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第2章 グランタリア大陸東部編

54.登校初日から大変です!

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サイフォン魔法学院の編入試験に合格した次の日、僕は制服に身を包み、鞄を持って家を出た。

そして商業地区と繁華街を抜け、魔法学院を目指して歩いていく。


ちょっと距離はあるけど、散歩をしてるようで、これはこれでアリだよね。


徐々に学院に近づくにつれ、制服を着た学生達が同じ方向へ歩いている。

門の衛兵に挨拶をして校舎の中へ入り、学院長室へ向かった。

扉を開けると、ツーピースの服を着た学院長がニコリと微笑む。


「昨日、ウェルム先生から君のことは報告を受けている。筆記試験は満点で合格、魔法試験では的を破壊したと聞いた。成績でいえば、この学院でもトップと言えるね。よってSクラスへの編入とする。Sクラスには実力もそうだが、家柄の良い生徒が多い。なるべく揉め事だけは避けるように」

「善処いたします」


……Sクラス……相当な家柄の貴族の子息が集まっているのかもしれないな……


ウェルム先生に案され、僕はSクラスの教室へと向かった。


「くれぐれも騒ぎを起こすな。我々に迷惑をかけるな」


……まだ授業にも出席してもいないのに、注意されるなんて理不尽を感じる……


扉を開けて教室へ入ると六人の生徒が席に座って待っていた。

生徒達はどう見ても僕より年上に見える。


通常、サイフォン魔法学院に入学する生徒は十二歳からだから……十歳の僕が編入してくるのが変なんだよね……


ウェルム先生は演壇の前に達、生徒達を見回す。


「今日より編入生が入ることになった」

「シオン・ディルメスです。ラバネス半島にあるブリタニス王国から来ました。よろしくお願いいたします」

「チッ半島の田舎貴族の息子が何しに来たんだよ」


ツンツン頭の男子が、顔を歪めて舌打ちを鳴らす。


グランタリア大陸の内陸部の人達は、ラバネス半島のことを田舎とバカにする傾向があることは知っている……その一言を僕は忘れないからね……

それからウェルム先生の授業が始まったんだけど、歴史や地理なんて昔に父上の書庫で読んでいるから知ってるし、数学といっても中学レベルなので眠くなってきた。

思わずウトウトして机に突っ伏して寝入ってしまった。


「シオン・ディルメス、初日の授業からいい度胸じゃないか」


怒鳴られる声に目を覚ますと、目の前にウェルム先生が立っていた。

すると教室の後ろの席に座っていた、長い茶髪を後ろで一つにまとめている女子が立ち上がる。


「サイフォン魔法学院の先生や生徒を愚弄するような行動は許せないわ」

「別に愚弄なんてしてないし、ただ眠かったから寝ちゃっただけだよ」

「言い訳は無用です」

「ラバネス半島の田舎貴族なんかやっちまえ!」

「やめろよ、お前達こそ、騒ぎをやめろよ!」


前に座っていた青髪のサラサラヘアーの男子がツンツン髪の男子を言葉を抑える。

すると生徒達は押し黙り、微妙な沈黙が教室内を包んだ。


サラサラヘアーの男子は席から立ち上がり、僕のすぐ近くまで歩いてくる。


「僕がクラウス・イシュガルド、イシュガルド帝国と隣接しているファラレスト皇国の第二皇子だ。僕は君がこの学院のことをバカにしたとは思っていない。しかし、講義中に寝ていては不謹慎だ。もし眠たければ教室を出て行きたまえ」

「……すみません……」


……この男子がこのクラスの生徒のトップなのかな?……今回は学院へ登校の初日から居眠りをしていた僕が悪いし……これからは眠らないようにしないとね……


これで騒動は終わりそうと思っていると、僕の近くに座っている、赤髪のユルフワヘアーの女の子がニッコリと微笑む。


「別に退屈な講義は寝ててもいいんじゃないかな。勉強を疎かにして後から困ったことになるのは本人でしょ。誰もかれも模範的な学生になる必要はないと思うな―」

「そうだぜ。勝手に仕切ってんじゃねーぞ、クラウス」

「それが皇国の皇子に対する態度か。カイロス、お前に決闘を申し込む」

「望む所だぜ」


なぜかツンツン髪のカイロスとクラウスが揉め始めた。

すると演壇の上に両手を置いて、ウェルム先生が怒鳴る。


「お前達、いい加減にしろ! それに授業中は静かにしろ!」


……こんなに騒ぐ生徒ばかりだとウェルム先生も疲れるよね……だから僕に迷惑をかけるなって言ったのか……今回は騒ぎの原因を作ってホントにごめんなさい……


ウェルム先生の一喝により、教室内は静かになる。

それから生徒達も大人しくなり、講義は順調に進んで昼休憩になった。

するとクラウスと茶髪の女子は一緒に教室を出ていく。

その後にカイロスもフラリと教室からいなくなった。

教室の後ろを見ると、おかっぱ頭の灰色髪と目が合ったけど、視線を逸らされてしまった。

教室の中を見回すとフワユルヘアーの女の子が手招きをしている。


「僕に何か用かな?」

「私の名はエレミアよ。あなたはお弁当を持ってきてるの? それなら一緒に食べない? 私のお弁当は料理長が作った特別製よ」


……フフフ、よくぞ僕がお弁当を持参していると見抜いたね。僕のお弁当はレミリアが作ってくれた特製弁当なのだよ……


エレミアの隣に座ってお弁当を広げていると、エレミアがふわりと微笑む。


「シオン、あなた、魔法が使えないでしょ」


え……登校初日で、もう僕が生身で魔法を使えないことがバレたの?……
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