41 / 108
第二章 婚約破棄編
ヴァイス・ダット・アーテル
しおりを挟む
「ふざけるな!何故、そんなことをしたっ!」
シャイニーとエルシャがアーテル聖国を去った数日後。遠征から帰還した第二王子のヴァイス・ダット・アーテルが激怒していた。
アーテル聖国は、アルバ王国を拠点としていた〈白き翼〉が、新天地を目指してたどり着いた別大陸にある。〈白き翼〉のパーティメンバーであったヒーラーのヒスクが聖典を作り、リーダーで剣士のダットと魔法使いが建国したのが始まりだった。
現在、アーテル聖国は第一王子ディスペアー派と第二王子ヴァイス派に別れており、ヴァイスが少し優勢気味であった。
シャイニーの白銀の髪には劣るが、やや暗めの輝くグレー色の髪に端正な顔立ち。程よくついた筋肉は国の女性を虜にしている。そんな彼が今は、激怒しているのだ。
「あ、あの女は、恐るべき悪女。ここにいるクリミナルがよく知っている」
ヴァイスに気圧されながら胸を張る、ディスペアー。
そんな、ディスペアーに更に怒りを感じ、その張った胸ぐらを掴んで彼は言った。
「ディスペアー!お前はシャイニー嬢がクリミナル嬢に何かしたところを見たのか?彼女が何か言ったところを聞いたのか?クリミナル嬢が知っていると言ったな、彼女の何を知っていると言うのだ?!答えろっ!」
「ク、クリミナルッ!ほ、ほら、俺に話したように!」
狼狽えるディスペアーを横目に、クリミナル・ヒスクは自慢げに語った。しかしその内容は、ヴァイス派の持つ情報とは違い、むしろその時間その場所にいることがありえない内容さえあった。
それに気づくことのないディスペアー派は、クリミナル嬢が語る内容にうんうんと頷いていた。
「ヒスク家次女のクリミナル嬢。今、あなたが聞かせてくれた内容に、嘘偽りはないと断言出来ますか?」
「えぇ、もちろんです」
何故このような確認をするのかと、クリミナル嬢含むディスペアー派は疑問視していた。
だが、次にヴァイスが放った言葉は彼らに、衝撃を与えた。
「王族に対する、虚偽の申告によりヒスク家次女のクリミナル嬢を罪人とする。衛兵!罪人を捕らえろ!」
「なっ、何をするの!離しなさい!」
床に押さえつけられながらも、相手が王族だということを忘れてクリミナルはヴァイスをキッと睨む。
「あなたは言った。一週間前、学園の裏庭にシャイニー嬢に呼び出されて、平手打ちされたと」
「それが何ですの!事実ですわ!」
「ハァ……。一週間前のその日、彼女は結界の張り直しの為に、王城にいた。そのことは父上も母上も確認している」
「え、あ、それは……」
「にも関わらず、シャイニー嬢に呼び出された上、平手打ちだと?そんなこと起こる訳がないだろう!」
顔を青くし汗をダラダラと流し、床ばかり見るクリミナルの姿に、ディスペアーもさすがに事態に気づいた。
彼女は自分を騙しただけでなく、父上や母上をも騙そうとしたのだと。そして、彼女の口車に乗せられた自分の愚かさにも嫌気がさした。
ヴァイス・ダット・アーテルは、今回のことをどのように両親に伝えるかそして、国外追放を言い渡されたシャイニー嬢や解除された退魔結界について必死に悩んだのだった。
シャイニーとエルシャがアーテル聖国を去った数日後。遠征から帰還した第二王子のヴァイス・ダット・アーテルが激怒していた。
アーテル聖国は、アルバ王国を拠点としていた〈白き翼〉が、新天地を目指してたどり着いた別大陸にある。〈白き翼〉のパーティメンバーであったヒーラーのヒスクが聖典を作り、リーダーで剣士のダットと魔法使いが建国したのが始まりだった。
現在、アーテル聖国は第一王子ディスペアー派と第二王子ヴァイス派に別れており、ヴァイスが少し優勢気味であった。
シャイニーの白銀の髪には劣るが、やや暗めの輝くグレー色の髪に端正な顔立ち。程よくついた筋肉は国の女性を虜にしている。そんな彼が今は、激怒しているのだ。
「あ、あの女は、恐るべき悪女。ここにいるクリミナルがよく知っている」
ヴァイスに気圧されながら胸を張る、ディスペアー。
そんな、ディスペアーに更に怒りを感じ、その張った胸ぐらを掴んで彼は言った。
「ディスペアー!お前はシャイニー嬢がクリミナル嬢に何かしたところを見たのか?彼女が何か言ったところを聞いたのか?クリミナル嬢が知っていると言ったな、彼女の何を知っていると言うのだ?!答えろっ!」
「ク、クリミナルッ!ほ、ほら、俺に話したように!」
狼狽えるディスペアーを横目に、クリミナル・ヒスクは自慢げに語った。しかしその内容は、ヴァイス派の持つ情報とは違い、むしろその時間その場所にいることがありえない内容さえあった。
それに気づくことのないディスペアー派は、クリミナル嬢が語る内容にうんうんと頷いていた。
「ヒスク家次女のクリミナル嬢。今、あなたが聞かせてくれた内容に、嘘偽りはないと断言出来ますか?」
「えぇ、もちろんです」
何故このような確認をするのかと、クリミナル嬢含むディスペアー派は疑問視していた。
だが、次にヴァイスが放った言葉は彼らに、衝撃を与えた。
「王族に対する、虚偽の申告によりヒスク家次女のクリミナル嬢を罪人とする。衛兵!罪人を捕らえろ!」
「なっ、何をするの!離しなさい!」
床に押さえつけられながらも、相手が王族だということを忘れてクリミナルはヴァイスをキッと睨む。
「あなたは言った。一週間前、学園の裏庭にシャイニー嬢に呼び出されて、平手打ちされたと」
「それが何ですの!事実ですわ!」
「ハァ……。一週間前のその日、彼女は結界の張り直しの為に、王城にいた。そのことは父上も母上も確認している」
「え、あ、それは……」
「にも関わらず、シャイニー嬢に呼び出された上、平手打ちだと?そんなこと起こる訳がないだろう!」
顔を青くし汗をダラダラと流し、床ばかり見るクリミナルの姿に、ディスペアーもさすがに事態に気づいた。
彼女は自分を騙しただけでなく、父上や母上をも騙そうとしたのだと。そして、彼女の口車に乗せられた自分の愚かさにも嫌気がさした。
ヴァイス・ダット・アーテルは、今回のことをどのように両親に伝えるかそして、国外追放を言い渡されたシャイニー嬢や解除された退魔結界について必死に悩んだのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
212
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる