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九尾の狐の菊の陰謀
17☆先祖と子孫
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「そんな壮大なお話があったのですね……」
殿下がお知りになる九尾の狐、菊の伝説にその場にいるものは感嘆する。
「まぁ、あらすじみたいなものだけど……そう…菊の白狐の事は伝えられているんだよ」
菊は満足げに、時には過去のことを思い出して恥ずかしく悶えていた。
菊という言霊はそういう乙女の心を抱いた時の名前の呪になっているのだなと、威津那は思う。
どうりで憎々しげに自分を見るのかを理解した。
「威津那のご先祖さまを恨んでも仕方ないかもしれないけど、その時も阿部野と香茂家は菊の恩人でもあるのね?」
橘は三つの家系が今も続いていて祝皇を支えていることを誇りに思う。
そんな気分の橘をじっ……と菊は見つめて、
《それは違うぞ。お前の先祖の恩人なのは私の方だ。それに私も先祖の一人だ。》
「え?」
橘は目が点になる。
「えっ……?うそ⁉︎それって、九尾の狐のあなたが私のご先祖さまでもあるの?」
父の晴綛も叔父の明綛も半妖だから阿部野の遠いご先祖さまのウカノミタマの血筋で狐耳と尻尾を持っていたのかとずっと思っていたけれど、叔母は菊が宿ってのことのようだ。
ずっとウカノミタマがご先祖さまだと思ってた橘には衝撃的だった。
九尾の狐は伝説上では国を滅ぼす大妖怪なのだから……
「知らないのは橘だけだと思うよ。陰陽寮長はその事実を忘れ去らせようとしてたみたいだけど……」
「それわかるわ…ぺろっとホントのこと喋っちゃいそうだもん、それ言ったらドン引きされるし、不名誉になっちゃうかもだし。」
咲羅子は嘘をつけない橘の悪い癖で威津那に季節の出生がバレたことを思い出し納得する。
「ううっ…そうかも……」
橘は自分の悪い癖を指摘されて耳と尻尾をしゅんと下げる。
「僕は橘のそういう素直なとこ好きだよ」
威津那はそう言って橘の頭を撫で慰める。
橘は頭を撫でられて嬉しい。
菊はそんな様子を苦々しく見る。
《それゆえ、不運で亡くなるようなかわいい子孫の阿部野の娘の魂と一つになり、生き返らせて私の力を与え寿命を長らえさせてやっているのだ》
そういって、橘の頬をぺろりと舐めた。
《初代の娘との血筋の誓いだ…初代と同じような不運で命を落とす娘があるなら我と同化するというな……》
橘と菊は瞳が合う。
不思議な感覚に包まれる。
連綿と続く血族に生まれた魂の誓を感じた。
それは橘にしかわからない感覚だ。
ウカ様に感じた親近感にも似ている。
血筋の不思議を感じ不思議な幸せを感じる橘とは逆に威津那は顔が強張る。
橘が死ぬと九尾になる理由の確信だからだ。
《数十年前…お前の父の妹を救ってやった…歴代の中でかなり幼かったな….》
橘もそのことに思い当たる。
「高良のおばあさん…の事…?」
香茂家に十三で嫁いで二十歳になる前に亡くなった。
《全ての私の子孫をそうやって助けられるわけではないが、いつの日か帝の后になる子孫には生きて子を紡いで欲しいからの……》
菊は遠い目をして未来を想像して微笑む。
《もう、用がないなら私はしばらく眠りたい……久々に動いたからな…次までは少しの間眠れるだろう……》
『眠る狐』というだけあって、眠ることは好きなようだ。
「そうだ!一番聞かなきゃいけない事があったわ!」
あまりの衝撃的事実に本来質さなくてはいけない事を忘れるところだった。
「どうして私たちの縁を変える悪戯をしたの?」
《憎き黒御足イズナの一族と結ばれる運命が気に食わなくて、殿下と結びつける呪いをかけてやったのよ。
殿下ならば、闇の縁も消し去ってくれるだろうからな…》
子孫が自分を傷つけた一族の男と一緒になることは気に食わないのはわかる気がするが、
「でも、ばーちゃんが定める前に決まった事なんだから余計なことすると真っ黒な闇の存在な魔神みたいな威津那に痛い目みせられちゃうんだからね!」
紺太は威津那を庇いつつ貶す。
紺太も威津那には痛い目をさせられた恨みがある。
「うん、そうだね。」
威津那はニコニコ顔をして紺太の肩をぽん!と叩く。
紺太は、ひっ!と小さく悲鳴を漏らし、鳥肌を立てる。
「狐をいじめ……可愛がるのは僕の一族お得意だからね。」
口元は笑っていても、瞳は殺人的狂気を菊も感じ、イヅナの一族は千年経っても変わらず恐ろしい奴らだと思う。
動物の世界ならば、狐の方が上位のはずなのに….
