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第一部 罪人の涙
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町はどんどん変わっていく。
坂の下の商店街がいい例だ。贔屓にしていた店の多くは潰れてシャッターを下ろし、もしくは建物自体がなくなって、きれいな一戸建てに変わっている。古い町並みは貴重だ、ぜひ残しておくべきだと主張しながら、実際は管理をする費用も人手もやる気も足りなくて、たいてい試みもしないうちに壊される。
それは別に悪いことではない。様々な価値観が横行する中、ただそういうことがあったというだけのこと。
きっと、ここもかつては地主などの屋敷が立ち並んでいた場所だったのだろう。
「ていうか、でかっ!」
ノアはあんぐりと口を開けた。
「え? ここ、本当に魔追くんち? 冗談じゃないよね?」
「それは、私への当てつけか」
追夢は軋む門を開けながら、ノアを軽く睨みつける。慌てて中に逃げ込んで、結果、ノアはますます口が塞がらなくなった。
「なに、この玄関までの距離……。日本って、数千万の大金でちっぽけな土地しか手に入らない国じゃなかったのか?」
車が数台は余裕で入りそうな広い前庭。平屋なのに小ささを感じさせない堂々とした造り。
「うちはまだ狭い方だけど。高城硝子の家はもっとでかいって聞いたことあるし」
「こんなに広々としてるのに!?」
「老木の一本二本しかないから」
特に庭石や花壇が置いてあるわけでもない。こんな寂れた古家の何が面白いのかと追夢はやや呆れて首を傾げる。
妙に静かだなと思って振り向くと、テラもルナも門扉の脇にぽかんと突っ立っていた。
「……入りなよ」
繰り返すが、神居宮家は広いといってもそこまで大きくはない。
目を覚ますと、なんだかやけに肩が重かった。ゆっくりと身を起こすと、それはあっけなく落ちる。ただの毛布だった。
毛布を拾いながら状況を確認する。時間は四時。もうすぐ追夢が帰ってくるころだ。リビングのローテーブルの上には、さっきまで母親が読んでいた文庫本が残されている。どうやら、いつもの病院と買い物に出かけたらしい。ということは、もう三時間も居眠りをしてしまったのか。目の前にはちっとも進んでいない、それどころか涎の跡がくっきりと残っているノートがあった。
ぼんやりとそれを眺める。と、一杯のコーヒーを差し出された。
「どうぞ」
「わっ、ありがとう」
慌てて礼を言うと、彼女はにこりと微笑んだ。くすんだ色合いの着物に島田髷という、まるで江戸時代からタイムスリップしてきたかのような、時代錯誤も甚だしい女性だ。顔立ちも錦絵のような瓜実顔にすっと通った柳眉と一重の瞼で、単体としては全く違和感のないどころか、これぞ大和撫子といった風情である。ただ、やはり現代の家庭でコーヒーを淹れるとなると、なんとも受け入れがたいものがあった。
「それ、明日提出なんでしょう。本当はもっと休んでほしいですけど、今年は受験もありますから、そういう訳にもいかないだろうと思いまして」
だからコーヒーか、と魔追は納得する。おそらく、毛布を掛けてくれたのも彼女だ。恰好さえ除けば、我が家で一番素晴らしい女性かもしれないのに、とひそかに思う。
そして、料理も。
「……うま。なに、このコーヒー。すっきりしてるっていうか、でも深くて……。これ、いつもと違うやつ?」
「いいえ。台所に常備してあるものです。お口に合ったのなら良かった」
いつもの出涸らしみたいなのがこんなにも化けてしまうものなのかと、しげしげと見つめていると、あっ、と何故か声を上げて気まずそうに視線を逸らされた。
「ん? どうかした?」
「いえ、その……」
視線をうろうろとさまよわせ、どうやら逡巡しているようだったが、大和撫子とは嘘をつかない生き物である。
「その、そういえば、追夢ちゃんがいつも淹れてるのは出涸らしだったようなと思って……」
「……」
どうりで缶コーヒーを美味しく感じるはずだ。
だいたい、彼女のコーヒーがいくら美味しくても、普通にやればたかが一杯でこんなに差がつくはずがないのだ。一体、自分の何が追夢の癇に障ったんだろうとかなり真剣に悩んだ。
まあ、一つだけ明確に思い当たることがなくもないのだが。
「あれ? あのコップは?」
「あら、いけない」
急いでお盆を出し、彼女はそれにコップを載せてリビングから出ていった。もともとはあいつに持っていくつもりだったのだろう。苦いだの文句を言いながら飲んでいるところを想像して、魔追はちょっと笑った。
