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身の危険
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とにかく車に乗って、とナインに促されるまま、俺たち三人は車に乗り込んだ。車自体は大して認識に差がないのか、それとも単に新島さんの関心が向かなかっただけなのか、特に指摘をしてくることはなかった。その分、エルフであるナインが質問攻めにあっていた。ナインは少々居心地が悪そうにしていたが、しっかりと対応してくれている。むしろそっちに気を多少取られているせいか、普段制限速度ギリギリアウトの車の運転も安全運転の範疇に収まっていて俺としては嬉しい誤算だ。
「エルフって、人間よりも長生きだって印象あるんだけど、本当?」
「まぁ人間よりは大分ね。…獣人に関しては否定的な感じだったと思ってたんだけど、エルフに関してはすんなり受け入れてるよね。何で?実は知っていたとか?」
「知っていたというか…創作作品で引っ張りだこだよ!魅力的な種族だもん。」
「…獣人は、そういった作品にも存在しないの?」
「いるにはいるけど…私が想像する獣人って、人間に動物の耳やしっぽが生えた感じの見た目なんだよね。あくまで人間ベースというか。郡司さんは完全に二足歩行の犬って感じじゃない。」
「狼だって言ってんだろ。」
「健人、突っ込むところそこじゃないよ。…新島さん、だったっけ?お互い事情を知らないとはいえ、ちょっと言いすぎなんじゃないかな。友達をそんな風に言われるなんて、見過ごせないな。」
「…え、ごめんなさい…?」
「別にいいよ、ナイン。」
「…。」
「ご、ごめんなさい、私…。」
さっきまで特に問題なく会話をしていたナインは、新島さんの一言で不機嫌を前面に押し出してしまった。…別に、気にすることでもないと思うけどな、そんなもんだと思うし。
ナインの家までここからもう少しある。先ほどより心なしか重くなった空気の中、俺たちは無言のまま流れる景色に視線を向けたのだった。信号にほとんど捕まることがなかったのだけが救いだ。
「…着いたよ。ここが僕の家。」
「あ、ありがとうございました…って、でっか!?」
まだ不機嫌から抜け出せていないナインは、少々荒っぽく車を停めて俺たちを家へと案内した。新島さんもナインの機嫌が斜めになっていることを察しているのか、礼もそこそこにそろりと車から降りてくる。しかしそれもナインの家と言われた建物を目にした瞬間霧散した。気持ちはわかる。俺も初めて連れてこられたときは固まったもんだ。
「ここはナインの家、兼研究所なんだ。」
「研究所!?ってことは…。」
「そう、僕はれっきとした研究者。しかも国お抱えの一流さ!」
「国お抱え!?すごい!」
思ってもいなかった、というかナインのこの見た目で想像できるはずもないとは思うが、まさかの肩書に手放しに誉める新島さんに気をよくしたのか、低い背丈をこれでもかと伸ばして胸を張って見せるナイン。個人的な感情は置いておくとして、仕事や自分の研究に対しては誇りを持っていると思う。その部分を素直に褒められて嬉しいのだろう。…単純だとは思うが。
「その通り!超一流の研究者であるこの僕が!新島さんと健人を取り巻く不思議な現象を分析して見せようじゃないか!」
「よ、この国一の頭脳ー。」
「よ、よろしくお願いします!」
「あっはっはっは!まっかせなさーい!」
ナインが気をよくしている時は、基本的に流れに乗っておだてておくに限る。適当に合いの手を入れながら、さぁ入って入って!と胸を張りすぎてもはや仰け反っているナインについて自宅兼研究所にお邪魔する。ここに来るのは久しぶりだ。何度かお邪魔しているが、いまだにこの建物の全貌は分かっていない。まぁ俺に全部見せる必要もないだろうけど。ナインの性格からしても生活スペースは適当だろうし、研究スペースもそれはそれで他人が気軽に踏み込めるようにはなっていないだろう。
「…わぁ…広ーい…。」
「そうでしょー。まぁ僕らからしてみれば、生活スペースなんてなくても問題はないんだけどね。」
「え、どういう…?」
「おいナイン。あれこの前来た時に処分しとけって言ってたやつだろ、何で残ってんだ。」
「え!?そうだったっけ?あぁーっとしまったなぁ、回収日過ぎちゃってるなぁ、また今度だなぁ!失敗失敗、あははははー!」
「…。」
「さ、こっちこっち!」
