このやってられない世界で

みなせ

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「何かいいことがあった?」

 ミランダとローニャのおかげで、四日目の試験は楽しく終わった。
 だから、ちょっと浮かれていたんだろう。
 馬車に乗ると同時にカークにそう聞かれた。
 別に隠すことも無い。

「友達が出来た……かも?」
「友達?」
「うん、前の席の子たちなんだけど、今日、話しかけてくれて……」

 あ、自分で言っててちょっと胸が痛い……。

「……なんか、一人の子が家族ぐるみでオンリンナの発明品のファンなんだって。それで勇気を持って話しかけたって。そしたら意外と話が弾んで……」

 カークがじっと見てくるので、ぺらぺらと一人で話し続けてしまう。
 うーん、今度はカークの視線が痛いな。

―――――すいませんね。どうせ友達いませんよ……。浮かれまくっていますよ。

「それで、試験の最終日のお昼なんだけど」
「お昼?」
「ほら、今日の一個目の試験、最終日の午後になったから」
「あぁ、そうか。教室で食べるんだろう?」
「それがサロンを借りてるから、そっちで一緒に食べないかって誘われたんだけど、いいかな?」

 カークが教室を出るなって言うから、一応お伺いを立ててみる。

「……キーラ、その友達の名前は?」
「え? ミランダとローニャだよ」
「家名は?」
「えっと、確か、リスターだったはず」
「そう……キーラ、それは私も一緒に食べたら駄目だろうか?」
「は?」

 女子会ですよ? カークが来たら、女子トークできないじゃないですか。

「カーク、仲間に入りたいの?」
「そうじゃない。心配なだけだ」
「ご飯を食べるだけだよ?」

 サロンは棟ごとにある。
 ミランダたちが借りたのは、教室がある棟のものだと言っていた。

「……行くなって言っても、行きたいんだろう?」
「うん」

 せっかくだし。サロンって言うのも見てみたい。
 それに、教室じゃ話しにくいことがたくさんある。
 普通の人たちに聞きたいことも。

「キーラ、君はリーナに会いたくないんだろう?」

 ため息交じりに、カークがそう言った。

「会いたく、ないけど……」

 お昼休みは一時間。ご飯食べてトイレに行ったら終わりだ。
 サロンは個室だって言うから、行き帰りさえ気をつければ何とかなりそうだ。
 そんなに悩むことでもないと思うけど。

「返事は明日まで待ってくれ」

 カークが厭味ったらしく、ため息をついた。
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