勉強に戻る前にスマホを開く。習慣や癖みたいな何気ない行動だったが、魔追はすぐに後悔した。
≪新着メール:23件≫
「多っ!」
タップして開く。見ると、広告などに混ざって、ノアからのメールが二桁に上っていた。この前、無理やりLAINの登録をしてきたくせに、なんでわざわざメールで、と考えてから、LAINにも通知が来ていることに気付く。ずっと既読が付かなくて、もしかして心配させてしまっただろうかと慌てて開いた。
『お』
『ー』
『い』
『、』
『ま』
『お』
『い』
『く』
『ー』
『ん』
『、』
『い』
『き』
『て』
『る』
『ー』
『?』
「なんで一文字ずつ!?」
ノアのにやにや顔が目に浮かぶようだった。一斉削除してやろうかと考えつつも心配してくれていることに変わりはないのか? と悶々としていると、玄関の方から声がした。どうやら追夢が帰ってきたらしい。魔追はスマホを持ったまま立つと、おかえりー、と言いながら玄関に向かった。
「ただいま」
「ただいまー、魔追くんー!」
「お邪魔します」
「たっ、ただいまーっ!」
増えている。
絶句する魔追にまず近付いてきたのは、やはりというかノアだった。
「うっわー、パジャマだ! しかも、水色と青の、パジャマって言ったらこれ! みたいな」
じろじろと上から下まで眺めまわし、そして、プッと。
「魔追くん、似合わなすぎ! 狙ってる?」
「……いや、これっぽっちも。ていうか、なんでいるの?」
「お見舞い?」
「なんで疑問形なんだよ」
「あっ、それ俺のメールじゃん。なんで無視したんだよ」
「今気付いたんだよっ。なにこれ? 新手のいじめ?」
「大変だったんだ、それ。授業始まっちゃうしさ」
「いや、始まってもやってるだろ! 送信時間ばっちり授業中だよな!?」
「それは、フトダっちが来るの遅いから」
「ああ……」
短足、のろまのフトダ。必ずチャイムの後に現れる英語教師。
ではなく。
「本当に何の用?」
「お見舞いだって。まあ、急だったからなんにもないんだけどさ」
あとはほら、と後ろを示す。
「ルナとテラも」
「こんにちは、魔追おにーさん」
「あ、ルナちゃん、こんにちは」
にっこりと笑顔を向けられて、思わず心がほっこりする。なんとなくその笑顔がぎこちないような気がして少し気になったが、それはあっという間に吹き飛んでしまった。
まず目を奪ったのは、白い、白い、医療用眼帯だった。
「……岩倉テラです。はじめまして」
「は、はじめまして……」
ノアやルナのようなプラスのオーラではなく、しかしマイナスでもない、どこか神秘的な存在感を放つテラにたじろぐ。透き通った碧眼はどこまでも静かで、魔追の心まで映してしまいそうだ。白い肌、斜めカットの黒い髪、白い眼帯、黒いタイツ、白と黒のコントラストに突如目が覚めるようなワインレッドのカーディガン。目眩がする。
中二病?
「これは……」
白い指先が眼帯を這う。
「ものもらいです」
「えっ?」
「よく、罹るんです」
「ものもらい……そ、そっか。大変だね」
「はい。よく誤解されるので」
「そ、……そっか」
背中の冷や汗が止まらなかった。確実にばれている。
テラの後ろでぷるぷる震えながら笑いを噛み殺す追夢を睨む。もとはといえば、追夢のせいだ。面白いとかおかしいとか変とか会えば度肝を引きずり出されるとか、曖昧なことばかり言うから、変に気構えてしまったのだ。
なにが心を映すだ。白と黒のコントラストだ。覚めるようなワインレッドだ……。
「ううっ、うっ……」
「魔追くん?」
自分の想像力の逞しさに涙が出た。
とりあえず、肝は引きずり出されなさそうでよかったと思う。
「なんで泣いてんの? おーい」
「どうせ、羞恥心だろ。くくく……」
追夢の笑い声を聞くのは久し振りな気がした。
なんて邪悪な笑みなんだ。
幸い、救世主は結構早く来た。
「あら? お客さんですか?」
「れ、れい子さあああああんっ」
お盆を持って戻ってきた彼女は、涙目の魔追に目を丸くしたものの、すぐに袂からハンカチを出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
やっぱり一番優しいのはれい子かもしれない。年齢さえもっと近ければと少し残念だった。
ハンカチをしまうと、れい子はノア達に挨拶をした。ノアとルナ、それにテラも突然の本格的な和装の女性に驚いて声も出ないようだった。
「さ、どうぞゆっくりしていってください。今、お茶を淹れますね」
「あ、あのっ!」
こういう時、一番勇敢なのは小さい子だ。背伸びまでして手を上げるルナをテラが窘めたが、れい子は微笑んで少しだけ身をかがめて目線を合わせてあげた。
