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皆殺し

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【視点 アーリヤ王女】
【場所 アメストリア鉱山最深部】
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 魔族ヴァラクは、アーリヤ王女を連れて、アメストリア鉱山の最深部に向かって移動した。

 その途上で、遭遇したギルヴァン鋼国の正規兵2000名と冒険者30名を、瞬く
間に鏖殺した。

 あまりに凄惨な光景に、アーリヤ王女は目を背けた。

 魔族ヴァラクは、正規軍と冒険者パーティーを虐殺する時、かすり傷すら負わなかった。

 魔族の圧倒的な力に、アーリヤ王女は震えが止まらなかった。

 魔族ヴァラクは、微笑を浮かべ、鼻歌を唄いながら鉱山を移動した。

 やがて、魔族ヴァラクとアーリヤ王女は、アメストリア鉱山の最深部にある広間についた。

 そこは広大な空間だった。

 ドーム状の空間で、天井は500メートル程ある。 

 2万人はゆうに入れるスペースがあった。
 ここも採掘場の一つであり、アダマンタイトの鉱脈がある。

「いったい、お前の望みはなんなんだ? アダマンタイトが望みなのか?」

 アーリヤ王女が、問いただした。
 灰色の髪の王女は、足の縄だけは解かれたが、まだ縄で後ろ手に拘束されていた。
 アーリヤ王女の問いかけに、魔族ヴァラクは冷笑で答えた。

「まさか、アダマンタイトなどいつでも手に入ります。私の望みは、この下にあります(・・・・)」
「下?」

 アーリヤ王女が、疑問符を顔に浮かべる。
 ここはアメストリア鉱山の最深部であり、ここより下層の場所は存在しない。

(いったい、この魔族は何を考えている?)

「ええ、文字通り、この下です」

   魔族ヴァラクが、右手をかざした。

 膨大な魔力が集まり、右手が魔法光で光り輝く。

 魔族ヴァラクは、右手を振り下ろして、片膝をつきながら、地面に右の掌をつけた。

 ゴンっ!

 という地響きが鳴った。

 轟音と振動が湧き起こり、地震のようにアメストリア鉱山が揺れ動く。

「な、何をしたんだ?」

 アーリヤ王女が、叫ぶ。

「すぐに分かりますよ」

 魔族ヴァラクは、立ち上がると片膝の埃を払った。

 やがて、地面全体の亀裂が走った。

 ドンっ!

 という腹に響く音と共に、地面が裂けて、落ちた。
 地面が陥没して、土と岩が下に落ちていく。

 魔族ヴァラクは無詠唱で、飛行の魔法を唱えて、自分の肉体とアーリヤ王女を空中に浮かばせた。

 2人の足下の地面が、陥没し、やがて、巨大な穴が開いた。

「下層に空間が?」

 アーリヤ王女が、驚愕して、下を見る。

 自分がさっきまで立っていた地面が焼失し、巨大な穴が出来てる。
 そして、その下には未知の空間が広がっていた。

「目的地に参りましょうか?」

 魔族ヴァラクは、楽しそうに笑むと、アーリヤ王女とともに、下降していった。


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