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九尾の狐の菊の陰謀
20☆見え隠れする未来
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「それでも、僕は…陛下を…祝皇を愛したいんだ…」
遠ざかる父を掴もうとして、手を伸ばすと、ムニッと何か柔らかいものが手に当たる。
なんだろうと指をむにむにと動かして確かめる。
「やん!やだ!威津那さんってば!」
橘のかわいい声で、夢から覚める。
「…えっ?」
寝ぼけて伸ばした手は橘の胸を鷲掴みにして感触を確かめていた。
「ごっ!ごめん!」
橘は恥ずかしがるが満更ではない顔をしていた。
「ち、ちちちがいした……」
寝ぼけて、親父ギャグを呟く。
「はぁっ?さっさと手を離しなさいよ!恋人同士だからって殿下が見てる前で不謹慎すぎ!」
咲羅子は鞘で、威津那のおでこをぐりぐりする。
「で、殿下⁉︎」
「目が覚めてよかったよ。黒御足威津那…」
威津那は居住まいを正し深々と頭を下げる。
(未来を観て、気を失ったんだった….)
そして、幼い日の夢を見たため脳が混乱して未来の事まであいまいになっていつのまにか忘れてしまうパターンだ。
その現象が起これば思い出すのだが……
「顔を上げていいよ」
恐れながら殿下は真正面で正座しておられた。
瞳が合うとなにか和やかなさっきまでの悪夢が消え去るほどの穏やかな気持ちになった。
「改めて、遠子を探すのを手伝ってくれてありがとう。」
「い、いえ、殿下がお喜びならそれで……よかったです」
威津那は突然のことで緊張する。
さらに、殿下は微笑まられながら、
「お礼として、この石をもらって欲しいんだ」
「包石……ですか?」
威津那の闇のオーラを封じ込めた昇華させた殿下の陽の気がら込められた恐れ多い石だ。
「私も以前のものは無くなっちゃったからまた新しく作って頂いちゃった。」
橘はとても嬉しそうだった。
「また、狐になっちゃったらこの石にキスすれば人間に戻れるみたい。この石に陛下の間接的口付けの魔法がかけられてるんですって!これで殿下に狐になるたびにキスを求めなくてもよくなるわ」
「それは本当によかった!」
威津那も心底喜ぶ。
橘が殿下にキスを頂くことが嫌だった。子供のように言い訳を聞かないふうになっていたほどに。
「これは英国に留学中に、魔法使いに教わって作ってみたんだけど役に立てるならうれしいよ。僕も遠子もいることだし、疑われたく無いからね」
皆思うことは一緒で良い解決策になってホッとする。
「私もお揃いでいただいたの。あんたのせいで石が粉々になっちゃたっみたいだからね」
これ見よがしに朔羅子は威津那に嫌味を言った。
「その節はお世話になりました…あはは…」
あの頃の自分はかなり闇落ちしていた。
九尾の器の橘を手に入れることが任務で人を騙しても当然だと思っていた。
さらに、自分の力を抑えるほど強い者がいるとは思っていなかった。
思い上がりも酷かったと思う。
裏の顔の威津那は毛嫌いはするが、焔と気が合っていた……
いま、裏の顔が消えつつあるのはあの時浄化されたせいだと自覚がある。
そして、今に至っている。
「実は威津那にも、包石をもらってもらいたいと思っていたのだけど……」
そう言って包石を渡そうとなされるが、威津那はひれ伏せて、
「恐れながら、殿下の包石は黒御足の力は闇の力を吸収して力にするのです…包石をいただいては宮中を守る仕事に支障が出てしまいます……」
殿下のそばにいるだけでもかなりの力を抑えられているのを感じる。
「うーん…そうなんだ…ごめん。君の贈り物は後でいいかな?」
「いいえ!めっそうもないです!お気持ちだけで胸がいっぱいなのでお気になさらずに……お願いします!」
威津那は慌てふためきご容赦を!と、さらに頭を下げる。むしろ土下座だ。
「じゃ、君が気づかないうちに素敵な贈り物をいつかさせてもらうよ」
あまりの緊張強い威津那を困らせる趣味は殿下にはない。
「絶対に、その時は貰ってくださいね」
と、殿下は威津那の手を握って微笑んだ。
その瞬間、菊の織物が浮かんだ。
それは未来の贈り物だろうか……?
