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第三章 転生編
閑話(〈竜の牙〉視点)
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「クソッ……!」
朝早く、冒険者ギルドの依頼掲示板から剥がして受けた、デーモンスネーク討伐の再戦。Aランクパーティー〈竜の牙〉はデーモンスネークの巣である洞窟にやって来ていた。
「コイツ急に強くなりやがったのか?!何で……当たらねぇ!」
「私達の動きに対応してる。さっきまでと全然違う!」
「盾で防ぎきれない」
「私の魔法が当たらないです!あり得ないです……」
彼らはデーモンスネークと戦いながら叫んでいた。
彼らの動きを捉え、四人対一匹であってもデーモンスネークには余裕が見える。
「あっ!」
デーモンスネークは隙を逃さず、魔法詠唱を試みたショメルの杖を自身の鋭く長い尾で弾く。そしてそのまま、地を転がる杖に尾を叩きつけた。
「いやああぁぁああ!!」
修復がギリギリ可能な真っ二つどころか修復不可能な三つに折られ、ショメルは発狂した。
「リーダー、攻撃役が一人減った。悔しいが……」
「チッ……退却だ!退くぞ!」
杖を抱えて座り込むショメル。彼女の防御に徹しているガーダルが、意見を飛ばした。リーダーであるネグロは、苦渋の決断を下すと洞窟を出る為、指示を出した。
余裕そうに口から赤い舌をチロチロさせるデーモンスネークに、背を向けて彼らは全速力でその場を離れた。
「Aランクの〈竜の牙〉が、二度も撤退なんざするとは……」
その表情は怒りに満ちていた。
「こんなハズじゃなかった」
リーダーのネグロは、長い尾をフリフリさせて見送るデーモンスネークを見て、呟いた。
二度目の敗走に彼は疑問を持った。俺達〈竜の牙〉はAランクパーティーだ。王から認定されるSランクとは違って、実質最高峰のAランクなのに、何故!
彼は心の中で繰り返していた。「何故勝てない」と。
『攻撃こそ至高』
その信念に従ってあらゆる魔物を、俺の剣と二人の魔法使いで蹂躙していく。
その火力を止められる魔物は存在せず、苦戦や敗走などあり得なかった。
それなのにーー。
またしても魔物を背に走っている。一度目は無防備なタイヨウのせいで、二度目は杖を破壊されたショメル。回避に遅れたことと、詠唱という無防備な状態。
俺が引きつけておけば良かったのか?タンクのガーダルが盾で防げば良かったのか?考えても答えは見つからなかった。
洞窟の先に光が見える。出口だ。行きもそうだが帰りも長く感じた。さっきまでと違う。まるで一気に衰えたかのような。
ゾクッ
違う。あいつは何て言ってた。
『俺の身体強化スキルがなければ、今までのようには、絶対に上手くいかない』
もし、あいつの言う通りだとしたら?
もし、あいつの身体強化が他人に効果を及ぼしていたら?
彼らは洞窟を出ても速度を落とさず、ヒンセク国を目指した。
「タイヨウを連れ戻す!」
ショメル、ガーダル、ミストクの耳にはそう聞こえた。
朝早く、冒険者ギルドの依頼掲示板から剥がして受けた、デーモンスネーク討伐の再戦。Aランクパーティー〈竜の牙〉はデーモンスネークの巣である洞窟にやって来ていた。
「コイツ急に強くなりやがったのか?!何で……当たらねぇ!」
「私達の動きに対応してる。さっきまでと全然違う!」
「盾で防ぎきれない」
「私の魔法が当たらないです!あり得ないです……」
彼らはデーモンスネークと戦いながら叫んでいた。
彼らの動きを捉え、四人対一匹であってもデーモンスネークには余裕が見える。
「あっ!」
デーモンスネークは隙を逃さず、魔法詠唱を試みたショメルの杖を自身の鋭く長い尾で弾く。そしてそのまま、地を転がる杖に尾を叩きつけた。
「いやああぁぁああ!!」
修復がギリギリ可能な真っ二つどころか修復不可能な三つに折られ、ショメルは発狂した。
「リーダー、攻撃役が一人減った。悔しいが……」
「チッ……退却だ!退くぞ!」
杖を抱えて座り込むショメル。彼女の防御に徹しているガーダルが、意見を飛ばした。リーダーであるネグロは、苦渋の決断を下すと洞窟を出る為、指示を出した。
余裕そうに口から赤い舌をチロチロさせるデーモンスネークに、背を向けて彼らは全速力でその場を離れた。
「Aランクの〈竜の牙〉が、二度も撤退なんざするとは……」
その表情は怒りに満ちていた。
「こんなハズじゃなかった」
リーダーのネグロは、長い尾をフリフリさせて見送るデーモンスネークを見て、呟いた。
二度目の敗走に彼は疑問を持った。俺達〈竜の牙〉はAランクパーティーだ。王から認定されるSランクとは違って、実質最高峰のAランクなのに、何故!
彼は心の中で繰り返していた。「何故勝てない」と。
『攻撃こそ至高』
その信念に従ってあらゆる魔物を、俺の剣と二人の魔法使いで蹂躙していく。
その火力を止められる魔物は存在せず、苦戦や敗走などあり得なかった。
それなのにーー。
またしても魔物を背に走っている。一度目は無防備なタイヨウのせいで、二度目は杖を破壊されたショメル。回避に遅れたことと、詠唱という無防備な状態。
俺が引きつけておけば良かったのか?タンクのガーダルが盾で防げば良かったのか?考えても答えは見つからなかった。
洞窟の先に光が見える。出口だ。行きもそうだが帰りも長く感じた。さっきまでと違う。まるで一気に衰えたかのような。
ゾクッ
違う。あいつは何て言ってた。
『俺の身体強化スキルがなければ、今までのようには、絶対に上手くいかない』
もし、あいつの言う通りだとしたら?
もし、あいつの身体強化が他人に効果を及ぼしていたら?
彼らは洞窟を出ても速度を落とさず、ヒンセク国を目指した。
「タイヨウを連れ戻す!」
ショメル、ガーダル、ミストクの耳にはそう聞こえた。
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