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第2話 出会い

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 学校からの帰り道。俺《アオイナル》と藤宮仁《フジミヤジン》は繁華街で少し遊んで家に戻る途中だった。トヨタの高級車が猛スピードで交差点に向かって走ってくる。結構、急いでるんだな。交差点の信号が右折信号になる。トヨタの高級車はそれほどスピードを落とさずに、交差点へ突入し、右へと曲がっていく。スピードの出し過ぎだと思うけど、それほど問題ない。


 おいおい直進車が赤信号なのに止まらずに走ってくるぞ。これは事故になるんじゃいないですか?俺は不謹慎にも少し興奮して、交差点の周りを見る。


 すると金髪の美少女が交差点の信号を待っている。その位置だと、事故に巻き込まれる危険性があるりそうだぞ。これは俺が助けて、美少女のヒーローになるしかねー。美少女とお近づきになれるチャンスかも。


「おい、変なことを考えるなよ。お前、事故に巻き込まれたいのか。これ以上、交差点に近寄るのは危険だから、やめとけ」


 親友の仁からストップの声が聞こえてくるが、その時には俺は既にトップスピードで美少女めがけて、突っ走っていた。美少女と出会えるチャンスなんてそうそうねー。この機会の逃したら、カースト底辺の俺には一生、回ってこないかもしれない。これは神様がくれた、俺の運試しだ。俺はこの神の運試しに勝ってみせる。


 頭の中でそんなへんな妄想を膨らませて、俺はひたすら美少女に向かって、充血した目を吊り上がらせて、ひたすら走る。俺を見た美少女の唇が「ヒッ」と動くのがわかる。俺の顔を見て、1歩後退るのはやめて。


 俺も必死だ。顔を繕ってる暇なんてない。どうして、足を上下に動かしているだけなのに、こんなに足が重いんだ。トップスピードで走っているはずなのに、全然スピードに乗った気がしない。


 交差点のほうをみると、見事に右折車と直進車が衝突を起こして、右折しようとしていたトヨタの高級車が横転して、美少女が立っている方向へ猛烈なスピードで、キーキー言わせて、横滑りしていく。


 間に合うのか俺。このままだと美少女に追い付ても、2人とも車に巻き込まれて、あの世逝きだぞ。俺も美少女と昇天したいけど、それは違う意味での昇天で、命を捨てる意味じゃない。


 必死で美少女のところまで駆け走る。斜め後ろから車が横滑りしてくる音が聞こえる。この音って恐怖しかありませんから。


 美少女に駆け寄って両手で、美少女を抱きかかえて、無理やりに歩道を走らせる。すぐ後ろに車が迫っているのがわかる。美少女を抱えて、思いっきり前にジャンプする。俺達がいたところへ車が通りすぎ、民家の家へ突っ込んでいく。


 いやーあぶなかったですなー。本当にガチの間一髪。美少女、あのまま茫然と立ってたら、間違いなく死んでたぞ。やったー。俺って美少女のヒーローじゃん。ほっぺにチューくらいはしてくれるよね。それくらい期待してもいいよね。俺ってヒーローなんだから。


 胸に抱え込んでいた。美少女を見ると、目を強くつむって、体をガチガチと震わせている。俺は夢中で走っていたからわからなかったけど、この美少女からは車が猛スピードで自分に迫ってくるのを目のあたりにしてだろう。その恐怖は半端ではないと思う。


「お嬢さん。大丈夫ですか?もう事故に巻き込まれることはありません。俺が助けた蒼井奈留《アオイナル》。お嬢さん、聞こえてる?」


 金髪の美少女は俺の顔を見て目をパチクリとさせている。状況が飲み込めていないようだ。


「だから、必死に走って、俺が君を助けたの。俺の名前は蒼井奈留。わかったかな?」


 美少女は少し引きつった顔で、俺を見つめている。


 なんて美しい美少女なんだ。金髪セミロング・フェミニンウェーブの髪型がフワフワした感じできれ可愛い。切れ長の二重まぶたで、目元は少し目尻が垂れていて、優しい茶系の瞳をしている。鼻筋がきれいに通っていて、形のより唇がグリスで濡れている。スタイルは良く、胸はたわわに実った果実のようだ。それにしてもデカい。そして腰はギュッとしまっている。小顔の8等身体形。


 俺が見てきた女子の中で1番の美少女。神様、俺はゲットしたよ。俺は心の中で神様に手を合わせた。


 俺は美少女を助け起こして、『俺の名前は蒼井奈留。きちんと覚えてね』と連呼していると、頭の上から拳骨が降ってきた。仁だ。こいつ追い付いてきたのか。これからが俺のアピールタイムなのに邪魔するな。


「ああ、大丈夫だったか?綾瀬?奈留の馬鹿がうるさくてすまん。助かってよかったな。怪我してないか?」


 ん?お前達2人は知り合いなのか?俺は美少女の顔を見たことなんてないぞ。


「ああ、奈留が馬鹿ですまん。たぶん綾瀬の顔を知らないんだわ。こいつ人の顔と名前を覚えるのが下手でさ。クラスメイトの顔も覚えていないんだ。悪い奴じゃない。すこしおかしいけど、許してやってくれ」


