神様のお楽しみ!

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第四章 水の楽園編

上位精霊

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 学園から逃げるようにして店に入った僕。
 店にはすでに先客の女性がカウンター席にいた。パチッと目が合うなり、その女性は跪く。

 「えっ」

 と声を上げたのはフェリスだ。

 「楽にして良い。フェリス、昨日の話はもうした?」

 「はいアース様。アース様の前にいる母に話しました」

 フェリスの表情から察するに、冗談で言ってる訳ではなさそうだが、母親には見えない。
 良くて姉だろうか。さすがエルフ族。
 フェリスがカウンターから移動して来て、母親の手を取り上階へと促す。

 「さ、応接室に行って話そう」

 

 部屋に入り着席するなり口を開き尋ねる。

 「ずいぶん早いな。夕方って言ったけどまだ、昼頃だよ?」

 「アース様とお会いするチャンスを逃したくなく、無理を承知で参りました。それと娘の精霊が、どの属性になるのか知りたく」

 「わたしは、動いてないと落ち着かなくて」

 苦笑もそこそこに、早速とばかりに確認をする。

 「下位精霊と上位精霊の違いは何かな?フェリス」

 「はい。魔法とは違い、精霊に力を借りて発動する精霊魔術は制御が難しく、常に最悪の状況を考える必要が、あること、です」

 「本当にわかってる?頭でわかった感じになってるだけで、見てないからわからないとかじゃないよね?」

 目を白黒させて口をつぐむフェリス。言わなくてもわかる、その態度が答えだ。

 「フェリス、小さい水球作って。そう、そのゴマくらいで良いよ。…でね、このゴマみたいに小さな水球に、精霊が力を借すとどれくらいの大きさになると思う?」

 「わかりません」

 「アクア、ちょっとで良いからね」

 僕の胸ポケットに定位置と決めて入っていた水の精霊が、フェリスの作った水球にチョンと触れた瞬間、

 「きゃっ!!」

 身長百六十センチ二人分の高さがある部屋にもかかわらず、天井付近まで水球が膨れ上がった。
 フェリスが三人は入れる大きさに、部屋の中でフェリスだけが驚き、その表情は固まっていた。

 「これが精霊に力を借りるってことだよ。フェリスは体内魔素が多いようだけど、魔素制御は下手だね。今みたいに制御が出来てないまま、精霊魔術を使えば辺り一面消し飛ぶのが目に見える。フェリスも今のでわかったんじゃないかな?」

 「わたしが考えるよりも、精霊に力を借りることが、危険という意味が良く理解出来ました。単に話せるからっていう軽い気持ちは捨てます」

 僕がフェリスの浮かべる巨大な水球を消すと、彼女は僕の方に向き直り頭を下げた。

 「この子達をお願いします」

 僕が精霊達に視線向けると、四人とも近寄って来る。

 「さぁ、次は君達の番だよ」



 僕は四人の精霊達の前に六属性を見せる。すると精霊達は迷いなくそれぞれの属性に触れ、眩い光に包まれていく。
 フェリスと母親も食い入るように見つめており、光が収まるとそこには選んだ属性と同じ色の衣服を着た、上位精霊達がパタパタと浮かんでいた。

 「火・水・土・風の四属性だ。フェリスを支え、時に正し、導いてやってくれ」

 『はい!』

 元気よく自信たっぷりに返事をする精霊達に、僕は嬉しさが込み上げた。
 
 「彼らの力を生かすも殺すも、フェリスの努力次第だ。まずは、魔素制御を完璧にしよう」


 ここからが彼女にとっての再スタートだ。
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