異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎

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第二章 幼少期~領地編

42.冒険者ギルド

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 翌日の朝、支度を整えた私をリヒト先生が迎えに来た。
 漆黒のローブを羽織った、訓練に出かけるときのいつも通りの先生だ。服も装備も全身真っ黒。
 私も森に狩りに行くときの恰好をしている。

 これから冒険者ギルドに行くんだ。
 見送りにきたルカとレオンは、今回は留守番だから少し寂しそうだ。
 でも、今日はフォルツの冒険者ギルドに初めて行くから、冒険者見習いの登録通りに先生と二人で行くことにした。
 そうして見送られて、二人で市場の近くまで転移で飛んできた。

 人気のない小路に飛んでから、何気ない様子で市場の横を通り、広場脇に建つ冒険者ギルドに入る。
 王都のギルド本部には転移部屋に飛んだから、ギルドの正面から入るのはここが初めてだ。
 緊張でドキドキするが、好奇心で眼がキラキラしている自覚はある。

 (だって、冒険者ギルドだよ? ゲームやラノベでよく登場する現場に実際にいるんだよ? ワクワクするよねっ??)

 先生が横で呆れているのを感じるが、フードを深く被った奥から、キョロキョロと建物内を観察してみる。 

 開け放たれた入口から、右手に受付カウンターがあり、右手奥に買い取りのカウンター。左手前に依頼掲示板が並び、左手奥に食堂があった。そこには、朝から酔いつぶれて寝ている人がいるし、エールを片手にこちらをジロジロ眺めているグループもいる。

 ギルドの混雑する早朝をはずしたからか、受付カウンターは数人ずつが列をつくるだけだった。
 リヒト先生は真っ直ぐにカウンターに向かい、三人並んでいる受付の中で一番列が短い、眼鏡をかけた無愛想なおじさんの前に並んだ。


 二人は、ギルドに入った時から注目されていた。黒ずくめのイケメン冒険者と、黒いローブを羽織ってフードを深く被っている幼児の二人連れだ。注目されないわけがない。

 「なんで、ガキがいるんだぁーっ? ここは託児所じゃねーぞお? なよっちい兄ちゃんも、顔で依頼こなせるとか思ってるんじゃねーかぁ? ガキ連れてとっとと帰りやがれっ!!」

 前の人が終わりそうな時に、食堂にいたガラの悪そうなグループの一人が絡んできた。

 (うんっ! 定番だっ!! さて、どう出ようか?)

 って思ったんだが…、リヒト先生が邪魔そうに振り返った。その時、一瞬殺気が放たれた。

 (うわ~っ! ピンポイントで中てつつ、あえて全方位に殺気を放ったよね? 先生眼が恐いよ?)

 先生が怒るなんて非常にめずらしい。先生は、”なよっちい”に反応したんだろうか…。
 一瞬とは言え、高ランカーの殺気を中てられた先程絡んできた冒険者が、腰を抜かしている。股間にシミが広がってきたみたいだ。よく見ると白目をむいて気を失っている。すぐに、なんとか復活した同じグループのメンバーが、青い顔で引きずっていった。
 殺気を全方位に放ったため、中てられたわけではない周りの無関係な人達も顔色が悪くなっている。

 ちょうど私達の順番が来ていたので、私は先生のローブをツンツン引っ張って注意をひいた。

 「リヒト。順番だよ?」

 「うん」

 一言だけ返した先生は、もういつもの先生に戻っている。
 もしかしたら、今後のことを考えて、あえて怒ったふりをして全方位に殺気を放ったのかもしれない。
 先生がどこまで見通しているのかを考えると、深みにはまりそうでやめた…。

 先生は、受付のおじさんにギルドマスターに取り次ぐように言って、ギルドカードを見せた。
 おじさんは、息を呑み若干青い顔をして、
 
 「すぐにっ、すぐにマスターに確認してきますのでお待ちくださいっ!」

 そう言って、猛スピードで階段をかけ上がっていった。
 ギルマスの部屋は二階らしい。

 そして、本当にすぐに戻ってきて先導して案内している。程なく重厚な扉をノックして中に通された。
 そこで待っていたのは、短髪で長身の美人…。

 「あらっ? リヒトじゃないっ♪ ずいぶん久しぶりねぇ。相変わらずいい男ねぇ! 今日はどうしたのよ?」

 うん。美人だが…、硬く厚い筋肉に覆われた胸を持った、低音の美声…。
 ムキムキマッチョなお兄さんだった。

 「かわいい子を連れているじゃない? その子が後見してる見習いの子?」

 「なんだ? 知っているのか?」

 「あらっ? SSS-ランクのリヒトが美幼児の後見人になったって、王国内のギルドではもっぱらの噂よぉ?」

 (えーーーっっ? もう情報が王国内に回っているの? 個人情報駄々漏れじゃん!!!)

 「はや過ぎないか?」

 「えーっ? だって、リヒトが後見人を引き受けるなんてあり得ないしぃ、その子がとっても可愛いってのと、その子の能力が高いという噂で、みんな興味津々なのよぉ?」

 部屋に入った時にフードをとっていた。 
 現カネッティ侯爵夫人にソックリの見た目と、リヒト先生の近況を知るギルドマスターには、早々に私の正体はバレているらしい。それでも、口に出さずにいてくれるようだ。

 「ありがとうございます」

 自然に感謝の言葉が出ていた。
 それを聞いたマスタ―は、何に対しての感謝かを瞬時に悟り、年齢にそぐわない思考に驚いたようだが、

 「や~ん♪ 可愛い~ぃ♪」

 そんな言葉で流してくれた。
 リヒト先生とは、現役の頃に一緒に組んで依頼をこなしたことがあるらしく、『その時、リヒトにはふられちゃったのよね…』と呟いていた。
 因みに、リヒト先生は聞こえていたはずなんだが、スルーしていた。

 それから、今日は領都内を探索して、明日から領内に活動範囲を広げていく話をして、ギルドを出た。
 
 この後は、防具屋や鍛冶屋や魔道具屋も見たいし、馬車屋も見たいんだ。
 それとスラム。これだけ大きな街だと、いくら賢政をしいてもやはりスラムはあるらしい。


 防具屋では、中ランクくらいまでの冒険者が使う武器や防具が並んでおり、価格をこっそりチェックした。
 当たり前だが、高ランクになるにつれ自分に合ったものを特注するようになるそうだ。

 鍛冶屋では、作業見学をお願いしたら、ドワーフの頑固おやじに門前払いされた。

 魔道具屋ではおばちゃんにいろいろと教えてもらって、庶民生活に魔道具がどの程度活用されているのかを確認した。

 馬車屋では、馬車を選ぶフリをしていろんな馬車を見たが、基本的な構造はみんな同じだった。サスペンションとかは一切なく、車輪も基本は木の輪で、金属を使う場所が多くなれば価格も上がるようだ。
 どう改造しようか思案しながら馬車屋を出た。

 それから向かったのはスラム。フォルツの街の北側の外壁近くに、日銭で暮らす生活を余儀なくされた人々が暮らす場所がある。
 初めて足を踏み入れたスラムは、風雨を凌げればマシという感じの粗末な家が並ぶ。路上にたむろす人々の眼はうつろで、生きる気力が感じられなかった。
 その中を進み目指すのは、スラムの中に建つ教会だ。

 澱んだような空気の中を歩いていくと、そこだけ清浄な空気に包まれるように、とても古い小さな建物があった。

 


 



 
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