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24.路地での襲撃
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ドワーフ達の工房で、僕とエミリア姉上は、昼過ぎまでエミ―と道具作りについて語り合った。
このまま話し続けると、エミ―の作業の邪魔になるということで、僕達は工房を後にした。
大通りを目指して細い路地を歩いていると、周囲から何やら気配を感じる。
違和感を察知した僕は、エミリア姉上の手を握って足を早めた。
「いきなり、早足になってどうしたの?」
「変な気配を感じる。姉上も気をつけて」
何度か路地の角を曲がって気配から逃げようとしたけど、違和感が消えない。
これはちょっとマズイかもと思い始めた時、路地の前から人影が現れた。
振り返って後ろを見ると、後ろからも人影が迫ってくる。
どうやら完全に囲まれたようだ。
冒険者風の男が、剣を構えて舌なめずりをする。
「へへへ、逃げようとしたってムダだぜ」
「お前達は何者だ?」
「思った通り、近くで見ると二人共、かなりの上玉だぜ。女の方は少し年齢が経っているが、仕込めば、夜が楽しみだ」
「私はまだ十六よ!」
エミリア姉上、怒るところは、そこじゃないから!
男達の様子から、こちらの話しを聞く耳はなさそうだ。
「大人しく捕まれよ。ガキ相手にムダな労力は使いたくないんだ」
「イアンは必ず私が守るんだから!」
そうエミリア姉上は叫びながら、頭上に向けて手を伸ばし、光魔法を放った。
爆発的な光が周囲に広がり、油断していた男達は光を見て、一瞬の内に目をやられ、悲鳴をあげて地面に転げまわる。
それと同時に僕は「暗殺者」の加護を開放して、身体を強化した脚を活かして、まだ呆然と立っている男達の背後へと回り、手刀で意識を刈り取った。
時間にして五分ほどで光は消え、細い路地には気絶した男達が倒れている。
僕達王家は幼少の頃から剣術、体術などの基礎訓練を叩きこまれ、今でも暇な時に王宮騎士団の兵士から指導を受けている。
それに、それぞれに固有の加護を持っているから、生半可な腕の者なら僕達を倒すことは難しい。
地面に倒れている男達に冷たい視線を送り、エミリア姉上が手をパンパンと叩く。
「これからどうするの?」
「襲われた理由も聞きたいし、このまま放置しておくこともできないね。とりあえず街の警備兵に来てもらうのが良さそうだね」
「わかったわ。私が呼んでくる」
エミリア姉上はニコリと笑うと、路地を大通りの方向へ走っていった。
あんなに勢いよく走っていかなくても、途中で転ばなければいいけど。
しばらく待っていると、エミリア姉上が警備兵を連れて戻ってきた。
警備兵達はキビキビと体を縄で縛り、平手打ちで男達の意識を取り戻させる。
そして縄を繋いで詰所へと連行していった。
このまま警備兵に任せてしまえばいいのだけど、なぜ襲われたのか理由を知らないと気持ちが悪いよね。
僕とエミリア姉上は話し合って、男達が連行された警備兵の詰所へ行くことにした。
詰所を訪ねると、先ほどとは違う警備兵が入口に立っていた。
「ここは兵の詰所だぞ。子供の来るような所ではない。さっさとどこかへ行け」
一般の警備兵が僕やエミリア姉上のことを知らないのは仕方がない。
僕は懐から王家の紋章を刻んだ短剣を取り出し、警備兵に見せる。
「僕の名はイアン・クリトニア。先ほど路地で僕達を襲った男達のことを知りたい。詰所の中へ入れてくれるかな?」
「その紋章は王家……まさかイアン殿下ですか。どうか先ほどの無礼をお許しください。私には病気の母親と、まだ幼い息子と娘がいます。どうか不敬罪だけはご勘弁を」
庶民が王家を愚弄することは、不敬罪で死刑となる。
警備兵がビビッて恐れ慄いても無理ないな。
「僕達のことを知らなかったのだからいいよ。それより中に入れてくれる?」
「はい、只今、お連れ致します」
詰所の中に一緒に入ると、警備兵は片手を広げて、同僚の警備兵に向けて叫んだ。
「イアン殿下が城より視察に来られた! 皆、無礼がないように!」
「俺、隊長に伝えてくる!」
一人の若い兵士が焦った表情で椅子から立ち上がり、脱兎のごとく詰所から出ていった。
なんだか予想と違って、大事になってきたぞ。
心の中でハラハラしていると、隣にいたエミリア姉上が僕の肩にポンと手を置く。
「警備兵達にしてみれば、王家が兵の詰所を訪れるなんて思ってもいない異例のことよ。大騒ぎになっても仕方ないわ。今回は諦めましょう」
「そ……そうだね……」
頭の中に、ローランド兄上と、 シルベルク宰相の怒った顏が目に浮かぶ。
城に戻ったら、素直に謝ろう。
警備兵に案内されて、階段をおりて地下室へ向かうと、ちょうど僕を襲った男達が、警備兵から尋問を受けていた。
全ての男達の尋問を終えると、調書を取っていた兵士が椅子から立ち上がり、胸に拳を当てて僕達に敬礼をする。
「殿下達の服装から、裕福な金持ちの子供と判断し、かどわかそうとしたようです。殿下達を襲った男達は人さらいの常習犯であることが判明いたしました。どうやら背後にいる「蜘蛛」の組織に子供達を売りさばいていたようです」
「蜘蛛」の組織!? そんな組織が王都にあるのか!
