18 / 31
17 エドウィンside
アシュリーとは幼い頃に出会い、祖父同士の話で婚約者となったと聞かされた。
茶色い髪の濃い緑の瞳の普通の12歳の女の子だった。
俺はその時は17歳になっていたから、アシュリーは婚約者というより妹のようなそんな存在だった。
俺は三男だったから伯爵家を継げる訳でもなかったし、いずれは家を出る立場だ。アシュリーは子爵家の長女だが、兄がいるから彼女と結婚しても子爵になれるわけでもなかった。
だが、男爵位を持っているらしいと聞いて、それならという思いも少なからずあった。
その時には俺は騎士として身を立てることを決めていたから、男爵位ではなくとも騎士伯を自力で撮ろうと考えてもいた。それほど爵位にはこだわりはなかった。
アシュリーとは婚約者として交流はしていた。
だが、この年齢の5歳差は大きく、彼女のすることや話すことの何もかもが幼く感じてしまっていた。
俺が21歳の時に国境への部隊へ配属になった時、アシュリーは16歳だった。
その頃には普通の少女になっていた彼女に「帰ってきたら結婚しよう」とそう言った。
確かに俺はそう言ったんだ。
そして国境での任務に就いてからは、お互いに手紙を送った。
最初の頃は一週間に一度の頻度で。それが二週間に一度になり、三週間に一度になり、どんどんとその期間が空いて行った。
二年目が過ぎることはほとんど書いていなかったような気がする。
そして俺は非番の日に町で一人の女性を助け、その時に怪我をした。
怪我はひどくはなかったが、背後から頭を殴られた影響でしばらくの間、仕事を休むことになった。
そして、その後遺症なのかしばらく頭痛が続いた。
助けた女性はミランダといってトレイル伯爵家の令嬢らしく、彼女の両親からは感謝され、ミランダ嬢も毎日のように見舞いに来てくれた。
彼女は軽くウェーブした栗毛で深みのある茶色の少しタレた目をしていて、それがとても可愛いらしく守ってやりたいという感情が心に芽生えたのだ。
いや、最初に見たときにそう思ったから助けたのだが、こうして見舞いに来てくれる度に、庇護欲を掻き立てられるのだ。しかも、何度も繰り返す頭痛に苦しむ度に、彼女の愛くるしい顔が俺を癒してくれた。
そう。
この時、俺はアシュリーのことなどすっかりと忘れてしまったのだ。
記憶をなくしたわけではなく、記憶の奥底にしまい込んで自分の良いように考えてしまったのだ。
手紙も書かなくなっていたから、尚更だ。
同僚もそれを知ってか、アシュリーからの手紙はそのまま俺の荷物と一緒に溜め込んでいたらしいし。
その手紙を受け取っていたら、今、この状況が変わっただろうか。
今、俺の目の前にいるアシュリー。
別れた16歳の頃と違う、大人の美しい女性に成長した彼女に、俺の言うことが伝わるのだろうか。
どうにかしなければと思うだけで、なんにも考えが浮かばないうちに、目の前に出された婚約解消に関する書類にサインをするようにと詰め寄られた。
今回は祖父達が交わした契約ということもあって、俺のサインがなくとも当主のサインがあればいいらしい。
そして結局は親父はサインした。
名目は婚約の白紙だ。
アシュリーに傷が付かないようにとの配慮らしいが、結婚適齢期の令嬢の時間を無駄に過ごさせたことを重く見た殿下方が、慰謝料の請求を認めると判断されたらしく、後日、その連絡があるということだった。
屋敷に戻る馬車の中からずっと、両親は俺に文句を言っている。
なぜ手紙のやり取りをしなかった!
なぜ婚約者のアシュリーの存在を忘れていた!
なぜ婚約者などいないと言った!
なぜ!
なぜ!
