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12話 悠斗の告白!
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沙耶さんと小春ちゃんがお菓子コーナーへ向かった後、俺と悠斗は食料品の肉コーナーへと歩いていく。
道すがら、悠斗は沙耶さんについて幾つも質問してきた。
フルネーム、年齢、住居、どんな仕事、どんな趣味を持っていて、何が好きなのか。
沙耶さんの苗字と名前は教えたが、女性の年齢を他人が漏らすのは失礼だと思い伏せておいた。
住居についても、凪咲さんと悠斗を会わすわけにもいかないので、その他の質問も含めて黙秘させてもらった。
職業についても、セレブお嬢様の侍女と正直に言うこともできない。
それに沙耶さんの趣味や趣向なんて、俺だって昨日初めて会ったのに、知りようもないからな。
隣を歩く悠斗に向けて、俺はムスっとした表情を向ける。
「女性の個人情報を他人から聞こうとするな」
「……すっごい美人だから彼氏とかいるんだろうな」
「そういうことは自分で聞けよ」
「そうだな。聞いてみるよ」
悠斗は頬を赤くし、うんうんと頷いている。
食肉コーナーには幾つもの肉が海外産牛肉が並び、その隣には本格的な肉屋も設置されていた。
俺と悠斗は肉屋の牛肉の値段を見て回る。
棚には国産牛がギッシリ並べられていた。
俺の家の食卓に上る肉といえば、海外産の肉が多い。
できれば国内産の高級和牛を食べてみたいよな。
唾を飲み込み、食品棚を覗いていると、隣で悠斗がぽつりと言葉を漏らす。
「小春にも美味しい肉を食べさせてやりたいな」
「俺の家でも、いつも合成肉だよ」
「肉を食べられるだけいいじゃないか、僕の家は母子家庭だから、無理をいうわけにいかないのさ」
悠斗も俺と同じ家庭環境だったのか。
俺の父親は、俺が六歳の時に交通事故に遭い急死した。
事故の保険金もあり、それに母さんも大手IT関連会社に勤務しているので、俺も凛姉も不自由なく暮らせている。
しかし、母さんは毎日、夜遅くまで残業ばかりで、最近では会社で寝泊りしていることも多い。
俺と悠斗が話していると、パンパンに膨らんだビニール袋を持って、小春ちゃんが駆けてきた。
その後からニコニコと微笑んでいる沙耶さんも歩いてくる。
「お兄ちゃん、沙耶ちゃんに買ってもらったー」
「すごいな。ビニール袋一杯じゃないか。よかったな小春、きちんとありがとうって言うんだぞ」
「沙耶ちゃん、ありがとう」
「いいのよ、気にせず食べてね。小春ちゃんと買い物ができて楽しかったわ」
俺達の傍に来た沙耶さんは優しい笑顔を浮かべ、小春ちゃんの頭を撫でる。
沙耶さんにこんな一面があったなんて。
彼女の笑みから、すごく子供が好きなことが伝わってくる。
「購入する牛肉は選びましたか?」
「目移りして、まだ選べてません」
「仕方ありませんね。では私が注文しましょう。店員さん、シャトーブリアンを1キロと、A5の和牛のお肉を10キロください」
は? シャトーブリアン? A5?
そんな高級牛肉はテレビで見たことがあるだけで、食べたことがないぞ。
それも合計で11キロなんて明らかに買い過ぎだ。
「沙耶さん、幾ら何でも買い過ぎですよ。俺の家は家族3人ですから、そんなに食べられません」
「大丈夫です。冷凍しておけば問題ありません」
「いやいや、おかしいですって」
俺の言葉に沙耶さんは首を傾げる。
そういえば沙耶さんは侍女ではあるが、凪咲さんの親類。
つまりセレブ家族の血縁だ。
凪咲さんもそうだが、沙耶さんも庶民の常識からズレていてもおかしくない。
どうすれば彼女を説得できるのか……
俺が悩んでいると、小春ちゃんが悠斗のズボンを掴んで揺する。
「お兄ちゃん、私もお肉食べたいよー」
「そうだ、悠斗達にもおすそ分けしましょう。凪咲さんも食べたいでしょうから、三等分して」
「それはいい案ですね。店員さん、さっきの注文と同じ品を、後二つ用意してください」
「ちがーう!」
沙耶さんの言葉を聞いて、頬に両手を当て、俺は思わず叫んでしまった。
そんな俺を放置し、彼女はさっさとクレカで支払いを済ませてしまった。
そして店員から肉の入ったビニール袋を受け取り、沙耶さんはニコニコと悠斗の手に持たせる。
すると悠斗は潤んだ瞳で沙耶さんを見つめた。
「今日会ったばかりなのにありがとうございます。沙耶さんは天使です。さっき会った時から一目惚れしてました。僕と結婚してください」
「沙耶ちゃん、天使ー! けっこーん!」
落ち着け、悠斗。
高級和牛を貰って、テンションMAXになったのはわかるが、結婚は気が早すぎるだろ。
沙耶さんとは瞬間的に会っただけだし、彼女のこと何も知らないよな。
