神様のお楽しみ!

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第四章 水の楽園編

精霊?

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 私は、アマネ・グランツ。グランツ金家の次女。
 アルバ王国の魔法の名家グランツ家に生まれた私は、老いることがないアクロ様の子孫で、グランツ家に生まれた者は皆アクロ様に教えを乞うて育つ。
 アルバ魔法学園に通いながら、アクロ様の教えの通りに魔法を使う。そんな日々を暮らしていたら、いつの間にか高等部冒険科Sクラスになっていた。

 ミレお姉様が当主の道へ進む為、私は冒険科へ入ることを決めた。それが私にとって運命の出会いになるとは、進級当初思っていなかった。



 ……眠たい。
 ハーディ様は女性のエルフ族で、建国当時は教頭を務めていた偉い人。今年で、五百五十年目になるお爺さんだけど魔法の腕は健在。

 ハッ!危ない危ない。また、眠ってしまうとこだった。
 周囲の状況を…と思ったけど私、最前列だった!
 服装は支給されてて、男子は黒の学園服で、女子は白の学園服。下着以外全て学園からの支給品!

 そうこうしてる内に入学式と進級式が終了し、各クラスへと別れることに。
 ぼーっとしてたせいで、冒険科Sクラスの場所がわからなくなってしまった。とりあえず中等部の時に行ったことのない場所をと目指したが、歩いても歩いても似たような景色を眺め続けて、三十分は経過しただろうか。
 こんなことなら、アクロ様から探知魔法を教わっていればと、後悔した。

 喉が渇き水魔法で【ウォータ】と唱えて、手の平に拳大の水球を出し、喉を潤していると視界の端にキラキラとする物が二つ……。

 「何んだろう……」

 中心が丸く光っていて、二枚の羽がパタパタしていて……

 「羽!?」

 慌てて身体を後退させる。が、それらはスイーっと手の平の水球に集まる。一つの光は水球の中にトプンと入り、もう一つの光は水球の周りを、クルクルと飛ぶ。
 はたから見れば、自身の手を遠くへやり身を引く少女の図だが、本人はそれどころではない。
 窓の外では風に揺れる木々の葉が、ザワザワと音を立てる。少女しかいない廊下は、シンと静まり物音一つない。

 その時、なんの前触れもなく水球がカッ!と光を放つ。攻撃ではないただの眩しい光に、アマネはもう片方の手で顔を隠した。

 「ッ!」

 やがて光が弱くなっていき完全に消えた時に水球を見ると、そこには得体の知れない”人”が浮いていた。
 意識がハッキリし始めたのか、羽の生えたその”人”はまぶたをあけた。

 「起きた……」

 目の前の”人”と視線が合う。

 [誰…ですか…?]

 「ひぃっ!」

 思わず漏れた悲鳴の後に、私は生まれて初めて長く考えごとをしたと思う。
 喋った!?今、この”人”喋ったよね!?えっ、さっきまであんなに小さかったのに、何で!?指の先くらいの大きさから手の平サイズに、変わったんですけどー!!

 [大丈夫……?]

 あ、この子優しい。根拠なくそう思った。

 「あ、あの、私、人間」

 違う違うー!人間だけど、そうじゃなくて名前言わなきゃ!
 口を開こうとした時、羽の生えた”人”が先に言った。

 [私、精霊……]

 「精霊……?」

 [悪い人に見つかっちゃったらダメなの]

 「あ、うん。酷い目にいそう……」

 手の平の上でふわふわと浮く精霊?が答えてくれる。
 待てよ、もう一人いなかったっけ?精霊の元みたいなのが。

 「ねえ、羽の生えた光は見てない?あなたと一緒にいたんだけど」

 すると、グレーの服を着た精霊は私の頭の方を指差した。
 頭上に手をやると、何かが掴まったような気がして目の前で見ると同じくグレーの服を着た”人”がいた。

 「あなたも精霊?」

 [正解!オレも精霊だぜ]

 きっとこれは、夢ね。私は意識を手放した。
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