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第12話 アダマンタイトの戦斧

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 夕方。
 王都に帰還した。

 夕食前に俺たちは武具屋に行った。
 ルイズたちの装備を新調する為だ。

 特にフローラなんて戦斧が壊れたから、新しいモノを買わないとどうしようもない。

 王都の商業区域にある中でも、一番大きな武具屋に行く。

 武具屋には、所狭しと武器、防具、その他、冒険者に必要な道具が陳列されていた。

「何度来ても凄い品揃えに圧倒されます」
「なんか興奮するにゃ~♪」
「ん。ゾクゾクする」

 ルイズたちが妙に興奮している。
 だが、気持ちは分かる。冒険者なら、こういう品物を見ると血が騒ぐのは当然だ。

「フローラの戦斧を買うのは当然として、全員分の新しい防具も買う。俺が選んでも良いか?」
「でも、先生……」

 ルイズがちょいちょいと俺の服の裾を指でつまむ。

「どうした?」
「私達、今はあんまりお金がないので……、新調するのはまた今度に……」

 銀髪金瞳のハイエルフが遠慮がちに言う。

「今回は全て俺が出す」
「そんな! それでは先生に申し訳ないです」

 ルイズの金瞳に罪悪感が宿る。

「ルイズの言うとおり、それだとなんだか心苦しいにゃ~」
「ん。罪悪感が出てくる……」

 フローラもエルフリーデも、美貌が陰った。

「心配するな。これでも俺は元は勇者パーティーにいたんだ。貯金はかなりある」

 これは事実だ。
 腐っても勇者パーティーのメンバーだったからな。
 並の冒険者とは比較にならない位、報酬を貰っていた。
 まあ、俺の取り分は勇者ハーゲンたちの10分の1だったが……。
 それでも、20歳にしては有り得ないくらいの貯金がある。

「しかし……」

 ルイズがなおも、遠慮する。フローラもエルフリーデも同様だ。

「あのな三人とも。俺たちは仲間だ。そうである以上、保有している金を仲間の為に使うのは当然だ。それに俺たちは冒険者だぞ? 装備は常に最高のモノにしておくのが大原則だ。鎧や盾を新調するのを怠った為に命まで落とす冒険者もいるんだぞ?」

 俺が諭すように言う。
 ガラでもないが、俺はこの子達よりは場数を踏んで、経験もある。
 指導するのが役目だろう。

「だから、遠慮はいらない。それに俺はルイズたちの能力を模倣《コピー》したお陰で強くなれた。その感謝の意味もある。逆にここで遠慮して防具を手に入れるのを止めたら冒険者失格だぞ?」
「は、はい。失礼しました。ありがたく受け取ります」

  ルイズが軍人みたいに背筋をのばす。

「ん。私に対する感謝の意味もあるなら大いばりで貰う」

  エルフリーデは胸を反らした。

「にゃ~、エルフリーデ。そこは威張らない方が良いと思うよ?」

 フローラがツッコむ。 
 三人とも理解してくれたようなので、俺は武器と防具をじっくりと見て回った。

 ルイズとフローラに新しい軽鎧。そして、エルフリーデに新しいローブを買った。
 どれも性能が良いので、彼女たちの防御力は確実に上がるだろう。
 フローラにはアダマンタイト製の戦斧を買った。

 アダマンタイトは最高レベルの硬度を誇る稀少金属だ。
 切れ味も耐久力も、鋼鉄製の武器とは桁外れに強い。
 このアダマンタイト製の戦斧なら、フローラのパワーにも耐えられる筈だ。

「カッコイイし、綺麗だにゃ~♪」

 フローラがはしゃいだ。
 銀色に光る戦斧は神々しいばかりの光を放っている。

「猫神族の怪力とアダマンタイトの戦斧の組み合わせですか……。いったいどの位の破壊力が出るのでしょうか?」

 ルイズがコッソリと俺に耳打ちする。

「想像を絶する破壊力だろうな」

 俺は軽い戦慄とともに苦笑する。

「ありがとう、カイン♪」

 フローラが、美貌に満面の笑みを浮かべる。
 美しく、純粋な笑顔で、心が癒やされる。

「どういたしまして」

 さて、次は食料と水、そして医薬品を買うとしよう。
 それが終わったら夕食だ。

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