このやってられない世界で

みなせ

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78 カーラの日記5

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 こうやって書いていると不思議。
 あの時、ラーシュの死の報告より、借金の0の数の方にびっくりして気が遠くなったのを思い出した。
 ラーシュが死ぬなんて絶対にないと思っていたからかもしれないけど、自分が意外と薄情だったと痛感する。

 思いのほか借金の額は大きかった。
 ラーシュの方もだけど、父の方も同じくらい膨らんでいた。
 曾祖父の借金も殆ど減っていなかったので、それも足すと私では返せる額ではなかった。

 ラーシュの借金は、ラーシュの資産と私が冒険者としての賃金でほぼ返すことが出来た。残りはアーサーとマリーがなんとかしてくれた。

 問題は父と、祖父の借金だ。
 祖母がコツコツ返していた借金は、父の代になって滞り、利息が元金よりも多くなっていた。さらに、父がギャンブルだけではなく、どこの誰とも知れない人たちに貢いだり、装飾品をかったらしいものまで加わって、祖父と同じだけの借金が出来上がっていた。

 オンリンナ家に金は無い。あるのはボロい邸だけ。
 でも、何故かこの邸を売ることはできなかった。

 アーサーたちと金策に走り回っていると、前もって援助要求をしていた王家から連絡が来た。
 何でもオンリンナの名前を借りたい人がいると言うことだった。

 その人はパイネンと言う小国の商人で、発明品を商品として扱っていて、北のファナーシエへ売り込みをかけるため、発明家として有名なオンリンナの名前を借りたいのだそうだ。

 オンリンナの名前は、発明家の間ではかなり有名らしい。
 祖父の発明品を私は知らないけれど、世界中に愛好家がいて、いまだに取引がされているそうだ。そう言えば時々どこかからお金が送られてきていたのはそれだったのだろう。
 “彼”もその愛好家の一人で、今回独立することになり、ひと勝負打つためにオンリンナの名前が欲しいと言う。
 契約料は借金の約三分の二の額だった。
 私はすぐに受け入れることにした。

 契約は王家と彼の間でなされ、私のところには契約書が送られてきた。

 内容は
 名義貸しのための契約結婚であること。
 契約料は一括で王家預かりになっていること。
 “彼”は契約終了時にこの国へ戻ること。
 “彼”が結婚、もしくは後継者を得た時点、または私が死亡した場合、
 この契約は終了することなどが書かれていた。

 この契約時、私はまだ覚醒前だった。
 はっきり言ってアホだった。
 内容は記憶に刷り込まれるが、理解はしていなかった。
 そして、契約書は確認のサインをすると消えるタイプだったから、最近まですっかり忘れていた。

 キーラにどうやって、ラーシュのことと、契約結婚のことを伝えよう?

























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

カーラの日記が長くなってしまったので、
昨日に引き続き
本日2度目の更新しました。

次回もよろしくお願いします。
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