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第2章 グランタリア大陸東部編

53.編入試験に合格!

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部屋の中へ入ると、痩身の男の人と、片眼鏡をかけた女性の人がソファに座っていた。

僕が挨拶をすると、片眼鏡の女性が立ち上がって手を差し伸べてくる。

「ああ、君がシオン君か、私はこの魔法学院の学院長を務めるエヴェという。リンメイから話は聞いているよ。十歳の若さで商会のランクがゴールドのやり手商人だと。しかし、サイフォン魔法学院はそれほど甘くないぞ。なにせグランタリア大陸中の貴族の子息の中で、優秀な者達が集まっているのだからね。編入試験には手心は加えない。まずは頑張ってくれたまえ」

そして学院長との挨拶を済ませると、痩身の男が「付いてきたまえ」と言って、ソファから立ち上がった。

僕と男は廊下を歩いて、誰もいない教室の中へ入る。

僕は用紙の置かれた席に座り、男は演壇を前に立つ。

「私は学院で教師をしているウェルムだ、これより筆記試験を始める。用紙は五枚、制限時間は三時間だ」

用紙を広げてみると、結構な数の問題が書かれている。


計算問題、簡単な国語、地理、歴史、魔法学……幼少の頃から、父上の蔵書を読み漁ってきている僕にとっては簡単な問題ばかりだ……


それに前世の日本の記憶があるから、中学ぐらいの計算も楽勝に解けるしね。


二時間ほど、スイスイと問題を解き、机にうつ伏せになって目をつむっていると、ウェルム先生がゴホンと咳をする。


「まだ残り一時間あるぞ」

「全問、答えを書きました」

「そんなバカな!」


ウェルム先生は用紙を両手で掴むと、スゴイ速さで内容を吟味していく。

そして目を見開いて、パラパラと用紙を地面に落した。


「全問正解だと!」

「筆記試験は得意なんです」


伊達に前世の日本で、大学受験を潜り抜けてきた訳ではないのだよ。

このエクストリア世界の筆記試験ならば合格する自信はある。


それでも満点を取るとは思ってなかったけどね……


ウェルム先生は僕の顔を見て、ギリギリと歯が噛む。


「帝国サイフォン魔法学院のレベルはこの程度ではないぞ。甘く見るな、次は魔法の実施試験だ」


二人で教室を出て、校舎の裏にある訓練場に場所を移す。


「壁際に並んでいる的に魔法を当ててみろ。どんな威力の魔法でも構わん。的には衝撃吸収の魔法が付与されているので、壊れることはない」


お……ラノベで定番のシーンだね。

それじゃあ、『火球』の魔法でも使いますか。


懐から魔法ペンを取り出して、空中に『劫火』と魔法文字を描き、的の方向へ魔法ペンを向ける。

すると魔法ペンの先にバレーボールほどの青白い火球が現れ、的に向かって飛んでいった。


どがぁぁああああああーーーーーーん!


……的が粉々になったんですけど?


的が粉砕する様子に、ウェルム先生は額から汗を流し、大きく片腕を振るう。


「的を破壊した上に無詠唱だと!」

「もう一つ、的に当てますか?」

「実力のほどはわかった。合格でいいぞ。エヴェ学院長には私から伝えておく。来週から学園に通うように。今日は事務室に寄って、職員から制服や鞄などを貰って帰るようにな」

「本日はありがとうございました」


魔法一発なら、それほど魔力は消費しないけど、連続で魔法を撃てば魔力が枯渇して、ヤバかったかもしれないな……魔力量は人の平均だからね……


校舎の中へ入り、ウェルム先生は学院長室へと歩いて行った。

僕は言われた通りに事務室へ寄って、制服、鞄、靴、教科書を受け取り、持ってきていた背嚢型のマジックバックに入れて、宿へと帰った。

すると既にレミリアとリムルが部屋に戻っていた。


「試験はどうでしたか?」

「うん、無事に合格したよ」

「さすがはシオン様です、おめでとうございます」

「レミリア達はどうだったの?」

「適度な大きさの家を買い取って参りました。それと街の大通りの店舗を確保いたしました」

「さすがは仕事が早いね」

「シオン様、私もほめてー」


僕とレミリアが互いに見つめながら話していると、シオンが体を割り込ませて僕の体に抱き着いてきた。

ムニュっとした二つの果実の弾力が腕に伝わってくる。


肉体は子供でも精神は大人だから……これはヤバイよ……


僕達三人は支払い済ませて宿を出て、レミリア達が購入したという家へと向かう。

購入した家は繁華街に近い商業地区にあり、二階建ての家だった。


「部屋数は幾つあるの?」

「二階に三部屋と一階に一部屋、それとリビング、ダイニング、キッチン、お風呂、そして地下には荷物を入れる地下室があります。この家を建てたのは貴族のようで、内装については問題ありません」


思っていたより設備が整ってるね。


家に入って荷物を置いて一休みし、それから街の大通りにある空き店舗へと向かった。

店舗は三階建ての建物で、既にカウンターや棚などが設備されている。

僕が学校に行っている間、リムルにはこの店長を務めてもらうつもりだ。


……僕は魔法学院のことで忙しいし、レミリアは何かと僕の手伝いで忙しいからね。


帝都イシュタルの店舗では、ダルシアン王国で色々と起こったことを踏まえて、大々的には商売をせず、今回は魔法学院で繋がりを持った貴族の子息達の伝手を利用して、顧客を伸ばすつもりだ。


大通りにある家具屋から大きな姿見を買ってきて、三階の部屋に設置する。

それを《創造魔法陣》で転移ゲートに変え、転移できるかどうか確かめた。


さあ、これで明日から帝国サイフォン魔法学院の生徒だ、学校の貴族の子供達に商品を広げるぞ!
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