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第二章 幼少期~領地編
44.小さな命
しおりを挟む「アル。魔法をかけてくれるか?」
先生は、シスターがいるためハッキリ言葉にはしなかったが、<隠蔽>の魔法をかけてほしいと言った。そして、シュテファン先生のところに連れて行くという。
自分では他に良い選択肢を思いつかないから、先生の言う通りにしよう。
「はい。わかりました」
魔法を見られないために、シスターには部屋を出てもらうようにお願いすることも忘れてはいけない。
「シスター。ここに居合わせたのも何かの縁だろう。この子は俺が引き取ることにするがいいかい? それから、母親の埋葬の手配をこれで頼む」
そう言って、リヒト先生はシスターに少しのお金を渡して、部屋を出る用事を頼んだ。
「わかりました。きっと、このご縁は神の御引き合わせでしょう。埋葬の手配をした後は、この赤子に幸あれと祈りましょう」
シスターはそう言うと部屋を出て行った。
「アル君。今のうちに<隠蔽>の魔法をかけてくれるかい? この子が成長しても解けないようにね。それから、母親にもかけてくれるかい? 外見も人族に近づけてほしい」
「わかりました」
母親にもかけるのか? なんでだろう? でも、今は時間が無いしここでは詳しい話もできない。シュテファン先生のところに行った時に聞けるだろう。
まずは、赤ちゃんからだ。
先に、部屋に結界を張る。外からは、音はもちろんのこと、気配も探れないような強力なやつだ。
次に、ユーリさんやお婆様にかけたように、魔法にも、水晶にも、何物にも見破られないように、成長しても弱まらないようにと願いながら、ステータスから外見までハーフエルフと勘繰られないように、<隠蔽>魔法で”偽装”をしていった。
獣人族の幼体なので、エルフの特徴が成長に合わせてどう出てくるのかがわからないため、成長しても特徴が出ないように願って<隠蔽>をかけてみた。今後は、成長を見守っていくしかない。場合によっては、また<隠蔽>魔法をかけることも必要になるかもしれないね。
そして、母親にも<隠蔽>魔法をかけて、ステータスも外見もエルフとわからないように”偽装”を施し終わった。
「アル君。ありがとう。これで追手が母親の墓を暴く可能性が減ると思う」
そうか。エルフ族とハッキリわかる状態だと、いくら口止めしても、埋葬を手伝う男たちから秘密は漏れるだろう。そうなると追手に墓を暴かれる可能性が高いのか…。そういう理由だったのか。
「でも先生。ここで亡くなったという事実を確認できないと、いつまでも追手は無くならないんじゃないでしょうか?」
「うん。そうだね…。ただ、母親の墓を暴いて死者を冒涜しても、それで終わらないと思っているんだ。赤子の存在が知られているだろうから、この赤子を確実に葬り去るまで追ってくるだろうね。それならば、母親が少しでも安らかに眠れるようにしようと思ったんだ」
先生はそう言うと、もう一つ付け加えるように言ったその内容に驚いた。
「そうだ。シスターには、この親子がエルフ族だったという記憶を内緒で人族に書き換えさせてもらったから、話を合わせておいて」
(えっ? えっっ?? えーーーーっ???)
(先生。何サラッと言ってくれちゃってんの? いつ魔法かけたのかわからなかったよ? すっごいなーっ! でも、記憶の書き換えなんてどうやるんだろう…。 禁忌魔法っぽいけど…。 今度絶対教えてもらう!!!)
記憶の操作なので、先生も余程のことがなければ使わない魔法だと教えてもらった。少しでも目撃者が少ない方がこの赤ちゃんの生存率があがるため、今回は特別措置だそうだ。
もう一度、母子ともにちゃんと魔法がかかっていることを確認し、持ち物などにエルフ族の痕跡がないことを確認し終わったところに、シスターが戻ってきた。
「手配ができました。埋葬は今日の夕方行います。お二人は参列なさいますか?」
シスターが聞いてきたが、
「いや。やめておこう。赤子も別れをすませただろうし、先を急ぐのでこれから出発しようと思う」
先生は断わった。
それから、母親の埋葬をきちんと行うように再度お願いして、教会を後にした。
母子の持ち物はほとんどなかったが、母親の首にロケットが下がっていたので、それと髪の毛の一房を形見として持ってきた。はめていた指輪は、獣人族の父親と対の指輪だと思われたので、<隠蔽>魔法で追手に対だとばれないように”偽装”して、身に着けたまま埋葬してもらった。もちろん盗まれないように魔法をかけるのも忘れずにやった。神の御許で再会した時に指輪をはめていないとケンカになるとマズイしね。
赤ちゃんは、移動の間に泣いて見つかるといけないので、睡眠魔法をかけて先生が抱えてマントの中に隠している。
教会を出てからは、スラムを足早に抜ける。
すぐにも転移で飛びたいが、魔法の痕跡をたどられないように広場の近くまで移動してから、シュテファン先生のところに長距離転移で飛んだ。
リヒト先生は、まず最初に、一回の転移で王都まで半日の距離にある草原に飛んだ。そこから更に、魔法士団のリヒト先生の研究室に飛んで、それからシュテファン先生の研究室に到着した。今回、念には念を入れて、痕跡をたどられないようにしたようだ。本当は一回でシュテファン先生の研究室まで飛べるのを迂回したし、魔力の痕跡を消して飛んでいたもの。
改めて思うが、馬車で五日の距離を一回の転移で飛べる人が、いったい何人いるというのだろう?
先生は『今回は二人半だからな』って言って平気な顔をしている。
いつになったら追いつけるんだろうか…。
先生の大きな背中がとても遠く感じる…。
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