「はい」
「おねーさんは、どうしてそんな格好をしてるの?」
「まあ、こんなおばさんにお姉さんなんて嬉しいわ。ありがとう」
「いえいえ~」
「じゃあ、特別に教えてあげましょうね」
小さく手招きをして、他に聞こえないように手で覆いながらこしょこしょ話す。徐々にルナの大きな瞳がさらに大きくなり、そして、ほあ、と感嘆の声を上げた。
「すごいね! おねーさん、かっこいー!」
「みんなには内緒よ」
「うん! おねーさんがめーじ生まれだってことは、誰にも言わないよ!」
「…………」
思っていたよりも、どうやら相手は大人だったらしい。
れい子はこほんと一つ咳払いをし、何事もなかったかのように皆をリビングへと案内する。そして、手早くお茶と菓子を用意すると逃げるようにいなくなった。
「おもしろい人だったね!」
笑顔でコップを持つルナ。れい子の内心が分かっている魔追と追夢はいたたまれず、苦笑いするしかなかった。
こうして、救世主は伏兵によりあっさりと敗北した。
熱いお茶を啜りながら遠い目をしていると、いきなりノアに脇を小突かれ、危うく顔面に湯呑みの中身をぶちまけるところだった。
「な、なに?」
ノアは眉間に皺を寄せ、すごむようにぐっと顔を近づけてくる。
「なぜ」
「う、うん」
「なぜ、畳がない!? あると思ったのに!」
「あー、そこの客間にあるよ。うち、結構傷んでてさ。何年か前に改修して、その時に板にしたんだ。畳も大変なんだよ。すぐぼろぼろになっちゃうし」
実は以前にも似たような質問をされたことがあったので、魔追はなんだそんなことかとすらすら答えた。ノアは虚を突かれたようで、すごすごと自分の席に戻った。
「なんだ……」
「そういうこと」
「おもしろいリアクションが返ってくると思ったのに」
「そっちかよ」
半ば呆れつつ、それでも魔追は口元が緩むのを抑えられなかった。
くだらないやりとりだ。ノアが来てからそろそろ一週間になるが、――そう、まだたったの一週間なのだ。それなのに、ここまで打ち解けてしまうなんて想像もしていなかった。見ると、和菓子をつつく女子三人もすっかりなじんでいる。距離などもともとなかったというより、存在すらしていないかのようだ。魔追はこの状況をおかしいと感じたり否定したりしているのではない。戸惑いはあるが、心地いいと感じている。だからこそ、そう――。
湯呑みを置く。
「ところで、ルナちゃん、あれから元気にしていた?」
話しかけた瞬間、さっと追夢が振り返り、少しだけ気まずそうに視線を逸らした。やっぱり、と魔追は思った。追夢は、たぶん、迷っていたのだろう。どのタイミングで切りだそうかと。だから、この状況にあえて乗っかり、あえて流されてみて、言い出せる時を待っていた。だが、この問題はデリケートなのだ。長引けばそれだけ胸のうちに靄がたまり、やがてどうしようもないほどに膨らむ。魔追は、そういう時こそ自分の出番だと思っている。
追夢が口をつぐんでいたのは数秒もなかった。すぐに顔を上げ、口ごもるルナとの間に入る。
「ルナちゃんが夢を見たんだって」
全員の視線を受けて、ルナの顔がまたぎこちなく固まっていくのを魔追は見た。
「魔追に聴いてほしいんじゃないかと思って」
「そっか。どんな夢だったの?」
視界を遮るようにぐっと身を乗り出すと、ルナはほっとしたようににこりとした。追夢がついていたとはいえ、内心窮屈だったに違いない。理解してくれると確かに信じられる相手はたったの一人だけなのだから。満開の向日葵が少しずつ戻ってきて、魔追も胸を撫で下ろした。
しかし、次の言葉はそこから百八十度ぐるりと回転したものだった。
「華くんがね、倒れちゃったの」
「倒れた? 華くんが? ……華くん?」
「この前、ルナと一緒に食堂に来てただろ」
「ああ……」
女の子みたいな、いや、女の子よりも線が細い、悪く言えば貧弱そうな男の子だ。
――この子、“常連”かな。
あの時の心の声がよみがえった。
「四時間目だったの。華くん、なんかぼーっとしてて、つっついたら倒れちゃったの……」
テラが肩を抱くと、ルナは素直にしがみついた。びっくりしただろう。語尾が僅かに震えていた。
「それで、先生が行ってもいいよって言ったから、一緒に保健室に行ったの。でも、保健室あったかくて、ルナもねちゃって」
そうしたら、出会った。
咲坂のどこか、星の写真や月球儀や小型の天体望遠鏡のある教室で、星海華はぺたりと床に転がってカードゲームをしていた。
咲坂のではない、しかし咲坂の校章のついた制服を着た年上の少女と。