今まで聞いたこともないけど、いったいどんな組織なんだ?
このまま話し続けると、エミ―の作業の邪魔になるということで、僕達は工房を後にした。
大通りを目指して細い路地を歩いていると、周囲から何やら気配を感じる。
違和感を察知した僕は、エミリア姉上の手を握って足を早めた。
「いきなり、早足になってどうしたの?」
「変な気配を感じる。姉上も気をつけて」
何度か路地の角を曲がって気配から逃げようとしたけど、違和感が消えない。
これはちょっとマズイかもと思い始めた時、路地の前から人影が現れた。
振り返って後ろを見ると、後ろからも人影が迫ってくる。
どうやら完全に囲まれたようだ。
冒険者風の男が、剣を構えて舌なめずりをする。
「へへへ、逃げようとしたってムダだぜ」
「お前達は何者だ?」
「思った通り、近くで見ると二人共、かなりの上玉だぜ。女の方は少し年齢が経っているが、仕込めば、夜が楽しみだ」
「私はまだ十六よ!」
エミリア姉上、怒るところは、そこじゃないから!
男達の様子から、こちらの話しを聞く耳はなさそうだ。
「大人しく捕まれよ。ガキ相手にムダな労力は使いたくないんだ」
「イアンは必ず私が守るんだから!」
そうエミリア姉上は叫びながら、頭上に向けて手を伸ばし、光魔法を放った。
爆発的な光が周囲に広がり、油断していた男達は光を見て、一瞬の内に目をやられ、悲鳴をあげて地面に転げまわる。
それと同時に僕は「暗殺者」の加護を開放して、身体を強化した脚を活かして、まだ呆然と立っている男達の背後へと回り、手刀で意識を刈り取った。
時間にして五分ほどで光は消え、細い路地には気絶した男達が倒れている。
僕達王家は幼少の頃から剣術、体術などの基礎訓練を叩きこまれ、今でも暇な時に王宮騎士団の兵士から指導を受けている。
それに、それぞれに固有の加護を持っているから、生半可な腕の者なら僕達を倒すことは難しい。
地面に倒れている男達に冷たい視線を送り、エミリア姉上が手をパンパンと叩く。
「これからどうするの?」
「襲われた理由も聞きたいし、このまま放置しておくこともできないね。とりあえず街の警備兵に来てもらうのが良さそうだね」
「わかったわ。私が呼んでくる」
エミリア姉上はニコリと笑うと、路地を大通りの方向へ走っていった。
あんなに勢いよく走っていかなくても、途中で転ばなければいいけど。
しばらく待っていると、エミリア姉上が警備兵を連れて戻ってきた。
警備兵達はキビキビと体を縄で縛り、平手打ちで男達の意識を取り戻させる。
そして縄を繋いで詰所へと連行していった。
このまま警備兵に任せてしまえばいいのだけど、なぜ襲われたのか理由を知らないと気持ちが悪いよね。
僕とエミリア姉上は話し合って、男達が連行された警備兵の詰所へ行くことにした。
詰所を訪ねると、先ほどとは違う警備兵が入口に立っていた。
「ここは兵の詰所だぞ。子供の来るような所ではない。さっさとどこかへ行け」
一般の警備兵が僕やエミリア姉上のことを知らないのは仕方がない。
僕は懐から王家の紋章を刻んだ短剣を取り出し、警備兵に見せる。
「僕の名はイアン・クリトニア。先ほど路地で僕達を襲った男達のことを知りたい。詰所の中へ入れてくれるかな?」
「その紋章は王家……まさかイアン殿下ですか。どうか先ほどの無礼をお許しください。私には病気の母親と、まだ幼い息子と娘がいます。どうか不敬罪だけはご勘弁を」
庶民が王家を愚弄することは、不敬罪で死刑となる。
警備兵がビビッて恐れ慄いても無理ないな。
「僕達のことを知らなかったのだからいいよ。それより中に入れてくれる?」
「はい、只今、お連れ致します」
詰所の中に一緒に入ると、警備兵は片手を広げて、同僚の警備兵に向けて叫んだ。
「イアン殿下が城より視察に来られた! 皆、無礼がないように!」
「俺、隊長に伝えてくる!」
一人の若い兵士が焦った表情で椅子から立ち上がり、脱兎のごとく詰所から出ていった。
なんだか予想と違って、大事になってきたぞ。
心の中でハラハラしていると、隣にいたエミリア姉上が僕の肩にポンと手を置く。
「警備兵達にしてみれば、王家が兵の詰所を訪れるなんて思ってもいない異例のことよ。大騒ぎになっても仕方ないわ。今回は諦めましょう」
「そ……そうだね……」
頭の中に、ローランド兄上と、 シルベルク宰相の怒った顏が目に浮かぶ。
城に戻ったら、素直に謝ろう。
警備兵に案内されて、階段をおりて地下室へ向かうと、ちょうど僕を襲った男達が、警備兵から尋問を受けていた。
全ての男達の尋問を終えると、調書を取っていた兵士が椅子から立ち上がり、胸に拳を当てて僕達に敬礼をする。
「殿下達の服装から、裕福な金持ちの子供と判断し、かどわかそうとしたようです。殿下達を襲った男達は人さらいの常習犯であることが判明いたしました。どうやら背後にいる「蜘蛛」の組織に子供達を売りさばいていたようです」
「蜘蛛」の組織!? そんな組織が王都にあるのか!
今まで聞いたこともないけど、いったいどんな組織なんだ?
応援ありがとうございます!
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