威津那の未来を見る力はフラッシュバックのように、一瞬の時が多い。
本気でその未来を見るには手相が必要だが….…
昔なら遠慮なくお手を拝借していただろう…だが今は恐れ多くてできない。
それほど皇室を思う気持ちが素直に目覚めてきたのだと実感する。
戦争で敗れた時の悔しさをぶつけてやろうという不敬は今はない……
「はい…いつか……」
宮中に来る前より自分を取り戻している気がする……
何が変わったといえば、深く余計な考えをしなくなった…
橘を幸せにするのは考えるだけじゃなくて、この手で共に幸せを作り上げなくては行けないのだから…
そう思うと隣に座る橘の手を握った。
遠ざかる父を掴もうとして、手を伸ばすと、ムニッと何か柔らかいものが手に当たる。
なんだろうと指をむにむにと動かして確かめる。
「やん!やだ!威津那さんってば!」
橘のかわいい声で、夢から覚める。
「…えっ?」
寝ぼけて伸ばした手は橘の胸を鷲掴みにして感触を確かめていた。
「ごっ!ごめん!」
橘は恥ずかしがるが満更ではない顔をしていた。
「ち、ちちちがいした……」
寝ぼけて、親父ギャグを呟く。
「はぁっ?さっさと手を離しなさいよ!恋人同士だからって殿下が見てる前で不謹慎すぎ!」
咲羅子は鞘で、威津那のおでこをぐりぐりする。
「で、殿下⁉︎」
「目が覚めてよかったよ。黒御足威津那…」
威津那は居住まいを正し深々と頭を下げる。
(未来を観て、気を失ったんだった….)
そして、幼い日の夢を見たため脳が混乱して未来の事まであいまいになっていつのまにか忘れてしまうパターンだ。
その現象が起これば思い出すのだが……
「顔を上げていいよ」
恐れながら殿下は真正面で正座しておられた。
瞳が合うとなにか和やかなさっきまでの悪夢が消え去るほどの穏やかな気持ちになった。
「改めて、遠子を探すのを手伝ってくれてありがとう。」
「い、いえ、殿下がお喜びならそれで……よかったです」
威津那は突然のことで緊張する。
さらに、殿下は微笑まられながら、
「お礼として、この石をもらって欲しいんだ」
「包石……ですか?」
威津那の闇のオーラを封じ込めた昇華させた殿下の陽の気がら込められた恐れ多い石だ。
「私も以前のものは無くなっちゃったからまた新しく作って頂いちゃった。」
橘はとても嬉しそうだった。
「また、狐になっちゃったらこの石にキスすれば人間に戻れるみたい。この石に陛下の間接的口付けの魔法がかけられてるんですって!これで殿下に狐になるたびにキスを求めなくてもよくなるわ」
「それは本当によかった!」
威津那も心底喜ぶ。
橘が殿下にキスを頂くことが嫌だった。子供のように言い訳を聞かないふうになっていたほどに。
「これは英国に留学中に、魔法使いに教わって作ってみたんだけど役に立てるならうれしいよ。僕も遠子もいることだし、疑われたく無いからね」
皆思うことは一緒で良い解決策になってホッとする。
「私もお揃いでいただいたの。あんたのせいで石が粉々になっちゃたっみたいだからね」
これ見よがしに朔羅子は威津那に嫌味を言った。
「その節はお世話になりました…あはは…」
あの頃の自分はかなり闇落ちしていた。
九尾の器の橘を手に入れることが任務で人を騙しても当然だと思っていた。
さらに、自分の力を抑えるほど強い者がいるとは思っていなかった。
思い上がりも酷かったと思う。
裏の顔の威津那は毛嫌いはするが、焔と気が合っていた……
いま、裏の顔が消えつつあるのはあの時浄化されたせいだと自覚がある。
そして、今に至っている。
「実は威津那にも、包石をもらってもらいたいと思っていたのだけど……」
そう言って包石を渡そうとなされるが、威津那はひれ伏せて、
「恐れながら、殿下の包石は黒御足の力は闇の力を吸収して力にするのです…包石をいただいては宮中を守る仕事に支障が出てしまいます……」
殿下のそばにいるだけでもかなりの力を抑えられているのを感じる。
「うーん…そうなんだ…ごめん。君の贈り物は後でいいかな?」
「いいえ!めっそうもないです!お気持ちだけで胸がいっぱいなのでお気になさらずに……お願いします!」
威津那は慌てふためきご容赦を!と、さらに頭を下げる。むしろ土下座だ。
「じゃ、君が気づかないうちに素敵な贈り物をいつかさせてもらうよ」
あまりの緊張強い威津那を困らせる趣味は殿下にはない。
「絶対に、その時は貰ってくださいね」
と、殿下は威津那の手を握って微笑んだ。
その瞬間、菊の織物が浮かんだ。
それは未来の贈り物だろうか……?
威津那の未来を見る力はフラッシュバックのように、一瞬の時が多い。
本気でその未来を見るには手相が必要だが….…
昔なら遠慮なくお手を拝借していただろう…だが今は恐れ多くてできない。
それほど皇室を思う気持ちが素直に目覚めてきたのだと実感する。
戦争で敗れた時の悔しさをぶつけてやろうという不敬は今はない……
「はい…いつか……」
宮中に来る前より自分を取り戻している気がする……
何が変わったといえば、深く余計な考えをしなくなった…
橘を幸せにするのは考えるだけじゃなくて、この手で共に幸せを作り上げなくては行けないのだから…
そう思うと隣に座る橘の手を握った。
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