算術の秘密

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帰り道、まりは少し戸惑ったように理世に話しかけた。
「理世……かずみさんって、色々なことを知っているし……。かずみさん自身も、不思議な能力をたくさん持っている気がするの。悪用されたときに頭が痛くなる以外にも、命題を立てたりしてるの?」

理世は肩をすくめて答える。
「まり、かずみは他にもたくさんの命題を立ててるよ。でも、全部を知っているわけじゃないけどね……」

「そうなんだ……」
まりはうつむきながらそう言った。

「数学を悪用する人たちと対峙したときのために、準備万端でのぞめるようにしてるんだよ。」

そこから少し間をおいて理世は続けた。
「ただ、今回は悪用した犯人が見つからなかったから、そこにもどかしさを感じてるかもね。」

まりはかずみの顔を見た。

やがて三人は無限数理フォーラムの入口で立ち止まった。
「じゃあ、私はここで。まり、家まで気をつけてね。」
理世が手を振ると、まりも小さく手を振り返した。

夕暮れの街路を一人歩きながら、まりは今日の出来事を思い返す。
数学の力、命題、かずみの冷静さ、そして理世の優しさ。

家のドアを開けると、部屋の中は静かで、柔らかな夕陽が差し込んでいた。

まりはふとテレビの音が聞こえてくることに気づいた。
リビングの薄暗い部屋で、ブラウン管の画面が淡く揺れている。

チャンネルを合わせると、画面には「インフィニティTV」のロゴ。

キャスターが威勢よく告げる。
「皆さん、信じられないかもしれませんが、昨晩、月と夏の大三角形が空から消えた、などとオールドメディアが騒いでいました! しかし、そんなことはありえません!」

まりは眉をひそめる。

昨晩のVTRを並べて、語ってる様子を見せた。

「ご覧ください、他のメディアはまるでそれが本当に起きたかのように、無責任に煽っています。皆さん、正しい情報を得たいなら、ここインフィニティTVだけを見てください!」

ナレーションはさらに過激になり、視聴者の恐怖心と不安を煽る。
「他局の報道は嘘です! 信じてはいけません! 正しいのはここだけ!」

キャスターはカメラをまっすぐ見据え、威勢よく告げた。
「そして、皆さんに重大なお知らせです! 昨晩の天文現象の騒ぎの裏で、善良な市民の方が逮捕されそうになっていました!」

VTRが流れ始める。街角で活動するその人物の映像が、慈善活動の場面を強調して映される。
「ご覧ください、この方は貧困層に仕事を与える慈善事業をしていた、模範的な市民です。しかし、なんと警察は、この善行の裏に隠された罪を理由に逮捕を試みているのです!」

ナレーションはさらに過激になる。
「他のメディアは、この方の善意の行動を正当に伝えようとはせず、逮捕の理由を曖昧にするだけ! 皆さん、信じてはいけません! 本当に危険なのは、こうした不正確な報道を垂れ流すオールドメディアです!」

まりはテレビを消し、静かにスマートフォンを手に取った。
「この人、本当に善人なの…?」
指先が画面を滑り、検索エンジンに名前を打ち込む。

最初に出てきたのは、インフィニティTVが流したニュース記事。
「貧困層を救う慈善家、理不尽な逮捕の危機!」
見出しを見ただけで、心がざわつく。

だが、スクロールを続けると、別のニュースサイトや掲示板、オールドメディアと呼んでいた各社で書かれた情報が現れた。
「この人はヤクザの構成員」「最低賃金以下で労働させ、仕事を斡旋していた」

まりは息をのんだ。手が震える。
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