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第2章 グランタリア大陸東部編

76.竜種をテイムしてみた!

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魔獣をテイムするアイテムを開発した僕は、アグウェルと二人でオートルザム山脈へ向かった。

大空を飛翔し、オートルザム山脈に近づくと、切り立った高い山々が見えてきて、その山々の周囲を竜種やグリフォンなど、空飛ぶ大型魔獣が飛び回っている。


「では魔獣の口を大きく開けさせますので、シオン様は『従順になる肉』を口の中へ放り投げてください」

「了解だよ」


僕が頷くと、アグウェルは飛行速度を上げて、どんどんと飛んでいるグリフォンへ近づく。

すると、それを察知したグリフォーンが威嚇の鳴き声をあげた。

しかし、そんなことを気にする様子もなく、アグウェルはグリフォーンの間近まで近づく。

間近で見たグリフォンは怒っていて、めちゃくちゃ怖いけど、顔を体も大きいから開いた口にへモノを放り込みやすい。

僕は肩から吊り下げてあった革鞄のマジックバックから『従順な肉』を取り出し、ポイッと口の中へ投げ込む。


「地面に着地して待機して!」


肉を食べたグリフォンは僕の言っている言葉の意味が理解できるのか、威嚇するのをやめて、地上へと下りていった。


「シオン様、その調子です。どんどん肉を投げ込んでください」

「うん、なんだか楽しくなってきたよ」


調子に乗ってきた僕とアグウェルは、一時間もしない間に、二十体の竜種やグリフォンに『従順になる肉』を食べさせた。


地上に下りると、グリフォンや竜種が集まって僕達を見ている。

その迫力にちょっとビビる。

正直に言って、怖い。


僕が怯えていると、アグウェルがそっと僕の背中に手を置く。


「襲われても私が対処します。それに魔獣達は襲ってこないでしょう。大丈夫ですから、『テイムできる果実』をあの魔獣達に与えてください。そうすればシオン様は魔獣達の主です」


アグウェルと二人で、魔獣一体一体の前に立ち、『テイムできる果実』を与えていく。

全ての魔獣に果実を食べさせた後、魔獣達を見回してアグウェルが大声をあげる。


「これより、シオン様がお前達の主です。従順に役割を果たせば、殺すことはいたしません。素直にシオン様と私の指示に従いなさい」


すると竜種とグリフォンは大人しく、地面にうずくまった。

たぶん、従順の意志を示してくれているようだ。


「テイムも無事にできたことだし、帝都イシュタルへ戻ろうか」

「疑問に思ったのですが、これだけの大型魔獣を帝都の上空へ連れていってよろしいのでしょうか?」

「あ……」


沢山の大型の魔獣が、いきなり都市の空を滑空したら、それを見た街の住人が魔獣が襲ってきたと勘違いしてパニックを起こすよね……重要なことを忘れていたよ……


どうしようか戸惑っていると、アグウェルがニヤリと笑う。


「まずは各国の王家に話を通して置かれるのがよろしいかと」

「そうだよね……」

「まずは帝都にお戻りになって、それから私が先触れとして、各王家に内容を伝えて参りましょう」

「うん、よろしくお願いね」


僕とアグウェルはテイムした魔獣達を、一旦はオートルザム山脈に残して、帝都イシュタルの店舗へと帰ることにした。


帝都の店舗に戻ったアグウェルは、すぐに黒霧になって姿を消した。

たぶん各国を巡って、各国の王家に、僕が空飛ぶ魔獣をテイムしたことを伝えに行ったのだろう。

三時間ほど待っていると、黒霧からアグウェルが姿を現した。


「国々の王家に伝えておきました。全ての王家が至急でシオン様に会いたいと申しています。特にセレーネ王妃は大至急でと言っておりました」


う……ヤバイ……やっぱり怒られるのかな……


慌ててソファから立ち上がり、身支度を整えて執務室にある姿見の転移ゲートから、フィーネの私室へと転移した。

すると既に長いソファに座って、フィーネとセレーネ王妃が僕を待っていた。


「アグウェルさんから話を聞きました。グリフォンや竜種をテイムしたと。空飛ぶ魔獣を使役するということはどういうことか、シオン君はわかっていますか?」

「……ただ荷運びに使おうと思っただけで……セレーネ王妃様の言っている意味はわかりません……」

「小さな竜を倒すにも、Aランクの冒険者がパーティを組んで戦いを挑まなければならないのです。そのような大型魔獣を何体もテイムしているということは、一国の軍に匹敵する戦力をシオン君は手に入れたということです」


……グリフォンや竜種を戦いに使えば、国の兵団とも戦えるほどの戦力になるのか……戦いに使うって発想をしていなかったから……これは僕のミスだね……


「すみません。今から魔獣達のテイムを解除してきます」

「そのようなことは申していません。シオン君が魔獣達を使役したことは、既に各国の王家が知っていることでしょう。今更、テイムを解除しても手遅れですよ。シオン君が大型魔獣を使役できることは知られているのですからね」

「……ごめんなさい」


僕が謝ると、セレーネ王妃は優しいフワッとした笑みを浮かべる。


「何か勘違いしているみたいね。私は咎めているんじゃないの。むしろ褒めたいぐらいなのよ。だってシオン君がそれだけの力を手に入れたということは、ラバネス半島の国々が力を持ったと同じ意味ですもの」

「どういう意味ですか?」

「仮定の話だけど、もしブリタニス王国がどこかの国に攻撃されたら、シオン君は私達を助けてくれないの?」

「もちろん助けますよ。だってブリタニス王国には父上もいるし、アレン兄上、フィーネもセレーネ王妃も。この王国には大切な人達がいっぱいいますから」

「だから今回の件で、私が叱ることなんて一つもないの。だってシオン君が協力してくれた人達を見限ったりできないのを知ってるから、だからシオン君の力は私達の力なの。大いに胸を張っていいわ」


……さすがセレーネ王妃、そんな視点で考えたことなかったよね……やっぱり王妃様ってすごいね……
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