振り向いた華は首を傾げ、それからルナを手招きした。
「ルナちゃんもじじぬきしようよ。華月ちゃん、すっごく強いんだよ」
「華月ちゃん?」
「うん」
セーラー服の彼女のショートカットは華のようにふわふわと柔らかそうだった。そして、二人はお揃いのピンを制服に留めていた。微妙に色違いの星の飾りのついた、安っぽくて古いデザインのピンだった。
「華月ちゃんはぼくのおばあちゃんなんだ」
そこで目が覚めた。
急いで華を見ると、華はまだ眠っていた。だが、その表情は倒れた時よりずっと穏やかで、ちょっぴり寂しそうだった。
「あれ、だれだったのかな?」
ルナはどこか納得のいかない表情で魔追を真っ直ぐに見つめてくる。自分がありえない夢を見たという認識はあれど、“侵入”をしたとはさすがにはっきりと認識できていないらしい。なら、話は簡単だと魔追は自然と肩から力を抜いていた。
「“夢の中の”華くんは、おばあちゃんって言ってたんだよね」
「でも……」
気持ちは分かる。今現在ではなく過去の、しかも出会ったことのない誰かが夢に現れるものなのかと。
その問題は、実は説明だけならあっさりとつく。
少し席を外して納戸の奥からやっと目当てのものを掘り出してくると、軽くはたいてテーブルの上に載せた。大きくて浅い桐の箱だ。蓋を開け、黒い布をめくると、出てきたのは三人の少女の写真だった。
「白黒だー!」
興奮したように身を乗り出してから、ルナが気付く。
「あ!! これだよ! 華月ちゃんが着てたの、これだよ!」
「あれ? これって……」
ノアが首を傾げると、魔追が答える前にテラが口を開いた。
「咲坂の初期の制服、ですか。パンフレットで見ました」
「そう。これはオレらのおばあちゃんの写真なんだけどね。この頃は近くの商店街に写真屋さんがあったんだけど、そこで撮ってもらうのが流行りだったらしい。だから、うちにもあるんだ」
三人のうち、一番髪の長い少女を指さす。
「これがそう」
「あんまり似てないね」
「でも、目の色は同じなんだ」
「むむむ……?」
三兄弟が揃って覗き込み唸る姿に、思わず魔追は噴き出した。
「いや、まあ、白黒だから分からないけどさ。だからね、ルナちゃん」
顔を上げたルナの頭にぽんっと手を置いた。見た目通り、さらさらとした金髪だった。
「ルナちゃんが前に一度でも華くんのおばあちゃんの話を聞いていたとしたら、ありえないことじゃないんだよ。夢っていうのは不思議なもんでさ。もし、聞いていなかったとしても、そんな事例は世界中にごまんとある。予知夢っていうのがあるくらいだからね」
「予知夢って、まさかアカシックレコードとか言わないよな。一応、明確なメカニズムはまだ解明されてないだろ」
ノアの言うことももっともだ。思ったよりも詳しそうなことに驚きながらも、だが魔追は笑って、
「だからこそだよ。例えば、華くんが一人で戦っているんじゃない、強力な味方が付いてる、て思えば……」
夢だっていいもんでしょ?
そう、しれっと“ごまかした”のだった。
「これ、戻してくるよ」
そう言って箱を持ち部屋を出ると、すぐに追夢からLAINが入った。
『お見事』
『追夢は相変わらず、こういうことは苦手なんだな』
『うるさい』
かわいげのない反応にくすりとする。
だが、実際上手くいってよかったと魔追は胸を撫で下ろした。こういうことはなるべく知らない方がいいものなのだ。夢のように、不思議で得体のしれない存在など。
今回のことで確信した。ルナには耐性がある。
他人の夢に干渉できる者を、アリスに耐性のある者と呼ぶことがある。ただ、全ての耐性のある者が干渉できるとは限らない。干渉できる者のほとんどは魔追や追夢のような者たちだ。大体はアリスの拡大が人より遅いとか、そんな弱い耐性の者ばかりだ。だから、ルナは珍しい。そんごもだ。それが良い事につながるとは言えない。
耐性有りだって感染する。
もし、ルナがまた誰かの夢に入ったら、そこでアリスに感染して倒れてしまう可能性だってあるのだ。アリスはどんなに些細な事でもつけこむ。広げる。増えようとする。邪魔者に対しては防衛反応なのか、それは顕著だ。
そういったことを防ぐために、魔追達はいる。
「……ま、封じるのが一番か」
まだまだ引っかかることはあれど、とりあえず再びスマホに文字を打ち込もうとした時だった。
視線を感じて振り向くと、小さな影が納戸の狭い入り口からこちらを見ていた。おかっぱ髪の背の低い、小さな影。
「マオマオ、ヤオツィが呼んでる」
「え? 午前に話したばっかりだけど……」
「だからそれ」
いくらスマホの画面が明るいとはいえ、暗くて細長い納戸の奥にいる魔追の手元を指さし、影は魔追の言葉を無視して言った。