 おい、仁、その言い方はなんだ。俺がこの美少女を救ったヒーローだぞ。お前ももっと尊敬しろ。


 車が民家に突っ込んだ方向を見ると、車は完全に塀をぶち壊して民家の玄関に突っ込んでいる。


 このまま、この場所にいたらヤバい。パトカーのサイレンの音が遠くから聞こえてくる。このままだと事故を見ていた俺達は警察に任意同行を求められるだろう。それは面倒だ。


「このままここにいたらヤバいぞ。早く逃げよう。警察に事情を聴かれたら厄介だ」


 仁が自慢気に美少女に声をかけている。ちょっと待て。俺も今そのことを言おうと思ってたのに、格好いいところを横取りするな。後からやってきて、なぜ仁のほうが助けたみたいな感じになってだよ。おかしいだろう。


 美少女は仁の話を聞くとコクリと頷いて、立ち上がろうとするが、立ち上がれない。仁が美少女の足を触ろうとする手を俺は力いっぱいに止める。これは俺の役目だ。俺の目は血走っていたに違いない。目が吊り上がっているのが自分でもわかる。


 仁は引きつった笑いを浮かべて『お前が足を調べてやれ』と偉そうにいう。この横取り野郎が。


 俺は優しくゆっくりと美少女の足を触って、くるぶしの関節をくるりと回して、怪我をしていないかどうか確かめる。なんてキメの細かい肌なんだ。色白でスベスベしていて、気持ちいい。


 また俺の頭に拳が落とされる。


「いつまで足をさすってるんだ。怪我がないなら、もういいだろう」


 ことごとく俺の至福のひと時を奪っていく、お前は悪魔か。しかし、足がたてないんだろう。くるぶしの関節がおかしくなっていなかったら、膝の関節か。


 俺の座っている位置から膝の関節を見ると、スカートの丈が短くてピンクのレースのパンティがちらりと見える。おお、これは膝関節がおかしいに決まっている。早く膝の関節をみてみないと。


 俺が膝に手を持っていこうとすると、また頭を仁に殴られた。


「お前を見てると、ただのスケベ親父にしか見えない。何を考えてるんだ。真面目にやれよ」


 わかっている。わかっているよ頭では。しかし、あのちらりと見える布地が俺を興奮させるんだから仕方がない。これは男の本能だ。仁、お前だってわかるだろう。


 仁は俺を軽蔑したような冷たい視線で、俺の行動を監視している。


「あの。痛い所は別にないんだけどさ。腰が抜けちゃったみたいで、歩けないのよ」


 美少女がはじめて口を開いた。俺のイメージしていた美少女口調と違う。


「さっきからチラチラと私のパンティー見て興奮してるでしょ。こんな時でも元気だね。もっと見せてあげようか」


 ん?美少女はこんなことを言うのか?見せてくれるというもんなら、いくらでも見せてほしい。俺は鼻を膨らませて、鼻息を荒くする。すると美少女はスカートの裾をひぱって、パンティーを隠してしまった。言ってること、やってることが違うじゃん。


「あんた、童貞でしょう。童貞くんが鼻を膨らませちゃって、鼻息荒くして、少しは落ち着きなよ」


 くっ、からかわれたのか。美少女の顔がニヤニヤと笑っている……クソッ。


「おい、お前達、遊んでいる場合じゃないぞ。パトカーの音が聞こえないのか。ずいぶんと大きくなってきたぞ」


仁が冷静な声で辺りを見回して、俺と美少女に声をかける。


 俺は美少女の前に背を向けて、しゃがむ。


「おんぶするから、俺の背中へ乗れよ。家まで送って行ってやるから」

「そう言って、私の胸の感触を背中で感じたいんでしょ。童貞くん」


 くっ、なぜ俺の考えていたことが見透かされてるんだ。美少女、お前はエスパーか……クソッ。


 美少女は抵抗なく、俺の背中に乗ると首に手を回して、後ろから抱きついてきた。美少女から甘い良い香りがする。そして背中に当たったダイナミックな胸の柔らかさ。俺が動くたびにムニュムニュと柔らかく変形する。これは気持ちがいい。


 やっと俺の苦労が報われた。これだよ。これが欲しかったんだよ。


「助けてくれてありがとう。これくらいはサービスするよ。家に帰るまで、私の胸を楽しんでね。家に帰ってから、おかずにすんなよ」


 そう言って、美少女は俺の背中に豊満な胸をこすり付けてくる。サービス満点。花丸だ。


「奈留、本気で綾瀬をおかずにするなよ。軽蔑するぞ。男性は紳士であるべきだ。いつもお前に言ってるだろう」


 くっ、この感触だけで、1週間は楽しめると思っていたのに、へんなストップをかけるなよ……クソッ。


 童貞同盟の仁に言われたくない。なぜ仁は童貞に誇りを持ってるのか、意味がわからん。知りたくもない。


 俺は美少女を背負って、仁と3人で美少女の家のあるマンションまで向かった。


 俺達が去っていく反対の方向からパトカーが何台も走ってきて、救急車も2台到着する。誰も死んでなければいいけどな。あれだけの大事故だ。何が起こってもおかしくない。


 俺達は警察につかまらないうちに現場をあとにして、夕日に照らされている交差点をコソコソと立ち去った。
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