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第2章 グランタリア大陸東部編
52.魔法ペンを作ろう!
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帝都イシュタルから王都ダルトンへ戻ってきて数日、僕とオルデンはダルシアン王国の王宮へ呼び出された。
どうやらメイリンさんからの書状が王宮に届いたようで、グラントル宰相閣下から三年契約の申し出があり、王宮が全面的に費用を出して、『ブラーフ&パンピ』の工場も建設してくれるという。
断る理由もないので、当初の予定通り王宮と『ロンメル商会』との間で契約は成立した。
これから工場で作られた『ブラーフ』と『パンピ』は、王都ダルトンの衣服職人の元へ卸され、そこで刺繍や装飾を施されて、王都中の商人が販売することになった。
『ロンメル商会』の店舗では今までのように爆発的に売れないかもしれないけど、工場で生産した商品を衣服職人に卸せるので、売り上げとしては伸びていくことになる。
王宮との契約が締結してから一週間後、王都ダルトンに端に工場の建設が始まり、それから二週間後に工場が稼動を始めた。
王宮が募集した工員によって、工場で『ブラーフ』と『パンピ』は生産され衣服職人の元へと卸されていく。
そして二週間後、王都ダルトンでは刺繍やフリルの装飾が施された『ブラーフ』と『パンピ』が、商人の手によって売られるようになった。
その頃、オルデンとサイゾウに王都ダルトンの店舗を任せ、僕、レミリア、リムルの三人は馬車に乗り込み、帝都イシュタルへと出発した。
アグウェルは『ロンメル商会』の統括として、ラバネス半島の店舗と工場を管理するため、王都ブリタスの店舗へと戻っていった。
帝都イシュタルの商業ギルド東支部に到着した僕達三人は、メイリンさんの執務室と向かった。
扉を開けると彼女は両手を広げて、僕達を歓迎してくれた。
「やっと来たわね。これでシオン君の商会のランクはゴールドよ。帝国サイフォン魔法学院への編入手続きは済ませておいたわ。だから気軽に試験を受けてきて」
え……そういえば試験があるのを忘れてた……
言ったほうがいいかどか迷いながら、僕は口を開く。
「実は僕、生身で魔法を使えないんですけど……」
「え? 魔法陣は作れるんでしょ?」
「魔法陣は作れますし、魔法陣に魔力を流せば魔法は使えますけど……生身では無理です」
「えっと……生身でなくても、魔法陣があれば魔法が使えるんだから問題ないでしょ……たぶん」
そう言ってリンメイさんは頬を引きつらせる。
メイリンさんのと話が終わった後、僕達三人は宿を取って休むことにした。
その翌日、レミリアとリムルの二人には、適度な大きさの店舗や邸の物件を探してもらっている。
その間に僕は、羊皮紙に魔法陣を描かなくても、魔法が発動する方法を考えていた。
僕の《創造魔法陣》のスキルは、ひらがな、かたかな、英語の三つの文字を重ねてつづることができれば、わざわざ円形の魔法陣にする必要はない。
魔法陣の中央にある円形の部分にイメージの絵があったほうが、詳細なイメージを創造できる程度の差はあるけど特段に問題はない。
魔法を使いたい時、羊皮紙に向かって魔法陣をいちいち描くのは面倒臭いし、時間もかかる。それに編入試験で合格できないかも。
そこで考えついたのは補助具を作ること、例えば空中はどこにでも文字を描けるペンとか……
空中に魔法文字(ひらがな、カタカナ、英語の三つを重ねて書いた文字)を描けば、魔法を発動することができる。
多少は時間はかかるけど、羊皮紙を持ち歩いて、地面に敷いて毎回描くよりは効率がいい。
そこまで考えて、僕は宿の一室の床に羊皮紙を置いて、そこにペンで魔法陣を描いていく。
描くのは『空中に描くことのできる、インク内臓ペン』の魔法陣だ。
材料は宿に置いてあったペンとインク、それと僕の血。
ホントは魔獣の血がいいけど、僕の血でも魔力を保有しているからね。
サラサラサラと魔法陣を描いて、その上にペンとインクを置いて、僕の血をペンに垂らす。
そして手を置いて魔法陣に魔力を通すと、ペン、インク、僕の血が融合して、一つの羽ペンが姿を現した。
「よし、魔法ペンと名付けよう」
試しに、僕は空中にペンで魔法文字で『炎』と書いてみる。
すると空中に文字が浮かび上がり、ボッと炎が灯った。
よし、この魔法ペンさえあれば、編入試験も乗り切れるぞ!