「まだ送らないでね」
坂の下の商店街がいい例だ。贔屓にしていた店の多くは潰れてシャッターを下ろし、もしくは建物自体がなくなって、きれいな一戸建てに変わっている。古い町並みは貴重だ、ぜひ残しておくべきだと主張しながら、実際は管理をする費用も人手もやる気も足りなくて、たいてい試みもしないうちに壊される。
それは別に悪いことではない。様々な価値観が横行する中、ただそういうことがあったというだけのこと。
きっと、ここもかつては地主などの屋敷が立ち並んでいた場所だったのだろう。
「ていうか、でかっ!」
ノアはあんぐりと口を開けた。
「え? ここ、本当に魔追くんち? 冗談じゃないよね?」
「それは、私への当てつけか」
追夢は軋む門を開けながら、ノアを軽く睨みつける。慌てて中に逃げ込んで、結果、ノアはますます口が塞がらなくなった。
「なに、この玄関までの距離……。日本って、数千万の大金でちっぽけな土地しか手に入らない国じゃなかったのか?」
車が数台は余裕で入りそうな広い前庭。平屋なのに小ささを感じさせない堂々とした造り。
「うちはまだ狭い方だけど。高城硝子の家はもっとでかいって聞いたことあるし」
「こんなに広々としてるのに!?」
「老木の一本二本しかないから」
特に庭石や花壇が置いてあるわけでもない。こんな寂れた古家の何が面白いのかと追夢はやや呆れて首を傾げる。
妙に静かだなと思って振り向くと、テラもルナも門扉の脇にぽかんと突っ立っていた。
「……入りなよ」
繰り返すが、神居宮家は広いといってもそこまで大きくはない。
目を覚ますと、なんだかやけに肩が重かった。ゆっくりと身を起こすと、それはあっけなく落ちる。ただの毛布だった。
毛布を拾いながら状況を確認する。時間は四時。もうすぐ追夢が帰ってくるころだ。リビングのローテーブルの上には、さっきまで母親が読んでいた文庫本が残されている。どうやら、いつもの病院と買い物に出かけたらしい。ということは、もう三時間も居眠りをしてしまったのか。目の前にはちっとも進んでいない、それどころか涎の跡がくっきりと残っているノートがあった。
ぼんやりとそれを眺める。と、一杯のコーヒーを差し出された。
「どうぞ」
「わっ、ありがとう」
慌てて礼を言うと、彼女はにこりと微笑んだ。くすんだ色合いの着物に島田髷という、まるで江戸時代からタイムスリップしてきたかのような、時代錯誤も甚だしい女性だ。顔立ちも錦絵のような瓜実顔にすっと通った柳眉と一重の瞼で、単体としては全く違和感のないどころか、これぞ大和撫子といった風情である。ただ、やはり現代の家庭でコーヒーを淹れるとなると、なんとも受け入れがたいものがあった。
「それ、明日提出なんでしょう。本当はもっと休んでほしいですけど、今年は受験もありますから、そういう訳にもいかないだろうと思いまして」
だからコーヒーか、と魔追は納得する。おそらく、毛布を掛けてくれたのも彼女だ。恰好さえ除けば、我が家で一番素晴らしい女性かもしれないのに、とひそかに思う。
そして、料理も。
「……うま。なに、このコーヒー。すっきりしてるっていうか、でも深くて……。これ、いつもと違うやつ?」
「いいえ。台所に常備してあるものです。お口に合ったのなら良かった」
いつもの出涸らしみたいなのがこんなにも化けてしまうものなのかと、しげしげと見つめていると、あっ、と何故か声を上げて気まずそうに視線を逸らされた。
「ん? どうかした?」
「いえ、その……」
視線をうろうろとさまよわせ、どうやら逡巡しているようだったが、大和撫子とは嘘をつかない生き物である。
「その、そういえば、追夢ちゃんがいつも淹れてるのは出涸らしだったようなと思って……」
「……」
どうりで缶コーヒーを美味しく感じるはずだ。
だいたい、彼女のコーヒーがいくら美味しくても、普通にやればたかが一杯でこんなに差がつくはずがないのだ。一体、自分の何が追夢の癇に障ったんだろうとかなり真剣に悩んだ。
まあ、一つだけ明確に思い当たることがなくもないのだが。
「あれ? あのコップは?」
「あら、いけない」
急いでお盆を出し、彼女はそれにコップを載せてリビングから出ていった。もともとはあいつに持っていくつもりだったのだろう。苦いだの文句を言いながら飲んでいるところを想像して、魔追はちょっと笑った。
勉強に戻る前にスマホを開く。習慣や癖みたいな何気ない行動だったが、魔追はすぐに後悔した。
≪新着メール:23件≫
「多っ!」
