシュタルまで荷を運んできたばかりだからね」
「ぜひ、米とスパイスを買わせてください」
「条件があるよ。シオンの所で開発した香水と石鹸を今度、取引させてくれないか? 香水の瓶は小さいし、石鹸は割れないから、荷運びに便利だからね」
「わかりました。授与式が終わったら、本格的な交渉しましょう」
オルデンと握手を交わして僕はリビングを後にした。
翌日、僕、レミリア、アグウェル、リムル、サイゾウの五人は帝都イシュタルに詳しいと言うオルデンの案内で帝都観光に出かけた。
街の料理屋に入って、帝都名物だという「ハンバーグ」を食べることになった。
「ここの料理は上手いだろう。勇者タケルが伝えたという「ハンバーグ」は絶品だからな」
「衣がカラッとしていて美味しいです」
「これ幾つでも食べられるわ」
レイミアもリムルも美味しそうに「ハンバーグ」を頬張っているけど、僕はちょっと納得できない。
「このフライの衣のない「ハンバーグ」ってないかな?」
「勇者様が伝えた「ハンバーグ」は衣のつけたモノだからな。衣のない「ハンバーグ」なんて伝わってないぞ」
僕の問いに、オルデンは首を傾げる。
このフライの衣がついた「ハンバーグ」って、メンチカツのことじゃないか……勇者タケルが伝えた「ハンバーグ」が間違った形で伝承されたのかな?
僕は料理ができないから、ディルメス侯爵家の邸へ戻ったら、レミリアにレシピを教えて、本当のハンバーグを作ってもらおう……
帝都観光を終えた僕達は宿へと戻り、その夜はちょっとした宴会となった。
授与式の当日、僕達五人とオルデンは、商業ギルドの建物の中にある大広間に来ている。
ランクが昇格してメダルの授与を待つ、商会の人々がたくさん集まってきていた。
僕達五人とオルデンは目立たないように広間の後ろの椅子にすわる。
「それではこれより、商会のランクの昇格とメダルの授与を始めます」
壇上ではギルド支部長のリンメイさんが、次々と商会の名前と代表者の名前と呼んでいく。
呼び出された代表者は、壇上に上ってリンメイさんから功績を発表され、メダルを受け取っていった。
「次、ダルシアン王国、オルデン商会、代表者オルデン君、壇上へ」
受賞者は次々とメダルをもらっていき、オルデンもシルバーのメダルをもらって嬉しそうにメダルを撫でている。
そして一番最後に僕の名前が呼ばれた。
「ブリタニス王国、『ロンメル商会』、代表者シオン・ディルメス、壇上へ」
「はい」
席から立ち上がり壇上へ向かう。
僕が目の前に立つとリンメイさんがニッコリと微笑んで、大きな声を張り上げる。
「『ロンメル商会』は次々と新商品を開発し、その商品も品質に優れ大ヒットとなり、ブリタニス王国内へ広がっていきました。『ぼーん食器』は人々の食卓を華やかにし、石鹸は人々を清潔にし、香水は人々に良い香りを届けました」
言葉を切って大広間に集まる人々が、静かに自分に注目が集まるのを待ってから、リンメイさんは大きく頷き、また話を再開した。
「そして『ロンメル商会』の開発したダイエット薬は、女性を美しく変身させ、世の中の女性に希望を与えました。私もダイエット薬は友人から取り寄せています。まさに画期的な商品です。みなさんの商会でも、ぜひ『ロンメル商会』の商品を扱ってください。では、その偉大な栄誉を称え、シルバーのメダルを授与いたします。シオン君、おめでとう」
「ありがとうございます」
リンメイさんから首にシルバーのメダルをかけてもらい、僕は大広間にいる皆に向けて大きく手を振る。
すると椅子に座っていた商会の代表者達が次々と立ち上げり、大きな拍手を送ってくれた。
皆が待っている席へ戻るとレイミアとリムルが僕に抱き着いてくる。
「シオン様、おめでとうございます」
「シオン様、かっこよかったよー」
ちょっと恥ずかしかったけど、商会のランクもシルバーになったし、メダルも貰えて最高の一日だよね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて第一章 ラバネス半島編《完結》となります。
第二章 グランタリア大陸編へと続きます。
読者の皆様、この作品を読んでいただきありがとうございます。
感想などがあれば、コメントいただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
作者 潮ノ海月
彼はイシュガルド帝国の南にあるダルシアン王国の商人だという。
人好きのする笑顔を絶やさないオルデンは、会話も上手く僕達はすぐに仲よくなった。
「へえー白磁の陶器に代わる『ボーン食器』か。陶器よりも軽くて割れにくくて、それに光沢があって肌触りもいい食器か。それは興味があるな」
「僕もオルデンの扱ってる商品に興味があるよ」
「僕の仕入れている商品は食品関係、特にスパイス類かな。スパイスは大陸の長旅でも腐ることがないからね。後は塩だったり小麦だったり、トウモロコシだったり、米だったりを取引しているよ」
僕はオルデンの『米』という言葉に思わず取り乱す。
「米があるの?」
「米やトウモロコシなんて鳥や豚の肥料じゃないか。イシュガルド帝国の周辺の国々なら幾らでもあるよ」
……スパイス……米……カレーが食べられるじゃないか!
