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この世界について
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何とかカルボナーラをお腹に収めた頃、獣人は私の素性についてやけに知りたがった。まぁ?そっちからすれば私は不審者だろうからねぇ…。
「それで?お前はどこの出身なんだ?今時獣人を知らないなんて、箱入り通り越して監禁されてた可能性を疑いたくなるんだが。」
「か、監禁なんて…!私は一般人だし、普通に暮らしてきたわよ!獣人なんて、今までテレビなんかでも取り上げられたことなかったし…!」
そうだ、獣人が誕生したなんてなったら、それこそ世界規模での大ニュースになるに違いない。どうやったって耳に入るはず。でも、今までそんなこと見たことも聞いたこともないし…。
「そうは言ってもな…。オレたち獣人が研究対象だったのなんてはるか昔だし、今となっちゃ普通に社会生活に溶け込んでるし。企業なんかは、人事採用の時に獣人かどうかで差別しちゃなんねぇように定められている。…とにかく、一般人っていうなら獣人を聞いたことないってのは、あり得ないんだよ。」
「…。」
「…その服装から察するに、お前社会人だろ?どこの会社に勤めてるとか…。」
「そうだ!名刺!」
出張から帰って来たばかりで、スーツのポケットには名刺が入ったままになっている。私の身分を証明するのに、これを活用しない手はないだろう。少しくたびれてきた名刺入れから一枚引き抜いて獣人に差し出す。それを見て、獣人は眉をひそめる。いや眉があるかは分からないけれど。おもむろにスマホを取り出して、何かを検索し始めた。その手、スマホ操作できるのね…。
「はいこれ。私の名前だけじゃなく、会社名もばっちり。今回の出張でも配ったし、間違いだってないはずよ。」
「…お前、出張からいつ帰って来たんだ。」
「いつって、ついさっきよ。新幹線に乗って帰ってきて、タクシーで。ここまで寄り道もしてない。」
「…あり得ない。」
「何があり得ないのよ。まっすぐ家に帰ろうが私の勝手でしょ。」
「そうじゃない。この会社、確かに実在するが…。2年前、獣人に不当に性的な接客を強要させていたとして捜査が入っている。」
「はぁ!?」
「そこで働いているお前が、獣人を知らないなんてことはあり得ない。」
「そんな捜査なかったわよ!しかも獣人なんて…まさか!」
「いいや、あった。俺もその捜査に参加しているから覚えてる。間違いない。」
うちの会社は、確かに有名な大企業とは言えないがごく一般的な会社。さすがに警察の捜査対象になったとあれば、報道だってされる程度の…。だけど私の頭がおかしくなっていない限り、記憶上警察のご厄介になったことなんてない。…ていうか、捜査に参加した…?
「…犬のおまわりさん?」
「気になるとこそこかよ。あと犬じゃなくて狼だって言ってんだろ。狼の、獣人の、警察官だ。」
「童謡にならって犬でいいじゃない。さしずめ私は迷子の子猫ちゃん…。」
「お前はいいとこふてぶてしいドラ猫だ。いいから真面目に話を聞け。」
「…現実味ないもの…。」
「…。」
多少ふざけてでもいないと、どんどん気持ちが落ち込んでいってしまう。話を聞けば聞くほど、私の方が異常なんだって言われているような気がする。私が今まで信じていたもの、当たり前だと思っていたものが崩れ去っていく。
「ともかく、俺は確かにこの会社に捜査に入った。2年前の時点で、すでにここで働いていたというのなら、当時の社員名簿からお前が本当に所属していたかどうか確認できるが…。」
獣人がひらひらと翳して見せるのは「新島有希子」と書かれた小さな紙。私の名刺だ。先ほどまでは頼もしく思えていたのに、今はただの紙切れにしか思えない。
「私が嘘ついてるっていうの?そんなことしてない!」
「こればっかりは調べさせてもらう他ない。…正直、お前が言っていることには疑問点がありすぎる。」
「そんな…。」
「…態度からして、お前が悪人とまではいわないが、警察官としては見逃すわけにはいかない。それに…。」
「それに?」
「お前にとっても、悪い話ではないと思う。俺が言っていることは、まぎれもなくこの世界の現実だ。それに違和感があるっていうんなら…。単純な勘違いなんかじゃない何かがあるはずだ。」
「…心当たりがあるの?」
「心当たりというか、何というか…。とにかく、俺よりかは頭が回る知り合いがいる。そいつに話を聞くだけ聞いてみる。…それまでここ使ってくれていいから。」
「…いいの?」
「ここ以外に行く当てがあんならそれでもいいが。…言っとくが、ホテルに泊まろうが獣人の従業員はいるぞ。それどころか、街を歩けば普通に獣人はいる。当たり前だけどな。」
「…なんで助けてくれるの?私、自分で言うのもなんだけど、かなり怪しい人間だと思うんだけど。」
「何でって言われてもな…。困っている人間を助ける理由に、俺が警察官だからってのじゃ足りないのか?」
不思議そうに返す獣人にもはや尊敬の念すら覚える。制服を着ている勤務中ならいざ知らず、ジャージ姿の完全プライベートでも警察官として人助けをしようとは。…最初泥棒なんて言ってごめんなさい。警察呼ぶって言って引き下がらなかったのは、自分がその警察だったからか。いくら何でも、もっと冷静に対応すればよかったと思う。自分の態度がばからしいやら相手の優しさがありがたいやら…涙が出そうだ。
