算術の秘密

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夜空から消えた

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理世はまりの手の中の月をそっと見つめ、静かに言った。
「今度は少し応用してみようか。さっきの命題は『手を伸ばせば、月に手が届く』だったけど、数学では『同様に確からしい』という考え方があるの」

まりは首をかしげる。
「同様に確からしい…?」

理世は微笑んだ。
「簡単に言うと、『ある命題が真なら、条件が同じであれば別の場所でも同じことが起こる』ということ。さっきの月の命題も、この考えを使えば、他の星や天体でも同じように現実化できるのよ」

まりの目が大きく開かれ、わずかに息を呑む。
「え…じゃあ、やってみていいかな?」

「うん、やってみて。」

まりは夜空を見上げ、夏の大三角形の位置に手を伸ばした。
すると掌の中に、三つの星がまるで小さな宝石のように輝く光の結晶として現れた。それは夜空で見上げる夏の大三角形と同じ配置で、微かに光が絡み合い、静かに回転しているようにも見えた。

空を見上げると、夏の大三角形はそっと夜空から消え、手の中だけに存在していることにまりは気づく。
「わぁ…本当に、手の中に…」

「というか、いつの間にか夜になってるね。」

「不思議な体験や話に夢中で、全然気づかなかった!」

「今日は無限数理フォーラムのみんながいたあの場所に泊まっていく?」

「うん!」

「じゃあ、あなたのお母さんに連絡しておくね。」

理世はふと思い出したように言った。
「あ、あと、まり!今日の命題の話は内緒にしてね。数学の、証明と命題には、とても強い力があるから。」

そして、夜になった。

まりと、理世は少し疲れた顔でテレビの画面に目をやった。

画面には全国のニュースチャンネルが次々と映し出されている。

「……え、月と夏の大三角形が消えました!」
アナウンサーの声が、少し興奮気味に響く。
「夜空を見上げる市民からの報告が相次いでいます。街頭インタビューでも、子どもたちが驚きの声を上げています」

チャンネルを切り替えると、別の放送局でも同じニュースが流れていた。
「今夜、突如として月と夏の大三角形が夜空から姿を消す現象が発生しました。専門家によると、原因は不明ですが……」

画面の下には市民のSNS投稿も映し出されていた。
「え、今夜月ないんだけど⁉」
「星が全部消えた!? 夏の大三角形どうしたんだ!」

理世は少し苦笑し、ゆっくり息をついた。
「例の命題を偽とすれば元に戻るんだけど……」

まりが見守る中、理世は、命題を言ったあと、偽を唱えた。
その瞬間、窓の外の夜空に、消えていた月と夏の大三角形が、まるで何事もなかったかのように元の位置に現れた。

テレビ画面でも同時に映像が切り替わる。
「え!? 月が戻った! 星も元の位置に…!」
各局のアナウンサーは驚きの声を上げ、SNSも大混乱。

理世は頭に手をやり、少しうつむいてつぶやいた。
「…理世って、時々抜けてるところあるよね」

まりは微笑みながら、理世の肩を軽くたたいた。
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