算術の秘密

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虚数の牢獄

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ふと思ったことがあった。
「そういえば、ミラクルマジックの世界の牢獄って、現実ではどうなってるんだろう…」

クラスメイトの誰かが口にしたその言葉が、まりの頭に残った。
現実では見えないけれど、あの不思議な場所は存在しているかもしれない

家に帰ると、まりは思い切ってお母さんの友達で数学者の先生・理世のに連絡してみた。
「…あの、ミラクルマジックの世界での牢獄って、現実ではどうなってるんですか?」

電話口の向こうで先生は少し考え込んだあと、にっこり笑った。

「ミラクルマジック‥?あ‥あの漫画のことね。じゃあ、ちょっと行ってみる?」

「え、いいんですか?」

「うん」

数時間後。
まりは高校生になって初めて理世の研究室を訪れた。
机の上には書きかけの数式や複雑な図形が描かれたノート、電子機器が無造作に並んでいる。
まるで数学と物理の境界線そのものが、この部屋に詰め込まれているようだった。

理世はホワイトボードにサラサラと式を書き始めた。
「今日の“入口”は、1辺が10メートルの立方体。…ただし、辺の長さには虚数iを掛ける」

白板に浮かび上がった式は——

V = (10i)^3 = -1000i

まりは息をのむ。
ただの数字の羅列に見えるのに、部屋の空気がざわりと揺れた。

理世は目を細め、静かに宣言する。
「虚数立方体の牢獄 V = (10i)^3 = -1000i ——入るのは、私、理世。そして…まり」

次の瞬間、足元がすうっと消え、まりの視界が暗転した。
気がつくと、そこは透明な壁に囲まれた巨大な立方体の内部。外は無限の闇で、壁にはゆらゆらと数式が光っている。

「ここが…?」

まりは周囲を見渡し、目に映る光景に息を呑んだ。

「そうよ。そして、この世界は現実社会でも、牢獄として使われているの」

「漫画と同じなんですね…」

理世はうなずきながら、白板の複雑な数式に指を滑らせる。
「そう。ただし、牢獄に入る前には必ず眠ってもらうの。そして場所を生成する。簡単に抜け出せないよう、虚数を含む複雑な計算式を設定してね」

「なるほど…」

まりは少し考え込み、つぶやいた。
「なんだか不思議な経験で…ちょっとお腹がすいてきました。数式で食べ物を作ろうかな」

「待って!」
理世が手を振る。
「この世界で食べ物を食べても、ただ減るだけでお腹は満たされないの」

「そうなんですか!?」
まりは目を大きく開ける。

「じゃあ、一旦もとの場所に戻ろうか」

理世は落ち着いた声で式を唱える。

「-1000i m³ × i = 1000 m³」

まりの足元で空間がゆらりと震え、視界が白く光に包まれる。
瞬間、意識が引き戻されるようにして、二人は元の研究室に立っていた。

まりは息を整えながら周囲を見渡す。
「…戻ってきたんですね」

「ええ、虚数を消すことで牢獄の座標も消滅する。これで完全に安全よ」
理世はにっこり笑った。

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