わざとらしく視線を彷徨わせながら先を急ぐナインを睨みながらも、大人しくついていこうとしたが…。その角を曲がった先は野良猫もびっくりの狭さになっていた。これどうやったら俺たち通れるってんだ。家主は何も感じていないのか、さすがの足取りでするすると進んでいる。背後ではついて来ていたはずの新島さんの気配が消えた。…遠くでくぐもった悲鳴が聞こえる。まずはこの家の片付けから手を付けなければならないようだ。
「エルフって、人間よりも長生きだって印象あるんだけど、本当?」
「まぁ人間よりは大分ね。…獣人に関しては否定的な感じだったと思ってたんだけど、エルフに関してはすんなり受け入れてるよね。何で?実は知っていたとか?」
「知っていたというか…創作作品で引っ張りだこだよ!魅力的な種族だもん。」
「…獣人は、そういった作品にも存在しないの?」
「いるにはいるけど…私が想像する獣人って、人間に動物の耳やしっぽが生えた感じの見た目なんだよね。あくまで人間ベースというか。郡司さんは完全に二足歩行の犬って感じじゃない。」
「狼だって言ってんだろ。」
「健人、突っ込むところそこじゃないよ。…新島さん、だったっけ?お互い事情を知らないとはいえ、ちょっと言いすぎなんじゃないかな。友達をそんな風に言われるなんて、見過ごせないな。」
「…え、ごめんなさい…?」
「別にいいよ、ナイン。」
「…。」
「ご、ごめんなさい、私…。」
さっきまで特に問題なく会話をしていたナインは、新島さんの一言で不機嫌を前面に押し出してしまった。…別に、気にすることでもないと思うけどな、そんなもんだと思うし。
ナインの家までここからもう少しある。先ほどより心なしか重くなった空気の中、俺たちは無言のまま流れる景色に視線を向けたのだった。信号にほとんど捕まることがなかったのだけが救いだ。
「…着いたよ。ここが僕の家。」
「あ、ありがとうございました…って、でっか!?」
まだ不機嫌から抜け出せていないナインは、少々荒っぽく車を停めて俺たちを家へと案内した。新島さんもナインの機嫌が斜めになっていることを察しているのか、礼もそこそこにそろりと車から降りてくる。しかしそれもナインの家と言われた建物を目にした瞬間霧散した。気持ちはわかる。俺も初めて連れてこられたときは固まったもんだ。
「ここはナインの家、兼研究所なんだ。」
「研究所!?ってことは…。」
「そう、僕はれっきとした研究者。しかも国お抱えの一流さ!」
「国お抱え!?すごい!」
思ってもいなかった、というかナインのこの見た目で想像できるはずもないとは思うが、まさかの肩書に手放しに誉める新島さんに気をよくしたのか、低い背丈をこれでもかと伸ばして胸を張って見せるナイン。個人的な感情は置いておくとして、仕事や自分の研究に対しては誇りを持っていると思う。その部分を素直に褒められて嬉しいのだろう。…単純だとは思うが。
「その通り!超一流の研究者であるこの僕が!新島さんと健人を取り巻く不思議な現象を分析して見せようじゃないか!」
「よ、この国一の頭脳ー。」
「よ、よろしくお願いします!」
「あっはっはっは!まっかせなさーい!」
ナインが気をよくしている時は、基本的に流れに乗っておだてておくに限る。適当に合いの手を入れながら、さぁ入って入って!と胸を張りすぎてもはや仰け反っているナインについて自宅兼研究所にお邪魔する。ここに来るのは久しぶりだ。何度かお邪魔しているが、いまだにこの建物の全貌は分かっていない。まぁ俺に全部見せる必要もないだろうけど。ナインの性格からしても生活スペースは適当だろうし、研究スペースもそれはそれで他人が気軽に踏み込めるようにはなっていないだろう。
「…わぁ…広ーい…。」
「そうでしょー。まぁ僕らからしてみれば、生活スペースなんてなくても問題はないんだけどね。」
「え、どういう…?」
「おいナイン。あれこの前来た時に処分しとけって言ってたやつだろ、何で残ってんだ。」
「え!?そうだったっけ?あぁーっとしまったなぁ、回収日過ぎちゃってるなぁ、また今度だなぁ!失敗失敗、あははははー!」
「…。」
「さ、こっちこっち!」
わざとらしく視線を彷徨わせながら先を急ぐナインを睨みながらも、大人しくついていこうとしたが…。その角を曲がった先は野良猫もびっくりの狭さになっていた。これどうやったら俺たち通れるってんだ。家主は何も感じていないのか、さすがの足取りでするすると進んでいる。背後ではついて来ていたはずの新島さんの気配が消えた。…遠くでくぐもった悲鳴が聞こえる。まずはこの家の片付けから手を付けなければならないようだ。
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