タップして開く。見ると、広告などに混ざって、ノアからのメールが二桁に上っていた。この前、無理やりLAINの登録をしてきたくせに、なんでわざわざメールで、と考えてから、LAINにも通知が来ていることに気付く。ずっと既読が付かなくて、もしかして心配させてしまっただろうかと慌てて開いた。
『お』
『ー』
『い』
『、』
『ま』
『お』
『い』
『く』
『ー』
『ん』
『、』
『い』
『き』
『て』
『る』
『ー』
『?』
「なんで一文字ずつ!?」
ノアのにやにや顔が目に浮かぶようだった。一斉削除してやろうかと考えつつも心配してくれていることに変わりはないのか? と悶々としていると、玄関の方から声がした。どうやら追夢が帰ってきたらしい。魔追はスマホを持ったまま立つと、おかえりー、と言いながら玄関に向かった。
「ただいま」
「ただいまー、魔追くんー!」
「お邪魔します」
「たっ、ただいまーっ!」
増えている。
絶句する魔追にまず近付いてきたのは、やはりというかノアだった。
「うっわー、パジャマだ! しかも、水色と青の、パジャマって言ったらこれ! みたいな」
じろじろと上から下まで眺めまわし、そして、プッと。
「魔追くん、似合わなすぎ! 狙ってる?」
「……いや、これっぽっちも。ていうか、なんでいるの?」
「お見舞い?」
「なんで疑問形なんだよ」
「あっ、それ俺のメールじゃん。なんで無視したんだよ」
「今気付いたんだよっ。なにこれ? 新手のいじめ?」
「大変だったんだ、それ。授業始まっちゃうしさ」
「いや、始まってもやってるだろ! 送信時間ばっちり授業中だよな!?」
「それは、フトダっちが来るの遅いから」
「ああ……」
短足、のろまのフトダ。必ずチャイムの後に現れる英語教師。
ではなく。
「本当に何の用?」
「お見舞いだって。まあ、急だったからなんにもないんだけどさ」
あとはほら、と後ろを示す。
「ルナとテラも」
「こんにちは、魔追おにーさん」
「あ、ルナちゃん、こんにちは」
にっこりと笑顔を向けられて、思わず心がほっこりする。なんとなくその笑顔がぎこちないような気がして少し気になったが、それはあっという間に吹き飛んでしまった。
まず目を奪ったのは、白い、白い、医療用眼帯だった。
「……岩倉テラです。はじめまして」
「は、はじめまして……」
ノアやルナのようなプラスのオーラではなく、しかしマイナスでもない、どこか神秘的な存在感を放つテラにたじろぐ。透き通った碧眼はどこまでも静かで、魔追の心まで映してしまいそうだ。白い肌、斜めカットの黒い髪、白い眼帯、黒いタイツ、白と黒のコントラストに突如目が覚めるようなワインレッドのカーディガン。目眩がする。
中二病?
「これは……」
白い指先が眼帯を這う。
「ものもらいです」
「えっ?」
「よく、罹るんです」
「ものもらい……そ、そっか。大変だね」
「はい。よく誤解されるので」
「そ、……そっか」
背中の冷や汗が止まらなかった。確実にばれている。
テラの後ろでぷるぷる震えながら笑いを噛み殺す追夢を睨む。もとはといえば、追夢のせいだ。面白いとかおかしいとか変とか会えば度肝を引きずり出されるとか、曖昧なことばかり言うから、変に気構えてしまったのだ。
なにが心を映すだ。白と黒のコントラストだ。覚めるようなワインレッドだ……。
「ううっ、うっ……」
「魔追くん?」
自分の想像力の逞しさに涙が出た。
とりあえず、肝は引きずり出されなさそうでよかったと思う。
「なんで泣いてんの? おーい」
「どうせ、羞恥心だろ。くくく……」
追夢の笑い声を聞くのは久し振りな気がした。
なんて邪悪な笑みなんだ。
幸い、救世主は結構早く来た。
「あら? お客さんですか?」
「れ、れい子さあああああんっ」
お盆を持って戻ってきた彼女は、涙目の魔追に目を丸くしたものの、すぐに袂からハンカチを出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
やっぱり一番優しいのはれい子かもしれない。年齢さえもっと近ければと少し残念だった。
ハンカチをしまうと、れい子はノア達に挨拶をした。ノアとルナ、それにテラも突然の本格的な和装の女性に驚いて声も出ないようだった。
「さ、どうぞゆっくりしていってください。今、お茶を淹れますね」
「あ、あのっ!」
こういう時、一番勇敢なのは小さい子だ。背伸びまでして手を上げるルナをテラが窘めたが、れい子は微笑んで少しだけ身をかがめて目線を合わせてあげた。
「はい」
「おねーさんは、どうしてそんな格好をしてるの?」
「まあ、こんなおばさんにお姉さんなんて嬉しいわ。ありがとう」
「いえいえ~」
