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ミト_04
2.薬物試験2
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90分。
また夜凍がやってきた。
ミトの顔は青白く、額や首筋には汗が浮いている。
夜凍の手には、薬液が入った注射器がある。
「……」
ミトはゆるゆると首を振った。
アレを入れられたら、さらに具合が悪くなる。
けれども夜凍は、モニタを見て軽くうなずくと、何のためらいもなく注射器をミトの腕に刺した。
「ぅ……」
また、薬液が流れ込んでくる。
頭の痛みと吐き気が、一気に増す。
「ぁ……ううっ」
苦しくて身をよじる。
手足の拘束がギシリと音を立てる。
「はっ……うう」
看護師がときおり汗を拭ってくれはするが、もはやそれだけでは間に合わない。
ミトのこめかみを汗が流れ落ちていった。
夜凍は部屋を出ていかなかった。
銀色のワゴンの上にノートパソコンを置き、何か作業をしたり、モニタを確認しながら、ときおりミトの様子を観察していた。
ミトは何とか息を吸い、必死に唾を飲み込む。胃の中身が今にも逆流してきそうだ。
身体を丸めたくても、胸を拘束されているせいで、動くことができない。
「……っ、せん、せい」
搾り出すようなミトの声。
夜凍が立ち上がる。
「吐くか?」
「……わかんない、けど……胸、外してほしい、です」
モニタと、ミトの様子を交互に確認する夜凍。
やがて夜凍は静かに言った。
「……そのままで我慢しろ。吐くときは言え」
ミトはグッタリと息を吐きながら、目を伏せた。
120分。夜凍がまた注射器を手に取る。
「っ……や、」
ミトの口から思わず悲鳴が零れる。
夜凍は眉一つ動かさず、ミトに薬剤を注射した。
「っああ……」
数秒後、頭痛が増した。
まるで何かで頭を締め上げられているようだ。
同時に強い吐き気が襲い、ミトは思わずえずく。
素早く立ち上がった看護師が、ミトの顔を横に向け、口元にトレイを差し出す。
「ぅえっ……あぁぅ」
だが、何も出てはこない。
ただ唾液だけが、開けた口からわずかに垂れるだけだ。
看護師がガーゼでミトの顎を拭いた。
「ううっ……ああっ」
ミトは、自由にならない身体をよじらせ、呻き声を上げた。
頭が割れそうに痛い。
気持ちがわるくて胃がひっくりそうだった。
熱さと寒さが同時に襲ってきて、身体が震える。
拘束帯を引っ張りながら身悶えるミトを、夜凍と看護師が見ている。
「……ううぅ、はっ……ああ」
どれくらいそうしていたのか。
やがて夜凍が小さなため息と共に立ち上がった。
透明な液体が入ったパックを点滴スタンドに掛け、ミトの腕に点滴の針を近づける。
「あ……やだ」
思わず小さく首を振るミト。
「安心しろ、中和剤だ」
夜凍がミトの血管に針を挿入する。管をテープで固定し、点滴のダイヤルを調整する夜凍。
「これで薬は終わりだ。少しずつ楽になる」
「……はい」
夜凍は冷たいタオルでミトの汗をぬぐった。
吐き気が徐々に治まっていく。頭痛も引いていく。
悪寒も落ち着き、今度はひどいだるさが襲ってきた。
夜凍がモニタを確認しながら言った。
「回復傾向だな。もう少し様子を見る」
「……はい」
30分ほどすると、夜凍がミトの拘束を外し始めた。
胸のベルト、腕のベルト、足首のベルト。
解放された瞬間、ミトは身体を丸め、息をついた。
「……っ」
「まだ気分が悪いか?」
「はい……」
「……」
夜凍がフットレバーを踏むと、椅子の背もたれがさらに倒れた。ほぼ平らになる椅子。ミトはゴソゴソと身体を動かし、横向きで身体を丸める。
「このまましばらく休め」
夜凍がミトの身体に毛布をかけてくれた。
「……はい」
ミトは毛布に包まれながら、目を閉じた。