僕が転生してから十年……前世の日本の記憶はあるけど、料理の味についておぼろげになっているモノもある。
でもカレー味だけは強烈に覚えている。
「今、スパイスと米ってありますか?」
「ああ、帝都イシュタルまで荷を運んできたばかりだからね」
「ぜひ、米とスパイスを買わせてください」
「条件があるよ。シオンの所で開発した香水と石鹸を今度、取引させてくれないか? 香水の瓶は小さいし、石鹸は割れないから、荷運びに便利だからね」
「わかりました。授与式が終わったら、本格的な交渉しましょう」
オルデンと握手を交わして僕はリビングを後にした。
翌日、僕、レミリア、アグウェル、リムル、サイゾウの五人は帝都イシュタルに詳しいと言うオルデンの案内で帝都観光に出かけた。
街の料理屋に入って、帝都名物だという「ハンバーグ」を食べることになった。
「ここの料理は上手いだろう。勇者タケルが伝えたという「ハンバーグ」は絶品だからな」
「衣がカラッとしていて美味しいです」
「これ幾つでも食べられるわ」
レイミアもリムルも美味しそうに「ハンバーグ」を頬張っているけど、僕はちょっと納得できない。
「このフライの衣のない「ハンバーグ」ってないかな?」
「勇者様が伝えた「ハンバーグ」は衣のつけたモノだからな。衣のない「ハンバーグ」なんて伝わってないぞ」
僕の問いに、オルデンは首を傾げる。
このフライの衣がついた「ハンバーグ」って、メンチカツのことじゃないか……勇者タケルが伝えた「ハンバーグ」が間違った形で伝承されたのかな?
僕は料理ができないから、ディルメス侯爵家の邸へ戻ったら、レミリアにレシピを教えて、本当のハンバーグを作ってもらおう……
帝都観光を終えた僕達は宿へと戻り、その夜はちょっとした宴会となった。
授与式の当日、僕達五人とオルデンは、商業ギルドの建物の中にある大広間に来ている。
ランクが昇格してメダルの授与を待つ、商会の人々がたくさん集まってきていた。
僕達五人とオルデンは目立たないように広間の後ろの椅子にすわる。
「それではこれより、商会のランクの昇格とメダルの授与を始めます」
壇上ではギルド支部長のリンメイさんが、次々と商会の名前と代表者の名前と呼んでいく。
呼び出された代表者は、壇上に上ってリンメイさんから功績を発表され、メダルを受け取っていった。
「次、ダルシアン王国、オルデン商会、代表者オルデン君、壇上へ」
受賞者は次々とメダルをもらっていき、オルデンもシルバーのメダルをもらって嬉しそうにメダルを撫でている。
そして一番最後に僕の名前が呼ばれた。
「ブリタニス王国、『ロンメル商会』、代表者シオン・ディルメス、壇上へ」
「はい」
席から立ち上がり壇上へ向かう。
僕が目の前に立つとリンメイさんがニッコリと微笑んで、大きな声を張り上げる。
「『ロンメル商会』は次々と新商品を開発し、その商品も品質に優れ大ヒットとなり、ブリタニス王国内へ広がっていきました。『ぼーん食器』は人々の食卓を華やかにし、石鹸は人々を清潔にし、香水は人々に良い香りを届けました」
言葉を切って大広間に集まる人々が、静かに自分に注目が集まるのを待ってから、リンメイさんは大きく頷き、また話を再開した。
「そして『ロンメル商会』の開発したダイエット薬は、女性を美しく変身させ、世の中の女性に希望を与えました。私もダイエット薬は友人から取り寄せています。まさに画期的な商品です。みなさんの商会でも、ぜひ『ロンメル商会』の商品を扱ってください。では、その偉大な栄誉を称え、シルバーのメダルを授与いたします。シオン君、おめでとう」
「ありがとうございます」
リンメイさんから首にシルバーのメダルをかけてもらい、僕は大広間にいる皆に向けて大きく手を振る。
すると椅子に座っていた商会の代表者達が次々と立ち上げり、大きな拍手を送ってくれた。
皆が待っている席へ戻るとレイミアとリムルが僕に抱き着いてくる。
「シオン様、おめでとうございます」
「シオン様、かっこよかったよー」
ちょっと恥ずかしかったけど、商会のランクもシルバーになったし、メダルも貰えて最高の一日だよね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて第一章 ラバネス半島編《完結》となります。
第二章 グランタリア大陸編へと続きます。
読者の皆様、この作品を読んでいただきありがとうございます。
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作者 潮ノ海月
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