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第59話 書類整理をしよう
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書類整理の依頼元は王立魔法研究所だ。
名前の通り、魔法を研究する王国直轄の施設らしい。
凄いところからも依頼を頂いていたなんて『ニコ』はやはりすごい。
城壁警備隊からも書類整理の仕事を頂く事が多いようだけれど、本来の依頼は『警備補助』だ。それなのに「危険な事はさせられない」と隊長さんが書類整理か隊長の警護と称した遊び相手しかさせてくれないのだ。依頼内容変えればいいのにな。
地下室に保管してあるニコの依頼メモによれば本当に書類の整理になりそうだ。
一ヶ月に数回、購入した物品の帳簿整理や経理計算など幅広く任されていたらしい。
朝ごはんを「まるいひつじ亭」で「本当に少なめ」と「強く」お願いして作ってもらった。それでも多いから半分は残してお弁当にしてもらった。マスターの少なめの基準がどうなっているんだろうね……。
研究所は市民街近い場所に施設を構えていた。
城塞都市なのに広い敷地に赤レンガの建物が間隔を空けて二棟建っている。片方が魔法の研究を行っており、もう片方が魔道具の研究開発を行っているらしい。
その中心に小さな建物がある。今日の依頼主であるは両方の資料を取り纏めている管理部門の棟……小屋だ。
ノックしてドアを開ける。
「おはようございます! ニコです! よろしく……お願い……しま……す?」
開けた途端、屋内は書類の山が幾つもそびえていた。人、いるのかな……。
「待ってたよ!!」
奥の方、と言ってもそれ程奥行きが無さそうな部屋の中から男の人の返事があった!
「どこ……ですか!?」
書類の山脈の合間を縫うように奥に入ると机が幾つか並んでおり、中央の広い机に男性が一人、少し離して対面するように机二卓あり、似た雰囲気の女性が二人座って書類仕事をしていた。
これは……『鑑定』!
>ハーディ・ハーベル:王立魔法研究所 管理室室長。子爵。とにかく真面目。とても細かく偏屈。文字に異常なこだわりがある。魔法への造詣も深い。
>レイン:王立魔法研究所 管理室職員。魔法部門担当。まじめだが仕事は遅い。サニーは双子の妹。魔力量は研究所でもトップクラス。
>サニー:王立魔法研究所 管理室職員。魔道具部門担当。アバウトだが仕事は早い。レインは双子の姉。魔力操作は研究所でもトップクラス。
おそらく三人しかいないのだろう。
真面目なんだろうな、と思える白髪交じりの黒髪の壮年の人がハーティ室長だ。書類をじっくり読みながら判子を押している。時々真面目な顔のまま「この特徴ある字は……ベイルだな。堪らんねぇ」などと言っているのが「文字に異常なこだわり」なのかもしれない。業務を進めているなら何を言っていても問題ない、と思う。
金髪で長いのがレインさんで短いのがサニーさん。僕と同い年くらいに見える。双子だからか髪型でしか見分けが付かないくらい似ている。でも……。
レインさんは「この言葉の意味は正しいのかなぁ……この数字はどこから出てきたのかなぁ……」なんて何度も読み返している。これは進まないだろうなぁ。
サニーさんは「あれ? 合計間違ってる? ちょっとだからいいか!」なんて大声で言っている……その「ちょっと」は大丈夫!?
「ニコ、ようやく来てくれたね! 君が来れなかった間にこんなに溜まってしまったよ。これでもかなり処理して整理したんだけどね!」
……うん。頑張ったんですね!
「今日一日しか時間が取れないのですが何から手を付けますか?」
正直、どこから手を付けて良いか分からない。
「計算が得意だから請求書の整理をお願いしようかな」
「「これ」」
姉妹が僕の近くにあった木箱を指差した。
大き目の箱が二十箱近く積まれていた。
「「机はいつもの」」
また姉妹がビシッとレインの横の机を指差す。一卓だけ綺麗にしてあるな、と思っていたけれど僕のためでしたか。
木箱の一つを覗いてみると請求先は魔法と魔道具の研究棟の名前が入って混ざっていた。先ずは宛先で分けていこう。
そうだスキル『思考加速』と『心眼』。
おお! 何となくはかどっている気がする!!