まずは、お付き合いから始めるとか段階があるだろ。
心の中で突っ込んでいると、沙耶さんが悩まし気な表情をする。
道すがら、悠斗は沙耶さんについて幾つも質問してきた。
フルネーム、年齢、住居、どんな仕事、どんな趣味を持っていて、何が好きなのか。
沙耶さんの苗字と名前は教えたが、女性の年齢を他人が漏らすのは失礼だと思い伏せておいた。
住居についても、凪咲さんと悠斗を会わすわけにもいかないので、その他の質問も含めて黙秘させてもらった。
職業についても、セレブお嬢様の侍女と正直に言うこともできない。
それに沙耶さんの趣味や趣向なんて、俺だって昨日初めて会ったのに、知りようもないからな。
隣を歩く悠斗に向けて、俺はムスっとした表情を向ける。
「女性の個人情報を他人から聞こうとするな」
「……すっごい美人だから彼氏とかいるんだろうな」
「そういうことは自分で聞けよ」
「そうだな。聞いてみるよ」
悠斗は頬を赤くし、うんうんと頷いている。
食肉コーナーには幾つもの肉が海外産牛肉が並び、その隣には本格的な肉屋も設置されていた。
俺と悠斗は肉屋の牛肉の値段を見て回る。
棚には国産牛がギッシリ並べられていた。
俺の家の食卓に上る肉といえば、海外産の肉が多い。
できれば国内産の高級和牛を食べてみたいよな。
唾を飲み込み、食品棚を覗いていると、隣で悠斗がぽつりと言葉を漏らす。
「小春にも美味しい肉を食べさせてやりたいな」
「俺の家でも、いつも合成肉だよ」
「肉を食べられるだけいいじゃないか、僕の家は母子家庭だから、無理をいうわけにいかないのさ」
悠斗も俺と同じ家庭環境だったのか。
俺の父親は、俺が六歳の時に交通事故に遭い急死した。
事故の保険金もあり、それに母さんも大手IT関連会社に勤務しているので、俺も凛姉も不自由なく暮らせている。
しかし、母さんは毎日、夜遅くまで残業ばかりで、最近では会社で寝泊りしていることも多い。
俺と悠斗が話していると、パンパンに膨らんだビニール袋を持って、小春ちゃんが駆けてきた。
その後からニコニコと微笑んでいる沙耶さんも歩いてくる。
「お兄ちゃん、沙耶ちゃんに買ってもらったー」
「すごいな。ビニール袋一杯じゃないか。よかったな小春、きちんとありがとうって言うんだぞ」
「沙耶ちゃん、ありがとう」
「いいのよ、気にせず食べてね。小春ちゃんと買い物ができて楽しかったわ」
俺達の傍に来た沙耶さんは優しい笑顔を浮かべ、小春ちゃんの頭を撫でる。
沙耶さんにこんな一面があったなんて。
彼女の笑みから、すごく子供が好きなことが伝わってくる。
「購入する牛肉は選びましたか?」
「目移りして、まだ選べてません」
「仕方ありませんね。では私が注文しましょう。店員さん、シャトーブリアンを1キロと、A5の和牛のお肉を10キロください」
は? シャトーブリアン? A5?
そんな高級牛肉はテレビで見たことがあるだけで、食べたことがないぞ。
それも合計で11キロなんて明らかに買い過ぎだ。
「沙耶さん、幾ら何でも買い過ぎですよ。俺の家は家族3人ですから、そんなに食べられません」
「大丈夫です。冷凍しておけば問題ありません」
「いやいや、おかしいですって」
俺の言葉に沙耶さんは首を傾げる。
そういえば沙耶さんは侍女ではあるが、凪咲さんの親類。
つまりセレブ家族の血縁だ。
凪咲さんもそうだが、沙耶さんも庶民の常識からズレていてもおかしくない。
どうすれば彼女を説得できるのか……
俺が悩んでいると、小春ちゃんが悠斗のズボンを掴んで揺する。
「お兄ちゃん、私もお肉食べたいよー」
「そうだ、悠斗達にもおすそ分けしましょう。凪咲さんも食べたいでしょうから、三等分して」
「それはいい案ですね。店員さん、さっきの注文と同じ品を、後二つ用意してください」
「ちがーう!」
沙耶さんの言葉を聞いて、頬に両手を当て、俺は思わず叫んでしまった。
そんな俺を放置し、彼女はさっさとクレカで支払いを済ませてしまった。
そして店員から肉の入ったビニール袋を受け取り、沙耶さんはニコニコと悠斗の手に持たせる。
すると悠斗は潤んだ瞳で沙耶さんを見つめた。
「今日会ったばかりなのにありがとうございます。沙耶さんは天使です。さっき会った時から一目惚れしてました。僕と結婚してください」
「沙耶ちゃん、天使ー! けっこーん!」
落ち着け、悠斗。
高級和牛を貰って、テンションMAXになったのはわかるが、結婚は気が早すぎるだろ。
沙耶さんとは瞬間的に会っただけだし、彼女のこと何も知らないよな。
まずは、お付き合いから始めるとか段階があるだろ。
心の中で突っ込んでいると、沙耶さんが悩まし気な表情をする。
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