このやってられない世界で

みなせ

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 次の日は質疑応答の時間だ。
 場所は私の部屋で、アーサーが手を叩けば面接にぴったりな会議室に早変わり。
 私が一人、向かい側に候補者五人が座って、一対五のグループ面接の始まりだ。

 昨日とは違い、私も候補者たちも幾分軽い格好で、お茶もお菓子も用意されている。
 注意は何を聞いてもいいけれど、名前など個人的な事を聞いてはいけないとだけ。
 アーサーもエマさんも候補者について全く教えてくれなかった。

 なら、何を聞けばいいのか?

 横に座るアーサーはすまし顔で正面を見据えている。
 向かいに座る五人は、皆無表情で斜め下に視線を落したまま身動き一つしない。
 だからと言って特に緊張した感じもしない。

「皆さんは、どのように聞いてここにいらしたんですか?」

 長くない沈黙の後私は勇気を持って、そう一つ目の質問を口に出した。
 五人は見事にシンクロして顔を上げる。そして候補者同士で視線を合わせると、一番左端の人が頷いた。
 この人は確実の方の人だ。

「代表して私から申し上げます。王の代行、および姫君の伴侶の選定と聞いています」
「そうですか。貴方達はそれを受け入れている、と言うことでいいですか?」

 重ねて尋ねると、また顔を見合わせる。

「姫君がそう望まれるなら、私たちは覚悟しています」

 覚悟……って。それって嫌だけど、仕方ないからやるってことだよね?

「この中から選ぶつもりか?」

 無言でいると、真ん中の人が忌々し気にそう言った。
 この人は気になった方の人だ。

「私はそう言う意味では誰も選ぶつもりはありません」
「ならどうして、今日俺たちを集めた。代行者はどうする? 隣の男にやらせるつもりか?」
「代行者は私が自分でやります」
「お前が? この国にはじめてきた奴が出来ると思うのか?」
「ごもっともなご意見です。だから、貴方達に私の補助をしてもらいたいんです」
「補助、だと?」

 思い切り睨みつけられた。
 他の人たちは相変わらず無表情で私たちを見ている。口を挟む気はないみたい。

「私は結婚する気はありません。貴方達だって嫌でしょう? 急に現れた女と結婚しろなんて言われても。私だって嫌です。でも王の変わりは必要で、それを私にやれと言うなら王が目を覚ますまでの間だけならやります。私もまだ半信半疑ですが、王の娘らしいので……でも貴方が言うように私はこの国のことを知りません。だから、補助をお願いしたいの。私が選んでもいいけど、できればやってもいいって言う人にお願いしたい」

 そう言ってゆっくりと彼らを見回す。

「俺は、抜ける」

 真ん中の男が顔をそむけて、席を立った。
 その右隣の男も立つ。この人も気になった方の人。

「私も失礼します」

 二人は連れ立って部屋を出て行く。
 残りの三人は。

「貴方達は、どうするの? 手伝ってくれる?」
「ラーシュ様のためですから」

 右端の人が肩をすくめた。

「バルドがやるなら」

 言ったのは左端の人。

「補助の補助、であれば」

 最後に、左から二番目の人。

「見事に残りましたね」

 アーサーがようやく声を出した。

「お勧めの三人です。右から、バルド、カルロ、ゼスト。ラーシュ様の腹心です」

 アーサーの紹介で、三人が立ち上がって私に向かって頭を下げた。

「姫君、どうぞお見知りおきを」

 もしかして出来レースだった?
 でもまぁ。

「これからよろしくお願いします」

 私も立ち上がって頭を下げた。
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