異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎

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第一章 幼少期

22.侍従

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 時間は少し遡る。五歳になってすぐに、私にも侍従がつくことになった。

 ある朝、お父様に呼ばれたので執務室に行くと、お父様とセバスと一緒に眼鏡男子が待っていた。

 「お父様、お呼びだと伺いましたが」
 「ああ。こちらにおいで。さて、話というのはね、アルフォンスも五歳になったから侍従をつけることにしたんだよ。セバス」
 「はい。こちらが、今日からアルフォンス様の専属侍従となりますレオンハルトです。先月六歳になりました、私とサラの三男でございます」
 「アルフォンス様。レオンハルト・ヴェンツと申します。精一杯務めさせていただきます」
 「「よろしくお願い申し上げます」」

 そう言って、セバスとレオンが同時に綺麗な礼をした。

 「はい。アルフォンスです。まだ若輩のため至らない点も多いと思いますが、主として恥ずかしくないように頑張りますので、こちらこそよろしくお願いしますね」

 五歳になると侍従がつくことは聞いていた。
 自分の専属侍従ということで、何も問題がなければ、老いて引退するまで一緒に過ごす。
 今の雇い主はお父様なので、実際には違うけれども、彼の将来が私にかかっているような気がして、気持ちが引き締まる思いだ。

 レオンが、一緒に来ていたルカにも挨拶をしているが、ルカとは面識があるみたい。
 ルカが召喚獣になってから、私自身はあまりレオンと接する機会がなかったが、ルカは違ったようだ。
 ルカは、私が勉強や武術で忙しい時間に、屋敷の探検をしたりして、使用人達にも可愛がられている。そういう時間に、レオンにも遊んでもらったことがあるのだろう。
 レオンとは、これから長い時間を一緒に過ごすから、ルカとも仲良くしてもらいたいと思う。
 ルカが尻尾をブンブン振っているところを見ると、仲良くやっていけるだろうと安心した。

 彼は、セバスとサラの息子だ。三男で一歳年上。
 あーっ。そうなんだよ。セバスティアンはサラと十歳差の夫婦だ。
 サラは領地にいるお爺様の執事の娘で、お父様の乳姉弟だ。
 サラが生まれた時、セバスは従者見習いだった。
 サラが生まれた当初から溺愛し、サラ以外に見向きもせず、三歳の頃から求愛していたそうだ。変t……さん?〈ゴホンゴホン〉
 そして、サラが成人する十六歳の誕生日に結婚したらしい。うーっわ!いろんな意味でセバス凄いなっ!!

 ところで、セバスとサラの子供は六人いる。

 長男は、エドゥアルド・ヴェンツ。十六歳・魔法学院卒業生・父の執事見習い。
 次男は、ミハエル・ヴェンツ。十三歳・魔法学院在学中・ルー兄様の侍従。
 長女は、アマーリエ・ヴェンツ。十二歳・魔法学院在学中・マティ兄様の侍女。
 次女は、フロレンツィア・ヴェンツ。十歳・リア姉様と一緒に魔法学院入学予定・姉様の侍女。
 三男は、レオンハルト・ヴェンツ。六歳・アルと一緒に魔法学院入学予定・アルの侍従。
 三女は、ルイーゼ・ヴェンツ。四歳・ティナと一緒に魔法学院入学予定・マルティナの侍女予定。

 もう、す・ご・い…としか言えないでしょ?セバスファミリー!全部身内で固めてるんだ。
 まあ、忠臣一家なので全く心配はしていないんだけどね。

 セバスもサラも魔法学院卒業生で、サラはルー兄様の乳母になるまでは、魔法士団の支援魔法士だったんだ。子供もみんな魔力量が多いのも頷けるね。
 レオンも私と一緒に魔法学院に入学することが決まっている。

 そうそう。十歳で魔法学院に入学するのは強制なんだけど、侍従や従者が主と一緒に入学するために入学を遅らせることは、特例で認められているんだ。
 ルー兄様の時にミハエルが十一歳だったから、不思議に思って教えてもらった。

 私には、専属侍女のエリアがいるが、彼女は十二歳年上だ。
 だから尚更、侍従は私と同じくらいの年齢じゃないといけないんだそうだ。魔法学院在学中のこともあるんだろう。
 ルー兄様も侍女は七歳年上だから、魔法学院にはミハエルだけがついていった。
 エリアは、私が魔法学院にいる間はどうすんだろう?考えたことがなかったな…。今度、お父様に聞いてみようか。

 ところで、レオンに初めて会ったのは、私が一歳になってすぐの頃だった。
 すっごいやんちゃで、会ってすぐに、私に『子分になれ』って言って、サラに笑顔で“お話”されてたな……。

 その後、魔法がばれて、私が一歳から勉強を始めたので、侍従になる彼も、二歳でもう勉強が始まったらしい。侍従になる勉強だから、私よりも習うことが多くて大変だったんじゃないかと思う。
 それでなのか、あんなにやんちゃだったレオンは、いつの間にか、無表情な眼鏡男子になっていた。
 侍従になった顔合わせで、久しぶりに会って驚いたもの。
 上手くやっていけるだろうか…?彼が鬼畜じゃないことを祈りたい…。

 レオンの武術と魔法の訓練は、五歳から始まったようだ。
 武術は、現時点で私とのレベルが違いすぎるから、一緒に訓練はできないけど、『頑張って追いつきます』って言っていた。うん。楽しみにしてるね♪

 でも、彼は立ち姿や歩いている姿勢がとっても綺麗で、六歳でそこに至る努力は見習わないといけないなって思う。
 筋肉も綺麗についているし、顔はサラ似の優しそうなイケメンだ。無表情だけど…。
 いや~。これで笑えばモテそうだよね。笑えばだけどね…。
 きっと、これからずーっと一緒にいる人だから、いい関係を築いていきたいよね。
 よ~し!仲よくなろう!!

 魔法学院を卒業したら冒険旅行に出たいんだけど、レオンも一緒に来てくれるかなぁ…?
 それなら、魔法も武術もコッソリ教えて、強くなってもらえばいいよね~♪うんうん。そうしよ!そうしよ!!

 こうして、レオンハルトの日常は、アルフォンスの専属侍従になったことで、驚きの連続と過酷な訓練が加わり、大きく変わっていくことになる。




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