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第四章 水の楽園編
侵入者
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「ふぅ。まぁ、今回のことはきっと届くわね。ベルデ、私は今からカイトの所に行くわ」
「かしこまりました。夕食はどうされますか?」
「帰ってから食べるわ」
それだけ言ってアクロ様は、足早に部屋を出ていった。
届く?どういうことなの?誰に?ベルデに尋ねてみても、首を振られるだけで返事はなかった。
それから部屋で夕食を終えた私は、身を綺麗にして眠りについた。
結局アクロ様は、私が起きている時に帰って来ることはなかった。
翌日目が覚めて起き上がると、頭の痛みは昨日よりずいぶんマシになっていた。
本来ならば傷を負えば、回復魔法かポーションで癒すのだが、私の愚かな行いをすぐに治してしまってはまた同じことを繰り返すかもしれない、そう言われて納得したものだ。
今回のことを忘れないようにしよう。
今日は大事をとって学園を休むことにした。どうせなら万全の状態で授業を聞きたい。
アクロ様は早朝に帰宅してまたすぐ出ていってしまったらしく、お会い出来てない。
今日、何して過ごそうか、と廊下を歩きながら考えているとふと、窓の外に目がいった。
グランツ家の屋敷の門前に人がいる……
「えっ」
誰か知らないその人は、門を押し開けて侵入した!
私は慌ててベルデを探し出して、彼女と執事長と共に屋敷の出入り口へと向かった。
「止まりなさい!」
侵入者は男性で、見たところ私とあまり変わらない年齢のようだ。
だが侵入者に変わりはない。だから、警告をした。
「動くなら魔法を放ちます!」
口を開けば警告ではなく脅迫の言葉が出てしまい、手で口を塞ぐ。
侵入者はなにやら呟き、前に進もうとした!動かないように言ったのに!
「動きましたね【ウォータ・モノ・ショット】!」
頭一つ分はある大きさの水球を放った。
当たる!そう確信していた。が、私の放った水球は侵入者の前で、跡形もなく弾けて消えた。
何をしたのか理解出来なかった。絶対当てる。意地になった私は屋敷内にいることを忘れて、次々と魔法を撃ち続けた。
なのに、全て最初の水球と同じく消えてしまう。
この人は何?アクロ様でも避けるか防御を張るのに……。この人には勝てない。
そう思うと途端に、視界に映る侵入者の身体の周りが揺らめいた。
あれは…魔法?闇、光、火、水、土、風を表すかのように色づいている。
「…っひぃ!」
身体を包むように揺らめく”色”。目にしたことのない現象に、私の頭が警鐘を鳴らしている。
動きたい。離れたい。逃げたい。そんな思いが心を支配し、徐々に恐怖で染まっていく。
一歩また一歩と近づいて来る。
その人は私の目には死神として映り、黒い笑みが見える。
「アクロ様……」
その人が私の前で立ち止まった時、優しくて、強くて、尊敬出来るアクロ様のことを私は口にしていた。
バァァン
屋敷の出入り口が勢い良く開け放たれる。
そこには、アクロ様とカイト様が立っていた。
「かしこまりました。夕食はどうされますか?」
「帰ってから食べるわ」
それだけ言ってアクロ様は、足早に部屋を出ていった。
届く?どういうことなの?誰に?ベルデに尋ねてみても、首を振られるだけで返事はなかった。
それから部屋で夕食を終えた私は、身を綺麗にして眠りについた。
結局アクロ様は、私が起きている時に帰って来ることはなかった。
翌日目が覚めて起き上がると、頭の痛みは昨日よりずいぶんマシになっていた。
本来ならば傷を負えば、回復魔法かポーションで癒すのだが、私の愚かな行いをすぐに治してしまってはまた同じことを繰り返すかもしれない、そう言われて納得したものだ。
今回のことを忘れないようにしよう。
今日は大事をとって学園を休むことにした。どうせなら万全の状態で授業を聞きたい。
アクロ様は早朝に帰宅してまたすぐ出ていってしまったらしく、お会い出来てない。
今日、何して過ごそうか、と廊下を歩きながら考えているとふと、窓の外に目がいった。
グランツ家の屋敷の門前に人がいる……
「えっ」
誰か知らないその人は、門を押し開けて侵入した!
私は慌ててベルデを探し出して、彼女と執事長と共に屋敷の出入り口へと向かった。
「止まりなさい!」
侵入者は男性で、見たところ私とあまり変わらない年齢のようだ。
だが侵入者に変わりはない。だから、警告をした。
「動くなら魔法を放ちます!」
口を開けば警告ではなく脅迫の言葉が出てしまい、手で口を塞ぐ。
侵入者はなにやら呟き、前に進もうとした!動かないように言ったのに!
「動きましたね【ウォータ・モノ・ショット】!」
頭一つ分はある大きさの水球を放った。
当たる!そう確信していた。が、私の放った水球は侵入者の前で、跡形もなく弾けて消えた。
何をしたのか理解出来なかった。絶対当てる。意地になった私は屋敷内にいることを忘れて、次々と魔法を撃ち続けた。
なのに、全て最初の水球と同じく消えてしまう。
この人は何?アクロ様でも避けるか防御を張るのに……。この人には勝てない。
そう思うと途端に、視界に映る侵入者の身体の周りが揺らめいた。
あれは…魔法?闇、光、火、水、土、風を表すかのように色づいている。
「…っひぃ!」
身体を包むように揺らめく”色”。目にしたことのない現象に、私の頭が警鐘を鳴らしている。
動きたい。離れたい。逃げたい。そんな思いが心を支配し、徐々に恐怖で染まっていく。
一歩また一歩と近づいて来る。
その人は私の目には死神として映り、黒い笑みが見える。
「アクロ様……」
その人が私の前で立ち止まった時、優しくて、強くて、尊敬出来るアクロ様のことを私は口にしていた。
バァァン
屋敷の出入り口が勢い良く開け放たれる。
そこには、アクロ様とカイト様が立っていた。
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