取り敢えず木箱全てを棟ごとに仕分けたので次は各月毎に分ける。三ヶ月前から貯めていたみたいだから各三つの山を作り、更に購入先で分ける……どれだけ買っているんだと少し呆れる。内容は読むと手が止まるから見ないけど。
そして、帳簿にひたすら書き込む。
見終わった請求書は箱に詰め直す。
時間はかかったと思うけれど何とか終わらせた……あれ?三人とも手を止めてこっちを見ている?
「前は一日かけてたのに、まだお昼前だよ?」
「しかも前より綺麗にまとめているよね!?」
レインさんとサニーさんが同時に聞いてきた。
「色々考えてこれが一番だと思ったのですけれど……ダメですか?」
「いや、来ない間にも腕を上げたんだね! 素晴らしい!」
室長まで……この世界の人は書類整理が苦手なのか整理の技術そのものが遅れているのかもしれない。
「それ程では無いですよ。僕を見てないで皆さんも進めて下さいね!」
その後は購入などの発注書、魔道具部門の仕様書や図面の整理などをお昼ごはんを挟んで終わらせたところで午後を少し過ぎた。
そして僕は帳簿類を片していているとレインさんの後ろの棚に巻物が詰め込まれていたのが気になった。
「レインさん、後ろの巻物を片付けますか?」
「……巻物? あぁ、査定しないといけないから…。今までこの作業までたどり着いていなかったから説明していなかったね……。今の作業が終わっているなら手伝ってみる?」
「査定? 巻物のですか?」
どれも新しそうなので歴史的な価値では無いと思う。
「そう。全部、魔法部門が新しく開発した魔法が記された巻物。内容を確認して査定して、開発者に支払うの」
RPGでは「巻物」といえば開く事で覚えたり、即座に発動するシーンがあったのを思い出す。
「これをどうするのですか?」
「ここにあるのはサンプルだから中身を確認して実際に使ってみて決めるの」
「どこでですか?」
「地下の実験場だよ」
名前の通り、魔法を研究する王国直轄の施設らしい。
凄いところからも依頼を頂いていたなんて『ニコ』はやはりすごい。
城壁警備隊からも書類整理の仕事を頂く事が多いようだけれど、本来の依頼は『警備補助』だ。それなのに「危険な事はさせられない」と隊長さんが書類整理か隊長の警護と称した遊び相手しかさせてくれないのだ。依頼内容変えればいいのにな。
地下室に保管してあるニコの依頼メモによれば本当に書類の整理になりそうだ。
一ヶ月に数回、購入した物品の帳簿整理や経理計算など幅広く任されていたらしい。
朝ごはんを「まるいひつじ亭」で「本当に少なめ」と「強く」お願いして作ってもらった。それでも多いから半分は残してお弁当にしてもらった。マスターの少なめの基準がどうなっているんだろうね……。
研究所は市民街近い場所に施設を構えていた。
城塞都市なのに広い敷地に赤レンガの建物が間隔を空けて二棟建っている。片方が魔法の研究を行っており、もう片方が魔道具の研究開発を行っているらしい。
その中心に小さな建物がある。今日の依頼主であるは両方の資料を取り纏めている管理部門の棟……小屋だ。
ノックしてドアを開ける。
「おはようございます! ニコです! よろしく……お願い……しま……す?」
開けた途端、屋内は書類の山が幾つもそびえていた。人、いるのかな……。
「待ってたよ!!」
奥の方、と言ってもそれ程奥行きが無さそうな部屋の中から男の人の返事があった!
「どこ……ですか!?」
書類の山脈の合間を縫うように奥に入ると机が幾つか並んでおり、中央の広い机に男性が一人、少し離して対面するように机二卓あり、似た雰囲気の女性が二人座って書類仕事をしていた。
これは……『鑑定』!