「それで?お前はどこの出身なんだ?今時獣人を知らないなんて、箱入り通り越して監禁されてた可能性を疑いたくなるんだが。」
「か、監禁なんて…!私は一般人だし、普通に暮らしてきたわよ!獣人なんて、今までテレビなんかでも取り上げられたことなかったし…!」
そうだ、獣人が誕生したなんてなったら、それこそ世界規模での大ニュースになるに違いない。どうやったって耳に入るはず。でも、今までそんなこと見たことも聞いたこともないし…。
「そうは言ってもな…。オレたち獣人が研究対象だったのなんてはるか昔だし、今となっちゃ普通に社会生活に溶け込んでるし。企業なんかは、人事採用の時に獣人かどうかで差別しちゃなんねぇように定められている。…とにかく、一般人っていうなら獣人を聞いたことないってのは、あり得ないんだよ。」
「…。」
「…その服装から察するに、お前社会人だろ?どこの会社に勤めてるとか…。」
「そうだ!名刺!」
出張から帰って来たばかりで、スーツのポケットには名刺が入ったままになっている。私の身分を証明するのに、これを活用しない手はないだろう。少しくたびれてきた名刺入れから一枚引き抜いて獣人に差し出す。それを見て、獣人は眉をひそめる。いや眉があるかは分からないけれど。おもむろにスマホを取り出して、何かを検索し始めた。その手、スマホ操作できるのね…。
「はいこれ。私の名前だけじゃなく、会社名もばっちり。今回の出張でも配ったし、間違いだってないはずよ。」
「…お前、出張からいつ帰って来たんだ。」
「いつって、ついさっきよ。新幹線に乗って帰ってきて、タクシーで。ここまで寄り道もしてない。」
「…あり得ない。」
「何があり得ないのよ。まっすぐ家に帰ろうが私の勝手でしょ。」
「そうじゃない。この会社、確かに実在するが…。2年前、獣人に不当に性的な接客を強要させていたとして捜査が入っている。」
「はぁ!?」
「そこで働いているお前が、獣人を知らないなんてことはあり得ない。」
「そんな捜査なかったわよ!しかも獣人なんて…まさか!」
「いいや、あった。俺もその捜査に参加しているから覚えてる。間違いない。」
うちの会社は、確かに有名な大企業とは言えないがごく一般的な会社。さすがに警察の捜査対象になったとあれば、報道だってされる程度の…。だけど私の頭がおかしくなっていない限り、記憶上警察のご厄介になったことなんてない。…ていうか、捜査に参加した…?
「…犬のおまわりさん?」
「気になるとこそこかよ。あと犬じゃなくて狼だって言ってんだろ。狼の、獣人の、警察官だ。」
「童謡にならって犬でいいじゃない。さしずめ私は迷子の子猫ちゃん…。」
「お前はいいとこふてぶてしいドラ猫だ。いいから真面目に話を聞け。」
「…現実味ないもの…。」
「…。」
多少ふざけてでもいないと、どんどん気持ちが落ち込んでいってしまう。話を聞けば聞くほど、私の方が異常なんだって言われているような気がする。私が今まで信じていたもの、当たり前だと思っていたものが崩れ去っていく。
「ともかく、俺は確かにこの会社に捜査に入った。2年前の時点で、すでにここで働いていたというのなら、当時の社員名簿からお前が本当に所属していたかどうか確認できるが…。」
獣人がひらひらと翳して見せるのは「新島有希子」と書かれた小さな紙。私の名刺だ。先ほどまでは頼もしく思えていたのに、今はただの紙切れにしか思えない。
「私が嘘ついてるっていうの?そんなことしてない!」
「こればっかりは調べさせてもらう他ない。…正直、お前が言っていることには疑問点がありすぎる。」
「そんな…。」
「…態度からして、お前が悪人とまではいわないが、警察官としては見逃すわけにはいかない。それに…。」
「それに?」
「お前にとっても、悪い話ではないと思う。俺が言っていることは、まぎれもなくこの世界の現実だ。それに違和感があるっていうんなら…。単純な勘違いなんかじゃない何かがあるはずだ。」
「…心当たりがあるの?」
「心当たりというか、何というか…。とにかく、俺よりかは頭が回る知り合いがいる。そいつに話を聞くだけ聞いてみる。…それまでここ使ってくれていいから。」
「…いいの?」
「ここ以外に行く当てがあんならそれでもいいが。…言っとくが、ホテルに泊まろうが獣人の従業員はいるぞ。それどころか、街を歩けば普通に獣人はいる。当たり前だけどな。」
「…なんで助けてくれるの?私、自分で言うのもなんだけど、かなり怪しい人間だと思うんだけど。」
「何でって言われてもな…。困っている人間を助ける理由に、俺が警察官だからってのじゃ足りないのか?」
不思議そうに返す獣人にもはや尊敬の念すら覚える。制服を着ている勤務中ならいざ知らず、ジャージ姿の完全プライベートでも警察官として人助けをしようとは。…最初泥棒なんて言ってごめんなさい。警察呼ぶって言って引き下がらなかったのは、自分がその警察だったからか。いくら何でも、もっと冷静に対応すればよかったと思う。自分の態度がばからしいやら相手の優しさがありがたいやら…涙が出そうだ。
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