《こういうやつだと、わかってたから阻止したかったんだ!》
菊は威津那に恐怖を感じて威嚇した。
ほんと、狐系は威津那がとてもにがてのようだった。
殿下がお知りになる九尾の狐、菊の伝説にその場にいるものは感嘆する。
「まぁ、あらすじみたいなものだけど……そう…菊の白狐の事は伝えられているんだよ」
菊は満足げに、時には過去のことを思い出して恥ずかしく悶えていた。
菊という言霊はそういう乙女の心を抱いた時の名前の呪になっているのだなと、威津那は思う。
どうりで憎々しげに自分を見るのかを理解した。
「威津那のご先祖さまを恨んでも仕方ないかもしれないけど、その時も阿部野と香茂家は菊の恩人でもあるのね?」
橘は三つの家系が今も続いていて祝皇を支えていることを誇りに思う。
そんな気分の橘をじっ……と菊は見つめて、
《それは違うぞ。お前の先祖の恩人なのは私の方だ。それに私も先祖の一人だ。》
「え?」
橘は目が点になる。
「えっ……?うそ⁉︎それって、九尾の狐のあなたが私のご先祖さまでもあるの?」
父の晴綛も叔父の明綛も半妖だから阿部野の遠いご先祖さまのウカノミタマの血筋で狐耳と尻尾を持っていたのかとずっと思っていたけれど、叔母は菊が宿ってのことのようだ。
ずっとウカノミタマがご先祖さまだと思ってた橘には衝撃的だった。
九尾の狐は伝説上では国を滅ぼす大妖怪なのだから……
「知らないのは橘だけだと思うよ。陰陽寮長はその事実を忘れ去らせようとしてたみたいだけど……」
「それわかるわ…ぺろっとホントのこと喋っちゃいそうだもん、それ言ったらドン引きされるし、不名誉になっちゃうかもだし。」
咲羅子は嘘をつけない橘の悪い癖で威津那に季節の出生がバレたことを思い出し納得する。
「ううっ…そうかも……」
橘は自分の悪い癖を指摘されて耳と尻尾をしゅんと下げる。
「僕は橘のそういう素直なとこ好きだよ」
威津那はそう言って橘の頭を撫で慰める。
橘は頭を撫でられて嬉しい。
菊はそんな様子を苦々しく見る。
《それゆえ、不運で亡くなるようなかわいい子孫の阿部野の娘の魂と一つになり、生き返らせて私の力を与え寿命を長らえさせてやっているのだ》
そういって、橘の頬をぺろりと舐めた。
《初代の娘との血筋の誓いだ…初代と同じような不運で命を落とす娘があるなら我と同化するというな……》
橘と菊は瞳が合う。
不思議な感覚に包まれる。
連綿と続く血族に生まれた魂の誓を感じた。
それは橘にしかわからない感覚だ。
ウカ様に感じた親近感にも似ている。
血筋の不思議を感じ不思議な幸せを感じる橘とは逆に威津那は顔が強張る。
橘が死ぬと九尾になる理由の確信だからだ。
《数十年前…お前の父の妹を救ってやった…歴代の中でかなり幼かったな….》
橘もそのことに思い当たる。
「高良のおばあさん…の事…?」
香茂家に十三で嫁いで二十歳になる前に亡くなった。
《全ての私の子孫をそうやって助けられるわけではないが、いつの日か帝の后になる子孫には生きて子を紡いで欲しいからの……》
菊は遠い目をして未来を想像して微笑む。
《もう、用がないなら私はしばらく眠りたい……久々に動いたからな…次までは少しの間眠れるだろう……》
『眠る狐』というだけあって、眠ることは好きなようだ。
「そうだ!一番聞かなきゃいけない事があったわ!」
あまりの衝撃的事実に本来質さなくてはいけない事を忘れるところだった。
「どうして私たちの縁を変える悪戯をしたの?」
《憎き黒御足イズナの一族と結ばれる運命が気に食わなくて、殿下と結びつける呪いをかけてやったのよ。
殿下ならば、闇の縁も消し去ってくれるだろうからな…》
子孫が自分を傷つけた一族の男と一緒になることは気に食わないのはわかる気がするが、
「でも、ばーちゃんが定める前に決まった事なんだから余計なことすると真っ黒な闇の存在な魔神みたいな威津那に痛い目みせられちゃうんだからね!」
紺太は威津那を庇いつつ貶す。
紺太も威津那には痛い目をさせられた恨みがある。
「うん、そうだね。」
威津那はニコニコ顔をして紺太の肩をぽん!と叩く。
紺太は、ひっ!と小さく悲鳴を漏らし、鳥肌を立てる。
「狐をいじめ……可愛がるのは僕の一族お得意だからね。」
口元は笑っていても、瞳は殺人的狂気を菊も感じ、イヅナの一族は千年経っても変わらず恐ろしい奴らだと思う。
動物の世界ならば、狐の方が上位のはずなのに….
《こういうやつだと、わかってたから阻止したかったんだ!》
菊は威津那に恐怖を感じて威嚇した。
ほんと、狐系は威津那がとてもにがてのようだった。
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