夜凍の手がミトの髪を何度か撫でる。ミトは静かに息をついた。
また夜凍がやってきた。
ミトの顔は青白く、額や首筋には汗が浮いている。
夜凍の手には、薬液が入った注射器がある。
「……」
ミトはゆるゆると首を振った。
アレを入れられたら、さらに具合が悪くなる。
けれども夜凍は、モニタを見て軽くうなずくと、何のためらいもなく注射器をミトの腕に刺した。
「ぅ……」
また、薬液が流れ込んでくる。
頭の痛みと吐き気が、一気に増す。
「ぁ……ううっ」
苦しくて身をよじる。
手足の拘束がギシリと音を立てる。
「はっ……うう」
看護師がときおり汗を拭ってくれはするが、もはやそれだけでは間に合わない。
ミトのこめかみを汗が流れ落ちていった。
夜凍は部屋を出ていかなかった。
銀色のワゴンの上にノートパソコンを置き、何か作業をしたり、モニタを確認しながら、ときおりミトの様子を観察していた。
ミトは何とか息を吸い、必死に唾を飲み込む。胃の中身が今にも逆流してきそうだ。
身体を丸めたくても、胸を拘束されているせいで、動くことができない。
「……っ、せん、せい」
搾り出すようなミトの声。
夜凍が立ち上がる。
「吐くか?」
「……わかんない、けど……胸、外してほしい、です」
モニタと、ミトの様子を交互に確認する夜凍。
やがて夜凍は静かに言った。
「……そのままで我慢しろ。吐くときは言え」
ミトはグッタリと息を吐きながら、目を伏せた。
120分。夜凍がまた注射器を手に取る。
「っ……や、」
ミトの口から思わず悲鳴が零れる。
夜凍は眉一つ動かさず、ミトに薬剤を注射した。
「っああ……」
数秒後、頭痛が増した。
まるで何かで頭を締め上げられているようだ。
同時に強い吐き気が襲い、ミトは思わずえずく。
素早く立ち上がった看護師が、ミトの顔を横に向け、口元にトレイを差し出す。
「ぅえっ……あぁぅ」
だが、何も出てはこない。
ただ唾液だけが、開けた口からわずかに垂れるだけだ。
看護師がガーゼでミトの顎を拭いた。
「ううっ……ああっ」
ミトは、自由にならない身体をよじらせ、呻き声を上げた。
頭が割れそうに痛い。
気持ちがわるくて胃がひっくりそうだった。
熱さと寒さが同時に襲ってきて、身体が震える。
拘束帯を引っ張りながら身悶えるミトを、夜凍と看護師が見ている。
「……ううぅ、はっ……ああ」
どれくらいそうしていたのか。
やがて夜凍が小さなため息と共に立ち上がった。
透明な液体が入ったパックを点滴スタンドに掛け、ミトの腕に点滴の針を近づける。
「あ……やだ」
思わず小さく首を振るミト。
「安心しろ、中和剤だ」
夜凍がミトの血管に針を挿入する。管をテープで固定し、点滴のダイヤルを調整する夜凍。
「これで薬は終わりだ。少しずつ楽になる」
「……はい」
夜凍は冷たいタオルでミトの汗をぬぐった。
吐き気が徐々に治まっていく。頭痛も引いていく。
悪寒も落ち着き、今度はひどいだるさが襲ってきた。
夜凍がモニタを確認しながら言った。
「回復傾向だな。もう少し様子を見る」
「……はい」
30分ほどすると、夜凍がミトの拘束を外し始めた。
胸のベルト、腕のベルト、足首のベルト。
解放された瞬間、ミトは身体を丸め、息をついた。
「……っ」
「まだ気分が悪いか?」
「はい……」
「……」
夜凍がフットレバーを踏むと、椅子の背もたれがさらに倒れた。ほぼ平らになる椅子。ミトはゴソゴソと身体を動かし、横向きで身体を丸める。
「このまましばらく休め」
夜凍がミトの身体に毛布をかけてくれた。
「……はい」
ミトは毛布に包まれながら、目を閉じた。
夜凍の手がミトの髪を何度か撫でる。ミトは静かに息をついた。
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