>ハーディ・ハーベル:王立魔法研究所 管理室室長。子爵。とにかく真面目。とても細かく偏屈。文字に異常なこだわりがある。魔法への造詣も深い。
>レイン:王立魔法研究所 管理室職員。魔法部門担当。まじめだが仕事は遅い。サニーは双子の妹。魔力量は研究所でもトップクラス。
>サニー:王立魔法研究所 管理室職員。魔道具部門担当。アバウトだが仕事は早い。レインは双子の姉。魔力操作は研究所でもトップクラス。
おそらく三人しかいないのだろう。
真面目なんだろうな、と思える白髪交じりの黒髪の壮年の人がハーティ室長だ。書類をじっくり読みながら判子を押している。時々真面目な顔のまま「この特徴ある字は……ベイルだな。堪らんねぇ」などと言っているのが「文字に異常なこだわり」なのかもしれない。業務を進めているなら何を言っていても問題ない、と思う。
金髪で長いのがレインさんで短いのがサニーさん。僕と同い年くらいに見える。双子だからか髪型でしか見分けが付かないくらい似ている。でも……。
レインさんは「この言葉の意味は正しいのかなぁ……この数字はどこから出てきたのかなぁ……」なんて何度も読み返している。これは進まないだろうなぁ。
サニーさんは「あれ? 合計間違ってる? ちょっとだからいいか!」なんて大声で言っている……その「ちょっと」は大丈夫!?
「ニコ、ようやく来てくれたね! 君が来れなかった間にこんなに溜まってしまったよ。これでもかなり処理して整理したんだけどね!」
……うん。頑張ったんですね!
「今日一日しか時間が取れないのですが何から手を付けますか?」
正直、どこから手を付けて良いか分からない。
「計算が得意だから請求書の整理をお願いしようかな」
「「これ」」
姉妹が僕の近くにあった木箱を指差した。
大き目の箱が二十箱近く積まれていた。
「「机はいつもの」」
また姉妹がビシッとレインの横の机を指差す。一卓だけ綺麗にしてあるな、と思っていたけれど僕のためでしたか。
木箱の一つを覗いてみると請求先は魔法と魔道具の研究棟の名前が入って混ざっていた。先ずは宛先で分けていこう。
そうだスキル『思考加速』と『心眼』。
おお! 何となくはかどっている気がする!!
取り敢えず木箱全てを棟ごとに仕分けたので次は各月毎に分ける。三ヶ月前から貯めていたみたいだから各三つの山を作り、更に購入先で分ける……どれだけ買っているんだと少し呆れる。内容は読むと手が止まるから見ないけど。
そして、帳簿にひたすら書き込む。
見終わった請求書は箱に詰め直す。
時間はかかったと思うけれど何とか終わらせた……あれ?三人とも手を止めてこっちを見ている?
「前は一日かけてたのに、まだお昼前だよ?」
「しかも前より綺麗にまとめているよね!?」
レインさんとサニーさんが同時に聞いてきた。
「色々考えてこれが一番だと思ったのですけれど……ダメですか?」
「いや、来ない間にも腕を上げたんだね! 素晴らしい!」
室長まで……この世界の人は書類整理が苦手なのか整理の技術そのものが遅れているのかもしれない。
「それ程では無いですよ。僕を見てないで皆さんも進めて下さいね!」
その後は購入などの発注書、魔道具部門の仕様書や図面の整理などをお昼ごはんを挟んで終わらせたところで午後を少し過ぎた。
そして僕は帳簿類を片していているとレインさんの後ろの棚に巻物が詰め込まれていたのが気になった。
「レインさん、後ろの巻物を片付けますか?」
「……巻物? あぁ、査定しないといけないから…。今までこの作業までたどり着いていなかったから説明していなかったね……。今の作業が終わっているなら手伝ってみる?」
「査定? 巻物のですか?」
どれも新しそうなので歴史的な価値では無いと思う。
「そう。全部、魔法部門が新しく開発した魔法が記された巻物。内容を確認して査定して、開発者に支払うの」
RPGでは「巻物」といえば開く事で覚えたり、即座に発動するシーンがあったのを思い出す。
「これをどうするのですか?」
「ここにあるのはサンプルだから中身を確認して実際に使ってみて決めるの」
「どこでですか?」
「地下の実験場だよ」
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