そして最後には『どうにかしてもう一度アシュリー嬢とやりなおせ』とキツく言明された。
俺だって、そうしたい。
アシュリーを見て、あんなに綺麗になるなんて思っても見なかった。忘れていた自分を、今更ながら殴りたい。
アシュリー
茶色い髪の濃い緑の瞳の普通の12歳の女の子だった。
俺はその時は17歳になっていたから、アシュリーは婚約者というより妹のようなそんな存在だった。
俺は三男だったから伯爵家を継げる訳でもなかったし、いずれは家を出る立場だ。アシュリーは子爵家の長女だが、兄がいるから彼女と結婚しても子爵になれるわけでもなかった。
だが、男爵位を持っているらしいと聞いて、それならという思いも少なからずあった。
その時には俺は騎士として身を立てることを決めていたから、男爵位ではなくとも騎士伯を自力で撮ろうと考えてもいた。それほど爵位にはこだわりはなかった。
アシュリーとは婚約者として交流はしていた。
だが、この年齢の5歳差は大きく、彼女のすることや話すことの何もかもが幼く感じてしまっていた。
俺が21歳の時に国境への部隊へ配属になった時、アシュリーは16歳だった。
その頃には普通の少女になっていた彼女に「帰ってきたら結婚しよう」とそう言った。
確かに俺はそう言ったんだ。
そして国境での任務に就いてからは、お互いに手紙を送った。
最初の頃は一週間に一度の頻度で。それが二週間に一度になり、三週間に一度になり、どんどんとその期間が空いて行った。
二年目が過ぎることはほとんど書いていなかったような気がする。
そして俺は非番の日に町で一人の女性を助け、その時に怪我をした。
怪我はひどくはなかったが、背後から頭を殴られた影響でしばらくの間、仕事を休むことになった。
そして、その後遺症なのかしばらく頭痛が続いた。
助けた女性はミランダといってトレイル伯爵家の令嬢らしく、彼女の両親からは感謝され、ミランダ嬢も毎日のように見舞いに来てくれた。
彼女は軽くウェーブした栗毛で深みのある茶色の少しタレた目をしていて、それがとても可愛いらしく守ってやりたいという感情が心に芽生えたのだ。
いや、最初に見たときにそう思ったから助けたのだが、こうして見舞いに来てくれる度に、庇護欲を掻き立てられるのだ。しかも、何度も繰り返す頭痛に苦しむ度に、彼女の愛くるしい顔が俺を癒してくれた。
そう。
この時、俺はアシュリーのことなどすっかりと忘れてしまったのだ。
記憶をなくしたわけではなく、記憶の奥底にしまい込んで自分の良いように考えてしまったのだ。
手紙も書かなくなっていたから、尚更だ。
同僚もそれを知ってか、アシュリーからの手紙はそのまま俺の荷物と一緒に溜め込んでいたらしいし。
その手紙を受け取っていたら、今、この状況が変わっただろうか。
今、俺の目の前にいるアシュリー。
別れた16歳の頃と違う、大人の美しい女性に成長した彼女に、俺の言うことが伝わるのだろうか。
どうにかしなければと思うだけで、なんにも考えが浮かばないうちに、目の前に出された婚約解消に関する書類にサインをするようにと詰め寄られた。
今回は祖父達が交わした契約ということもあって、俺のサインがなくとも当主のサインがあればいいらしい。
そして結局は親父はサインした。
名目は婚約の白紙だ。
アシュリーに傷が付かないようにとの配慮らしいが、結婚適齢期の令嬢の時間を無駄に過ごさせたことを重く見た殿下方が、慰謝料の請求を認めると判断されたらしく、後日、その連絡があるということだった。
屋敷に戻る馬車の中からずっと、両親は俺に文句を言っている。
なぜ手紙のやり取りをしなかった!
なぜ婚約者のアシュリーの存在を忘れていた!
なぜ婚約者などいないと言った!
なぜ!
なぜ!
そして最後には『どうにかしてもう一度アシュリー嬢とやりなおせ』とキツく言明された。
俺だって、そうしたい。
アシュリーを見て、あんなに綺麗になるなんて思っても見なかった。忘れていた自分を、今更ながら殴りたい。
アシュリー
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。