算術の秘密

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命題の盾

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かずみの号令で、理世とまりは準備を整えた。
三人は無限数理フォーラムの入口を抜け、まだ朝露に濡れる街路を歩き出す。
地図の上で示された各地点を思い浮かべながら、かずみは静かに指示を出す。

「まずは駅前の雑居ビル。三辺測量で追跡された痕跡を確認して、発信源を無効化する。理世、手順は覚えてるね?」

理世は頷いた。「もちろん。命題を偽とすることで、現実化を打ち消す。対象の位置を誤認させれば、痕跡も消せる。」

まりは少し緊張しながらつぶやく。「怖いな…でも、放っておくわけにはいかないよね。」

かずみは微笑む。「そう、あなたたちがいるから、未然に防げるの。命題の力は強大だけど、正しい使い方をすれば人を守る盾にもなる。」

三人がビルの前に到着すると、赤く光る交点の痕跡が窓の奥で揺れていた。
理世がぶつぶつと命題を唱えながら最後に「命題を偽」と言った。
瞬間、赤点がゆらりと揺れ、光は消えた。
かずみは静かに頷き、次の地点へ足を進める。

「次は湾岸の倉庫地帯。リトルの法則で滞留人数を増幅させている痕跡ね。」
まりが息をのむ。「本当に、何もないのに人がいるように見える…?」

「統計と命題の現実化を組み合わせてるからね。罠を仕掛けた側はそれを悪用して、人々を誘導するつもりだったの。」かずみは地図を確認しながら言った。

さっきと同様に倉庫に向けて命題を偽と唱えた。
滞留を表す数字が一瞬で消え、人々の動きは自然に戻った。

「良かった…これで誰も危険に巻き込まれない。」

かずみはさらに、河川敷のプレハブに向かう道を示す。
「ここは虚数世界と現実の境目が曖昧な地点。慎重に行動する。」

三人は息をひそめて、廃モールの陰に身を隠す。
かずみは目を閉じ、紙に書き込むように手を動かす。
「命題の力を逆手に取れば、虚数世界への偏差も元に戻せる。」

淡い光の波紋が空間を走り、河川敷のプレハブは静まり返った

理世はほっと息をつき、まりの肩を軽く叩いた。「やったね、これで一安心。」

まりは小さく笑う。「かずみさんの指示がなかったら、私たちじゃ危なかったかも…。」

かずみは真剣な眼差しで二人を見つめる。「数学の力は面白いけど、扱いを誤れば誰かを傷つける。
だから、必ず守る側に立つことを忘れないで。」

三人は地図を手に、街を後にした。
その背中に、朝日が静かに降り注ぎ、数理の力で守られた平穏な世界を照らしていた。


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