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九尾の復活
3☆目覚めの悪夢
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な……威津那…助けて…威津那…。
「橘?」
神と酒を組み交わしている中で橘の声が聞こえて不安に胸が締め付けられる。
ハルの神は黄金の雲からトンっと肩を押して突き落とす。
「本来なら陛下のために使う力だが、思う存分我の力を試してみるが良い……」
ハルの神は不敵に笑う。
その不敵さが現世で起こる不吉なことに感じた。
「威津那さん!起きなさい!」
威津那の着物の襟首を掴み両頬を流花がパンパンと平手打ちする。
「お、義母さん……?」
流花の顔は青ざめ不安に駆られているようだ。
その後ろに息を切らせて、なぜかボロボロの咲羅子と高良に皇太子殿下と護衛の季節と槐寿まで不安そうに見ていた。
「神誓い中に無理やり起こすと魂が帰って来れなくなることあったから心配でしたけど……威津那さんですわよね?」
真剣な瞳で流花はじっと見つめる。
「は、はい…あの…状況が飲み込めないのですが…」
神誓いして、神と酒を酌み交わし語らいでいたことは思い出せるが、勢揃いして儀式の褥に集まっている状況がわからなかった。
「橘があんたのお兄さんにさらわれちゃったのぉ!お願い!助けに行って!」
うわーーーーんと咲羅子は子供のように突然泣き出した。
そんな咲羅子を季節は背をさすり落ち着かせる。
「焔に……さらわれた…!?」
行きは異界を通ってこれたが、帰りは案内する能力者がいないと帰ってこれないので、咲羅子と高良は牡丹の折り紙の式神で宮中まで送ってもらっても三十分以上経ってしまって、不安で不安で黒御足の本拠地なんかわからない。
威津那も神誓いしてしまったならば、橘のために力を使えないんじゃないかと不安に思っていたら、皇太子殿下が、
「陛下ご自身は、大切な一人を守る為に力は使えなくても、私の為の神の化身ならば、私の大切な大御宝である民一人を助ける為の力を使えるなら使えとおっしゃられたよ」
と言って許可を得た。
「それに、レッドスパイは日和を滅ぼそうとする不定の輩だ。ハルの神も言っておったじゃろ?」
晴綛は険しい顔をして威津那に告げる。
「神の力を存分に試せと……こんな機会大戦のときにはなかったわ…」
むしろ、神誓いを失敗してしまったが……
「晴綛様、怪我は大丈夫なのですか?」
高良は晴綛の怪我を心配する。
「まぁ、この通りな…わしを負かした焔を婿にしたくないから早くやつを倒しに行け」
「負かした…?」
晴綛は小指をみせる。
小指の根元から切られた傷痕が残っている。
血が止まって指がくっついたから異界から出てきたようだ。
威津那の首もとの縛る呪術が解けているのを感じる。
神誓いしたせいではない……
晴綛の術を破るには小指を切り捨てるということをすればすぐだとはわかっていたけれど、できなかった。
することもなかった……
阿部野の婿入りする気満々だったから……
甘さに溺れた……
黒御足は裏切り者に容赦は無い一族だということを忘れていた……
それに長の命令に忠実だ。
そんな一族に橘が攫われればどんな酷いことをされるかは自分が一番わかっている……
焔は父の命令を実行するための人形も同然…橘を白狐に……九尾にする為に橘を殺すつもりだ…いや、もう手遅れかもしれない…焔の手の速さ、非人道をよく知っている……と思考の絶望の淵に落ち込んだ時……
《まだ橘は死んでいない……早く助けに行け……お前の助けを望んでいるのだ…》
眠る狐の菊は半透明で現れる。
《橘が、希望を捨てない限り……本来の我は復活はせぬのだから……》
「それは………」
菊の言葉は意味深で引っかかる。
