【完結】二番手聖女の私は失恋して片思い中の王子を慰めていたら、契約婚をすることになり、幸せな花嫁になりました

西野歌夏

文字の大きさ
20 / 37
第一章 波乱と契約婚の花嫁生活幕開け

ニーズベリー城でのフランソワーズつき侍女アガサSide

しおりを挟む
 私はアガサだ。19歳だ。小さな村で生まれたが、豪華絢爛な宮殿の舞台裏は最高に面白いと思っている。ニーズベリー城の主役は私たち一人一人だ。

 ニーズベリー城は歴代の何人かの女王が所有した美しい城だ。王は女性にでもなれる、権威ある唯一の職業だ。国のてっぺんが女性によって牛耳られるということだけでもワクワクする。聖女も女性にできる最高の仕事だと常々思っていた。

 国家の命運は世継ぎの存在に左右されると言われる。つまり、女王や王妃となるお方が国の将来を左右することになる。だから私は女官を目指した。小さな村の裕福な商人の娘にとって狭き門だ。そして運よくニーズベリー城の侍女の仕事につくことができた。これは最大の幸運だったと思っている。

 女性がつける仕事は、肉屋、蝋燭屋、帽子屋、手袋屋、刺繍屋、財布屋……色々あるが、ギルドでは師弟関係は認められない。働くには肉屋と結婚するしかない。妻として手伝うだけだ。

 侍女仲間は、私の他は貴族の娘ばかりだ。いかに私が幸運なのか、神に感謝したいほどだ。

 ニーズベリー城の新しい女主人は、聖女でいらしたフランソワーズ嬢となった。私も何度かチラリとお見かけしたことがあったが、実際にお会いして印象がだいぶ違った。スティーブン王子に付き添っているお姿を一瞬だけ見たといった断片的な情報しかなかったフランソワーズ様は、間近でお会いすると褐色の美しい髪を持ち、輝くようなエメラルドの瞳でエクボを見せて笑うお方だ。

 ニーズベリー城は国王陛下の別邸だが、次期国王となられるスティーブン王子の主な住居として使用されている。広大で美しい庭をいくつも持ち、お堀に囲まれた城で、この城に住めることは私にとっても最高の幸せだった。

 昨日、急遽抱え込まれるように帰ってこられたスティーブン王子は、フランソワーズ様が薬草を使って解毒剤を処方されてからしばらくすると元気に回復された。そして、昨晩突然フランソワーズ様とご結婚を発表された。そして、明け方にはご自宅が火事に遭われたフランソワーズ様が、ロバート・クリフトン卿に付き添われてニーズベリー城にいらした。怒涛の展開だ。

 その後のスティーブン王子の様子を拝見する限り、王子はフランソワーズ様に恋をされているご様子だ。フランソワーズ様は控えめながら、王子の求愛を受け入れていらっしゃるようだった。

 湯を浴びた時に、お身体を拝見させていただいたが、大きな胸にくびれた腰をされていて、鍛え上げられたお身体をされている印象で、貴族令嬢のお身体とは違っているように思う。

 スティーブン王子がネックレスの贈り物をされた時は、見ているこちらが赤面してしまうほど、お二人のときめきが伝わってきた。こちらが幸せな気持ちになってしまうほどの、初々しいお二人だ。

 遅い昼食をお二人で召し上がられて、しばらく花々が咲いている庭園を散策されていたかと思うと、寝室にお二人で篭られた。スティーブン王子が多少性急なご様子でフランソワーズ様を口説き落としているように見受けられ、私たち侍女は状況を察してずっとお部屋の外で待機している。

 フランソワーズ様が愛されていらっしゃるお声が時折お部屋の外まで聞こえて、私たちは赤面していた。お二人が盛り上がってらっしゃるご様子に、体が熱くなってしまう。

 突然婚約破棄となられたヴィラ様の時はこのようなことは無かったと思い、私どもは顔を見合わせて喜んだ。

 お二人の熱烈なご様子からすると、この国の未来は明るいと思える。先の王の時代はお世継ぎがなかなか生まれず、混乱を極めた暗い時代があったと商人の父から聞いていたが、次代の治世は明るいのではないだろうか。私のような小娘に何が分かるとも思うが、新しい女主人のフランソワーズ様は何かが違うと思えた。

 ――それにしても、お二人のあまりの熱烈さにこちらが赤面してしまうほど……。

 そこへ、スティーブン王子への面会を求めてロバート・クリフトン卿がいらしたとの知らせが、私たち侍女に伝えられた。

 ――クリフトン卿にはお待ちいただくしかないわ。こんなに熱烈な状況に割って入るなんて誰にもできないわ。

 スティーブン王子の色っぽい求愛行動は、今まで一度も見たことがなかったニーズベリー城のおつきのものたちにとって、これは最高の出来事だと思えた。

 ――どうか、お二人が無事に結婚式を成功できますように。
 
 私は心から願った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...