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22.私、何も見えてませんわ。
しおりを挟む「これはどういうことだ!」
バタバタと珍しくにぎやかにやってきたグリフ様は、部屋にはいるなり氷魔法を放った。
キラキラした、たくさんの細かな氷が一直線にラルフに向かって飛び、炎へとまとわりついて溶けていく。
何度も言うように、そこは私のベッドの上なんだけれど。
まずそこから降りるとはいかないのかしら?
「何故消えない!」
かなりの量の氷を飛ばしたのに炎が消えないので、グリフ様はいらついた声で叫んだわ。
そうそう、ラルフもちゃんと火を消そうと魔法を使ってるのよ。
ラルフは火属性の魔法使いだから火を弱める魔法を使っているみたいだけど、炎はある一定の火力で燃え続けている。
強くもならないけれど、弱まることもない。
それでいて少しずつ少しずつ、ラルフのお尻あたりに伸びた洋服の端を燃やしている。
火の精霊王がニヤニヤのドヤ顔でラルフを見下ろしているから、きっと邪魔してるのね。
――――本当に、お願いだから、もうやめて。
「グリフ兄様! その女がやってるんだ! その女を倒せばいい!」
ラルフはそう言って、また私を指差した。
馬鹿ね、そんなことすると……ほら、火の精霊王の顔色が変わったわよ。
指パッチンしたけど、今度は何をしたのかしら?
……あら、グリフ様が息を飲んだわ。
「精霊王様?」
「なっ!」
「えっ!」
――――なんですってっ!! どういうことなの!?
グリフ様も火の精霊王が見えているの?
グリフ様の魔法は精霊契約ではなく血による魔法だから、普段精霊の類は見え無い筈。ほらだから、火の精霊王も驚いて……いない……わね。
まさか、指パッチンで見えるようにしちゃったわけ?
「ラルフ、お前、一体何をしたんだ? 何故火の精霊王様が、お前に火をつけているんだ?」
グリフ様のお顔が、般若のようよ。
だけど、何をしたかなんて見れば分かりそうなものじゃない?
もう一度言うけど、ラルフのいる場所って私のベッドの上なのよ!
「グリフ兄様、何を言って……」
「何をだと? お前の側に険しい表情の火の精霊王様がいらっしゃるぞ」
「えっ!」
グリフ様の言葉に、ラルフが何かを探すように辺りを見回したわ。
だけれども、その視線はすぐそばに浮かんでる火の精霊王には止まらない。
「ラルフ……お前、まさか見えていないのか?」
確かめるようにグリフ様がそう聞くと、ラルフはビクリと体を揺らした。
あら、その様子じゃあ見えていないのかしら?
「ラルフ、お前が火の魔法を使えるのは、火の精霊様のおかげだろう。まさか本当に見えないなどと……」
ラルフは愕然とした様子で固まっているわ。
見えない事にショックを受けてるのかしら。それとも、火の精霊王に火をつけられたことに、かしら。
それにしても、さっきから火の精霊王はすごく悪い顔してるんだけど。
あぁ、そんなことより、火が!
「グリフ様! 火が!」
ラルフがいくら火属性で耐性があるとはいえ、そろそろ炎が身まで燃やしそうよ。
ベッドに上がられているのも嫌なのに、実まで燃えて変な匂いがついたら、私今夜どこで寝たらいいのよ!
「あ、あぁ」
私がグリフ様の袖を引っ張ると、グリフ様は火の精霊王に向かって深く頭を下げた。
「火の精霊王様、どうか今はラルフの罪をお許しください。ラルフは私が責任を持って教育いたします」
火の精霊王はしかめっ面のままグリフ様を見たわ。
そのついでと言うように私の方も。
私は見えない風を装って、慌てて頭を下げたわよ。
グリフ様をちらちら見て、方向を直したりしてね。
『我が愛し……』
しょっぱなから火の精霊王が言ってはいけないことを言いそうになったわ!
なんとしてもそれは止めなければ!
見えない事にしたいから言葉は駄目。魔法も使えないから、全身全霊、眼力全開よ!
『ヒッ!!』
「……精霊王様?」
火の精霊王が変な声を出すから、グリフ様が顔をあげてしまったわ。
なんて顔してるの! こっち見ない!
でも、そうね、もう一睨みすれば理解するかしら?
―――えいっ!
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