そして次の日、帝都イシュタルの中央にある、帝国サイフォン魔法学院へ、編入試験を受けるために、僕は一人で赴いた。
レミリアとリムルの二人には、まだ店舗や邸が見つからず、今日も物件を探してもらっている。
高く囲まれた壁づたいを歩き、門の衛兵にリンメイさんからの書状を見せた。
厳めし顔の衛兵の許可を得て門を潜ると、シンメトリーの庭園が広がっていて、その中央の通路を通って大きな校舎の中へと歩いていく。
受付のお姉さんに声をかけ、編入試験を受けに来たことを説明し、学院長室まで案内してもらった。
部屋の中へ入ると、痩身の男の人と、片眼鏡をかけた女性の人がソファに座っていた。
「誰だい?」
「編入試験を受けに来ました。シオン・ディルメスです。よろしくお願いします」
どうやらメイリンさんからの書状が王宮に届いたようで、グラントル宰相閣下から三年契約の申し出があり、王宮が全面的に費用を出して、『ブラーフ&パンピ』の工場も建設してくれるという。
断る理由もないので、当初の予定通り王宮と『ロンメル商会』との間で契約は成立した。
これから工場で作られた『ブラーフ』と『パンピ』は、王都ダルトンの衣服職人の元へ卸され、そこで刺繍や装飾を施されて、王都中の商人が販売することになった。
『ロンメル商会』の店舗では今までのように爆発的に売れないかもしれないけど、工場で生産した商品を衣服職人に卸せるので、売り上げとしては伸びていくことになる。
王宮との契約が締結してから一週間後、王都ダルトンに端に工場の建設が始まり、それから二週間後に工場が稼動を始めた。
王宮が募集した工員によって、工場で『ブラーフ』と『パンピ』は生産され衣服職人の元へと卸されていく。
そして二週間後、王都ダルトンでは刺繍やフリルの装飾が施された『ブラーフ』と『パンピ』が、商人の手によって売られるようになった。
その頃、オルデンとサイゾウに王都ダルトンの店舗を任せ、僕、レミリア、リムルの三人は馬車に乗り込み、帝都イシュタルへと出発した。
アグウェルは『ロンメル商会』の統括として、ラバネス半島の店舗と工場を管理するため、王都ブリタスの店舗へと戻っていった。
帝都イシュタルの商業ギルド東支部に到着した僕達三人は、メイリンさんの執務室と向かった。
扉を開けると彼女は両手を広げて、僕達を歓迎してくれた。
「やっと来たわね。これでシオン君の商会のランクはゴールドよ。帝国サイフォン魔法学院への編入手続きは済ませておいたわ。だから気軽に試験を受けてきて」
え……そういえば試験があるのを忘れてた……
言ったほうがいいかどか迷いながら、僕は口を開く。
「実は僕、生身で魔法を使えないんですけど……」
「え? 魔法陣は作れるんでしょ?」
「魔法陣は作れますし、魔法陣に魔力を流せば魔法は使えますけど……生身では無理です」
「えっと……生身でなくても、魔法陣があれば魔法が使えるんだから問題ないでしょ……たぶん」
そう言ってリンメイさんは頬を引きつらせる。
メイリンさんのと話が終わった後、僕達三人は宿を取って休むことにした。
その翌日、レミリアとリムルの二人には、適度な大きさの店舗や邸の物件を探してもらっている。
その間に僕は、羊皮紙に魔法陣を描かなくても、魔法が発動する方法を考えていた。
僕の《創造魔法陣》のスキルは、ひらがな、かたかな、英語の三つの文字を重ねてつづることができれば、わざわざ円形の魔法陣にする必要はない。
魔法陣の中央にある円形の部分にイメージの絵があったほうが、詳細なイメージを創造できる程度の差はあるけど特段に問題はない。
魔法を使いたい時、羊皮紙に向かって魔法陣をいちいち描くのは面倒臭いし、時間もかかる。それに編入試験で合格できないかも。
そこで考えついたのは補助具を作ること、例えば空中はどこにでも文字を描けるペンとか……
空中に魔法文字(ひらがな、カタカナ、英語の三つを重ねて書いた文字)を描けば、魔法を発動することができる。
多少は時間はかかるけど、羊皮紙を持ち歩いて、地面に敷いて毎回描くよりは効率がいい。
そこまで考えて、僕は宿の一室の床に羊皮紙を置いて、そこにペンで魔法陣を描いていく。
描くのは『空中に描くことのできる、インク内臓ペン』の魔法陣だ。
材料は宿に置いてあったペンとインク、それと僕の血。
ホントは魔獣の血がいいけど、僕の血でも魔力を保有しているからね。
サラサラサラと魔法陣を描いて、その上にペンとインクを置いて、僕の血をペンに垂らす。
そして手を置いて魔法陣に魔力を通すと、ペン、インク、僕の血が融合して、一つの羽ペンが姿を現した。
「よし、魔法ペンと名付けよう」
試しに、僕は空中にペンで魔法文字で『炎』と書いてみる。
すると空中に文字が浮かび上がり、ボッと炎が灯った。
よし、この魔法ペンさえあれば、編入試験も乗り切れるぞ!
そして次の日、帝都イシュタルの中央にある、帝国サイフォン魔法学院へ、編入試験を受けるために、僕は一人で赴いた。
レミリアとリムルの二人には、まだ店舗や邸が見つからず、今日も物件を探してもらっている。
高く囲まれた壁づたいを歩き、門の衛兵にリンメイさんからの書状を見せた。
厳めし顔の衛兵の許可を得て門を潜ると、シンメトリーの庭園が広がっていて、その中央の通路を通って大きな校舎の中へと歩いていく。
受付のお姉さんに声をかけ、編入試験を受けに来たことを説明し、学院長室まで案内してもらった。
部屋の中へ入ると、痩身の男の人と、片眼鏡をかけた女性の人がソファに座っていた。
「誰だい?」
「編入試験を受けに来ました。シオン・ディルメスです。よろしくお願いします」
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