普段は眠っている菊が半具現化している意味に運命が不吉を物語っている。
「威津那!早く助けに行きましょう!私たちも連れてって!」
咲羅子は橘は無事だという希望を持って威津那を促す。
「紺太の仇は絶対オレが打つ!」
「お前らだけでは不安だから季節と、槐寿も連れて四神の依代にしろ。」
晴綛は冷静にそう命じる。
威津那は晴綛はどことなくこういうことになることを知っていて放置したのでは無いのかと不審に思った。
だが、晴綛はハルの神の分御霊をいただく特殊な存在のため晴綛自身がどうにかしたくても動けない事があることを《ハルの神の依代》になった威津那には理解する事ができた。
そんな晴綛に妻である流花は寄り添って晴綛のやるせなさを慰めるのだ。
季節は事情を飲み込めば早く橘どんな事があろうと救いに行きたいと進み出る。
「俺には力はないと思うが、できる限りの力は全て貸す。」
季節のどっしりとした力強さは頼りになる。
「あなたの生まれ持っての祈り姫の加護はきっと役立つわ…自信を持って」
流花はそう言って季節を励ます。
槐寿は殿下と離れるのが不服だったが、殿下に「僕の友人をどうか助けてきておくれ」と、お願いされて精一杯頑張る事にした。
「で、橘が攫われた場所がどこだかわかる?黒御足の本拠地?」
「本拠地も点々として呪術がかかってて検討は難しいけれど……」
威津那は素早く着替えながら,首にかけた小さな巾着袋から髪の束を取り出して食べた。
「それ、橘さんの……?」
槐寿は嫌なことを思い出す。
「これで橘の居場所がつかめる。みんな乗って!」
威津那はカーちゃんを具現化させてみんなを乗せる。
力は神の力とは別に自分の中の生まれ持っての能力が使えるようだ。
呪詛の力もだ。
どうやって、神の依代の力を使えばいいかは実践しろということかと納得は行くが……早く橘を救いたい。
この腕に抱きしめて……言葉にできない思いを伝えたい……
その為にも……
「どうか……無事でいておくれ……」
威津那は切実に願うのだった。
「橘?」
神と酒を組み交わしている中で橘の声が聞こえて不安に胸が締め付けられる。
ハルの神は黄金の雲からトンっと肩を押して突き落とす。
「本来なら陛下のために使う力だが、思う存分我の力を試してみるが良い……」
ハルの神は不敵に笑う。
その不敵さが現世で起こる不吉なことに感じた。
「威津那さん!起きなさい!」
威津那の着物の襟首を掴み両頬を流花がパンパンと平手打ちする。
「お、義母さん……?」
流花の顔は青ざめ不安に駆られているようだ。
その後ろに息を切らせて、なぜかボロボロの咲羅子と高良に皇太子殿下と護衛の季節と槐寿まで不安そうに見ていた。
「神誓い中に無理やり起こすと魂が帰って来れなくなることあったから心配でしたけど……威津那さんですわよね?」
真剣な瞳で流花はじっと見つめる。
「は、はい…あの…状況が飲み込めないのですが…」
神誓いして、神と酒を酌み交わし語らいでいたことは思い出せるが、勢揃いして儀式の褥に集まっている状況がわからなかった。
「橘があんたのお兄さんにさらわれちゃったのぉ!お願い!助けに行って!」
うわーーーーんと咲羅子は子供のように突然泣き出した。
そんな咲羅子を季節は背をさすり落ち着かせる。
「焔に……さらわれた…!?」
行きは異界を通ってこれたが、帰りは案内する能力者がいないと帰ってこれないので、咲羅子と高良は牡丹の折り紙の式神で宮中まで送ってもらっても三十分以上経ってしまって、不安で不安で黒御足の本拠地なんかわからない。
威津那も神誓いしてしまったならば、橘のために力を使えないんじゃないかと不安に思っていたら、皇太子殿下が、
「陛下ご自身は、大切な一人を守る為に力は使えなくても、私の為の神の化身ならば、私の大切な大御宝である民一人を助ける為の力を使えるなら使えとおっしゃられたよ」
