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第二章 幼少期~領地編
45.シュテファン先生のところで
しおりを挟むカネッティ領の領都フォルツのスラムにある教会で、エルフ族の粛清から逃げてきた母子に遭遇した。
母親はすでに亡くなっていたが、赤子はシスターが魔法で傷を治し、母親の傍らで眠っていた。狼獣人族とエルフ族のハーフのため、今後も命を狙われるのは確実なので、<隠蔽>魔法で”偽装”して、シュテファン先生のところに連れてきたんだ。
あの時、赤子に<隠蔽>魔法をかけるために、フルオープンで<鑑定>をかけた。
ステータスの名前の欄が空欄だったから、本当に名前をつける間もなく追手に襲撃されたのだろう。
私の<鑑定>魔法では、両親の名前もわかるので、成長して本人が知りたがったら教えることにしよう。
名前は、先生達と相談して決めよう。どんな名前が良いだろうか?
不幸な生い立ちだし、これからも追手を気にして生きていかなければならないが、少しでも生きていて良かったと思えるようになってほしいと思う。
赤子の性別は男の子だった。
そして、獣人族なんだけれど、魔法の才能があるようで…困った。
三属性持ちで、赤子なのに魔力量も多いんだ。これは<隠蔽>させてもらった。
成長に合わせてシュテファン先生に教えてもらうだろうが、魔法適性に関しては、魔力検査もあるので、いつまで秘密にするのかは先生達の判断次第になるだろう。
赤子は、狼獣人族の幼体なので、本当に生まれたての犬の赤ちゃんみたいなんだ。
シルバーの毛が少し湿った感じに体に貼りついている。
すごく細くて柔らかい毛だから、シャンプーしてブラッシングすれば、フワッフワになると思うんだ。
もうちょっと育ったら、絶対に、絶対にモフらせてもらいたい。
今度ルカを連れて会いに来ようかな?
お兄ちゃんぶりそうだが、良く面倒をみそうな気がする。
因みに、あの場にいた多くの精霊達らしき光は、母親のエルフが亡くなってからしばらくすると、悲しみの音も小さくなって、光の数も少しずつ減らしていき、私が<隠蔽>魔法をかけた頃には、数個の光がフヨフヨ浮かんでいるだけになっていた。好いていたエルフの死を受け入れたのか、一つ、また一つと光が消えていったんだ。
その数個の光は、なぜかここまでついてきた。エルフ族の使役かと怪しんだりもしたが、どうも赤子を心配してついてきたような感じで、今も赤子の周りをフヨフヨと浮かんで回っている。
赤子に好意でついてくれるのはいいんだが、それをエルフに感づかれてはマズいんだ。
常に索敵をして、すぐに気配を隠せるようにすればいいだろうか? 精霊達に練習させないとかな…?
この子達にも、よーく言い聞かせなければいけないなぁ…。
こちらに着いた時、シュテファン先生がちょうど研究室にいらっしゃって良かった。
赤子の事情を話すと、先生の屋敷で引き取って育てていただけることになった。
最初は、自分の下働きとして育てて、その後に護衛騎士になるか、侍従になるかを選ばせるとのことだ。
シュテファン先生の傍ならば、万一<隠蔽>魔法が弱まっても心配いらないだろう。応急処置は先生がしてくださるだろうし、私のところにすぐに連絡が来るはずだ。
追手の心配は残るが、狼獣人とエルフの遺伝子が気になることは確かだ。どういう風に成長するのだろうか? 成長が楽しみでもある。
ところで、今回、シュテファン先生のバックグラウンドがわかったんだ。まあ、今まで全く気にしなかった私が変なのかもしれないけれどね。これが驚きの情報だった。王領の湖畔に別荘を持っている時点で、かなり高位の貴族だとは思っていたんだけれど、予想の上だった。
シュテファン先生は、前ブランシュ公爵の弟君なんだそうだ。ビックリだよ。王様の母君が前ブランシュ公爵の末の妹だから、王様の伯父様ってことだ。
でも、シュテファン先生の屋敷の使用人は平民も低位貴族もいるらしい。自分のものも他人のものも、バックグラウンドを全く気にしないんだろう。使用人には様々な出自の人達がいるようだ。
採用基準は、彼が気に入るかどうかの一点のみ。全く…自由過ぎでしょ!
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