雲生みモックじいさん

第５話『なまいきな雲』

「おい、そこの雲よ。おまえ、早く行かないか」

    モックじいさんが声をかけると、雲はするするとそばにおりてきて言いました。

「行くってどこに行けばいいのさ」

    そう聞かれたモックじいさんは、答えにこまりました。なぜなら、彼の仕事は雲を生み出すことで、雲の行き先までは知らないのです。

「おまえたちはいつも自然とどこかへ向かうじゃないか」
「そんなこと言ったって、知らないもんは知らないんだ」

    ずいぶんとなまいきな雲のようです。

「むう。まいったな」

    なにしろモックじいさんは、こんな失敗をしでかすのははじめてだったので、どうすれば良いのか途方に暮れました。

「そうだ、あいつに聞けばなにかわかるかもしれん」

    モックじいさんはそう言って、家の向かいのペンキ屋の、そのまた隣りの家へと走っていきました。