【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜

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「無事に独り身になったのね」

「カサンドラ様。独り身とは…語弊がありますが」


 そう指摘され、殿下はぷうっと頬を膨らませた。臣下の前で、こんなには表情が豊かではない方が、私と話をしているときはまるで友人のように接してくださり、本当に光栄に思っております。


「だが、アシュリー嬢。これからどうするつもりだ?よければ婚約者を勧めたいところだが…」


 王太子殿下の言葉が一瞬、詰まった?と思ってそのお顔を見ると、なんだか渋い顔をしていらっしゃるわ。私に合うような方はいらっしゃらないという事かしら?まあ、紹介してもらおうなど考えても居ませんでしたが。


「王太子殿下。私はカサンドラ様の侍女として勤めさせていただくつもりですので、婚約者など必要ございませんわ」

「アシュリー!ずっと私のもとにいてくれるのね」

「アシュリー、それは私も嬉しいが…」

「お兄様!アシュリーは私の侍女です!お兄様にも渡しませんわ。諦めてください」

「お前…私はそんなことを言っているのではなくてだな、アシュリー嬢にも自分の幸せを追い求める権利があるということを言っているんだ」

「アシュリーの幸せは私が見つけますからご心配なく!」


 カサンドラ様が私の手をおとりになって、これはまた可愛らしい笑顔で「私が幸せにするわ」などとおっしゃられる。

 まるでプロポーズですわね。



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