「じゃあ、特別に教えてあげましょうね」
小さく手招きをして、他に聞こえないように手で覆いながらこしょこしょ話す。徐々にルナの大きな瞳がさらに大きくなり、そして、ほあ、と感嘆の声を上げた。
「すごいね! おねーさん、かっこいー!」
「みんなには内緒よ」
「うん! おねーさんがめーじ生まれだってことは、誰にも言わないよ!」
「…………」
思っていたよりも、どうやら相手は大人だったらしい。
れい子はこほんと一つ咳払いをし、何事もなかったかのように皆をリビングへと案内する。そして、手早くお茶と菓子を用意すると逃げるようにいなくなった。
「おもしろい人だったね!」
笑顔でコップを持つルナ。れい子の内心が分かっている魔追と追夢はいたたまれず、苦笑いするしかなかった。
こうして、救世主は伏兵によりあっさりと敗北した。
熱いお茶を啜りながら遠い目をしていると、いきなりノアに脇を小突かれ、危うく顔面に湯呑みの中身をぶちまけるところだった。
「な、なに?」
ノアは眉間に皺を寄せ、すごむようにぐっと顔を近づけてくる。
「なぜ」
「う、うん」
「なぜ、畳がない!? あると思ったのに!」
「あー、そこの客間にあるよ。うち、結構傷んでてさ。何年か前に改修して、その時に板にしたんだ。畳も大変なんだよ。すぐぼろぼろになっちゃうし」
実は以前にも似たような質問をされたことがあったので、魔追はなんだそんなことかとすらすら答えた。ノアは虚を突かれたようで、すごすごと自分の席に戻った。
「なんだ……」
「そういうこと」
「おもしろいリアクションが返ってくると思ったのに」
「そっちかよ」
半ば呆れつつ、それでも魔追は口元が緩むのを抑えられなかった。
くだらないやりとりだ。ノアが来てからそろそろ一週間になるが、――そう、まだたったの一週間なのだ。それなのに、ここまで打ち解けてしまうなんて想像もしていなかった。見ると、和菓子をつつく女子三人もすっかりなじんでいる。距離などもともとなかったというより、存在すらしていないかのようだ。魔追はこの状況をおかしいと感じたり否定したりしているのではない。戸惑いはあるが、心地いいと感じている。だからこそ、そう――。
湯呑みを置く。
「ところで、ルナちゃん、あれから元気にしていた?」
話しかけた瞬間、さっと追夢が振り返り、少しだけ気まずそうに視線を逸らした。やっぱり、と魔追は思った。追夢は、たぶん、迷っていたのだろう。どのタイミングで切りだそうかと。だから、この状況にあえて乗っかり、あえて流されてみて、言い出せる時を待っていた。だが、この問題はデリケートなのだ。長引けばそれだけ胸のうちに靄がたまり、やがてどうしようもないほどに膨らむ。魔追は、そういう時こそ自分の出番だと思っている。
追夢が口をつぐんでいたのは数秒もなかった。すぐに顔を上げ、口ごもるルナとの間に入る。
「ルナちゃんが夢を見たんだって」
全員の視線を受けて、ルナの顔がまたぎこちなく固まっていくのを魔追は見た。
「魔追に聴いてほしいんじゃないかと思って」
「そっか。どんな夢だったの?」
視界を遮るようにぐっと身を乗り出すと、ルナはほっとしたようににこりとした。追夢がついていたとはいえ、内心窮屈だったに違いない。理解してくれると確かに信じられる相手はたったの一人だけなのだから。満開の向日葵が少しずつ戻ってきて、魔追も胸を撫で下ろした。
しかし、次の言葉はそこから百八十度ぐるりと回転したものだった。
「華くんがね、倒れちゃったの」
「倒れた? 華くんが? ……華くん?」
「この前、ルナと一緒に食堂に来てただろ」
「ああ……」
女の子みたいな、いや、女の子よりも線が細い、悪く言えば貧弱そうな男の子だ。
――この子、“常連”かな。
あの時の心の声がよみがえった。
「四時間目だったの。華くん、なんかぼーっとしてて、つっついたら倒れちゃったの……」
テラが肩を抱くと、ルナは素直にしがみついた。びっくりしただろう。語尾が僅かに震えていた。
「それで、先生が行ってもいいよって言ったから、一緒に保健室に行ったの。でも、保健室あったかくて、ルナもねちゃって」
そうしたら、出会った。
咲坂のどこか、星の写真や月球儀や小型の天体望遠鏡のある教室で、星海華はぺたりと床に転がってカードゲームをしていた。
咲坂のではない、しかし咲坂の校章のついた制服を着た年上の少女と。
振り向いた華は首を傾げ、それからルナを手招きした。
「ルナちゃんもじじぬきしようよ。華月ちゃん、すっごく強いんだよ」
「華月ちゃん?」
「うん」