と言って許可を得た。
「それに、レッドスパイは日和を滅ぼそうとする不定の輩だ。ハルの神も言っておったじゃろ?」
晴綛は険しい顔をして威津那に告げる。
「神の力を存分に試せと……こんな機会大戦のときにはなかったわ…」
むしろ、神誓いを失敗してしまったが……
「晴綛様、怪我は大丈夫なのですか?」
高良は晴綛の怪我を心配する。
「まぁ、この通りな…わしを負かした焔を婿にしたくないから早くやつを倒しに行け」
「負かした…?」
晴綛は小指をみせる。
小指の根元から切られた傷痕が残っている。
血が止まって指がくっついたから異界から出てきたようだ。
威津那の首もとの縛る呪術が解けているのを感じる。
神誓いしたせいではない……
晴綛の術を破るには小指を切り捨てるということをすればすぐだとはわかっていたけれど、できなかった。
することもなかった……
阿部野の婿入りする気満々だったから……
甘さに溺れた……
黒御足は裏切り者に容赦は無い一族だということを忘れていた……
それに長の命令に忠実だ。
そんな一族に橘が攫われればどんな酷いことをされるかは自分が一番わかっている……
焔は父の命令を実行するための人形も同然…橘を白狐に……九尾にする為に橘を殺すつもりだ…いや、もう手遅れかもしれない…焔の手の速さ、非人道をよく知っている……と思考の絶望の淵に落ち込んだ時……
《まだ橘は死んでいない……早く助けに行け……お前の助けを望んでいるのだ…》
眠る狐の菊は半透明で現れる。
《橘が、希望を捨てない限り……本来の我は復活はせぬのだから……》
「それは………」
菊の言葉は意味深で引っかかる。
普段は眠っている菊が半具現化している意味に運命が不吉を物語っている。
「威津那!早く助けに行きましょう!私たちも連れてって!」
咲羅子は橘は無事だという希望を持って威津那を促す。
「紺太の仇は絶対オレが打つ!」
「お前らだけでは不安だから季節と、槐寿も連れて四神の依代にしろ。」
晴綛は冷静にそう命じる。
威津那は晴綛はどことなくこういうことになることを知っていて放置したのでは無いのかと不審に思った。
だが、晴綛はハルの神の分御霊をいただく特殊な存在のため晴綛自身がどうにかしたくても動けない事があることを《ハルの神の依代》になった威津那には理解する事ができた。
そんな晴綛に妻である流花は寄り添って晴綛のやるせなさを慰めるのだ。
季節は事情を飲み込めば早く橘どんな事があろうと救いに行きたいと進み出る。
「俺には力はないと思うが、できる限りの力は全て貸す。」
季節のどっしりとした力強さは頼りになる。
「あなたの生まれ持っての祈り姫の加護はきっと役立つわ…自信を持って」
流花はそう言って季節を励ます。
槐寿は殿下と離れるのが不服だったが、殿下に「僕の友人をどうか助けてきておくれ」と、お願いされて精一杯頑張る事にした。
「で、橘が攫われた場所がどこだかわかる?黒御足の本拠地?」
「本拠地も点々として呪術がかかってて検討は難しいけれど……」
威津那は素早く着替えながら,首にかけた小さな巾着袋から髪の束を取り出して食べた。
「それ、橘さんの……?」
槐寿は嫌なことを思い出す。
「これで橘の居場所がつかめる。みんな乗って!」
威津那はカーちゃんを具現化させてみんなを乗せる。
力は神の力とは別に自分の中の生まれ持っての能力が使えるようだ。
呪詛の力もだ。
どうやって、神の依代の力を使えばいいかは実践しろということかと納得は行くが……早く橘を救いたい。
この腕に抱きしめて……言葉にできない思いを伝えたい……
その為にも……
「どうか……無事でいておくれ……」
威津那は切実に願うのだった。
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