セーラー服の彼女のショートカットは華のようにふわふわと柔らかそうだった。そして、二人はお揃いのピンを制服に留めていた。微妙に色違いの星の飾りのついた、安っぽくて古いデザインのピンだった。
「華月ちゃんはぼくのおばあちゃんなんだ」
そこで目が覚めた。
急いで華を見ると、華はまだ眠っていた。だが、その表情は倒れた時よりずっと穏やかで、ちょっぴり寂しそうだった。
「あれ、だれだったのかな?」
ルナはどこか納得のいかない表情で魔追を真っ直ぐに見つめてくる。自分がありえない夢を見たという認識はあれど、“侵入”をしたとはさすがにはっきりと認識できていないらしい。なら、話は簡単だと魔追は自然と肩から力を抜いていた。
「“夢の中の”華くんは、おばあちゃんって言ってたんだよね」
「でも……」
気持ちは分かる。今現在ではなく過去の、しかも出会ったことのない誰かが夢に現れるものなのかと。
その問題は、実は説明だけならあっさりとつく。
少し席を外して納戸の奥からやっと目当てのものを掘り出してくると、軽くはたいてテーブルの上に載せた。大きくて浅い桐の箱だ。蓋を開け、黒い布をめくると、出てきたのは三人の少女の写真だった。
「白黒だー!」
興奮したように身を乗り出してから、ルナが気付く。
「あ!! これだよ! 華月ちゃんが着てたの、これだよ!」
「あれ? これって……」
ノアが首を傾げると、魔追が答える前にテラが口を開いた。
「咲坂の初期の制服、ですか。パンフレットで見ました」
「そう。これはオレらのおばあちゃんの写真なんだけどね。この頃は近くの商店街に写真屋さんがあったんだけど、そこで撮ってもらうのが流行りだったらしい。だから、うちにもあるんだ」
三人のうち、一番髪の長い少女を指さす。
「これがそう」
「あんまり似てないね」
「でも、目の色は同じなんだ」
「むむむ……?」
三兄弟が揃って覗き込み唸る姿に、思わず魔追は噴き出した。
「いや、まあ、白黒だから分からないけどさ。だからね、ルナちゃん」
顔を上げたルナの頭にぽんっと手を置いた。見た目通り、さらさらとした金髪だった。
「ルナちゃんが前に一度でも華くんのおばあちゃんの話を聞いていたとしたら、ありえないことじゃないんだよ。夢っていうのは不思議なもんでさ。もし、聞いていなかったとしても、そんな事例は世界中にごまんとある。予知夢っていうのがあるくらいだからね」
「予知夢って、まさかアカシックレコードとか言わないよな。一応、明確なメカニズムはまだ解明されてないだろ」
ノアの言うことももっともだ。思ったよりも詳しそうなことに驚きながらも、だが魔追は笑って、
「だからこそだよ。例えば、華くんが一人で戦っているんじゃない、強力な味方が付いてる、て思えば……」
夢だっていいもんでしょ?
そう、しれっと“ごまかした”のだった。
「これ、戻してくるよ」
そう言って箱を持ち部屋を出ると、すぐに追夢からLAINが入った。
『お見事』
『追夢は相変わらず、こういうことは苦手なんだな』
『うるさい』
かわいげのない反応にくすりとする。
だが、実際上手くいってよかったと魔追は胸を撫で下ろした。こういうことはなるべく知らない方がいいものなのだ。夢のように、不思議で得体のしれない存在など。
今回のことで確信した。ルナには耐性がある。
他人の夢に干渉できる者を、アリスに耐性のある者と呼ぶことがある。ただ、全ての耐性のある者が干渉できるとは限らない。干渉できる者のほとんどは魔追や追夢のような者たちだ。大体はアリスの拡大が人より遅いとか、そんな弱い耐性の者ばかりだ。だから、ルナは珍しい。そんごもだ。それが良い事につながるとは言えない。
耐性有りだって感染する。
もし、ルナがまた誰かの夢に入ったら、そこでアリスに感染して倒れてしまう可能性だってあるのだ。アリスはどんなに些細な事でもつけこむ。広げる。増えようとする。邪魔者に対しては防衛反応なのか、それは顕著だ。
そういったことを防ぐために、魔追達はいる。
「……ま、封じるのが一番か」
まだまだ引っかかることはあれど、とりあえず再びスマホに文字を打ち込もうとした時だった。
視線を感じて振り向くと、小さな影が納戸の狭い入り口からこちらを見ていた。おかっぱ髪の背の低い、小さな影。
「マオマオ、ヤオツィが呼んでる」
「え? 午前に話したばっかりだけど……」
「だからそれ」
いくらスマホの画面が明るいとはいえ、暗くて細長い納戸の奥にいる魔追の手元を指さし、影は魔追の言葉を無視して言った。
「まだ送らないでね」
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