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第二章 幼少期~領地編
46.温泉
しおりを挟むシュテファン先生のところに、狼獣人とエルフのハーフの赤子の保護をお願いしてから、リヒト先生とフォルツの近くまで転移してきた。街から一キロほど離れたところにある小高い丘の上だ。
空が夕焼けに染まる中、遠くで教会の鐘が鳴っている。エルフの母親の鎮魂の鐘の音だろうか。
思わず、街の方角に向かい手を合わせて、エルフの母親と狼獣人族の父親の鎮魂と来世の幸せを祈る。
(あなたたちの赤ちゃんは、ケガも全快して、シュテファン先生のところにいますよ。しっかりとした後見人ですから、安心して眠ってくださいね。そして、あなたたちの来世がうんと幸せでありますように祈っています)
私が転生したんだから、二人にも来世はきっとあるよね?
今世が不幸な結果に終わったから、来世では幸せにと祈ってしまう。
今回の母子の件は、追手は気になるが、とりあえずは終わったとみて良いだろう。
ただ、エルフの今後の動向は警戒しておく必要があると思っている。
視察の報告と一緒に、お爺様にその話もしなければならない。
やがて、鐘の音が聞こえなくなり、丘を越える風の音だけになった。
今から、フォルツ近郊の温泉を探ってみようと思う。
地中の探査は初めてなので、集中すると地上の危険に対して反応が遅れてしまう可能性があるため、リヒト先生がまわりを警戒してくれることになった。
リヒト先生が<探索>魔法を発動したようだ。
地上を、先生の魔力が薄く広がっていくのを感じる。
私は、その中心で魔力を練りながら、探査のために魔力をどう伸ばそうか考える。
(<探索>魔法の応用だよね? 魔獣の探索と同じように、地中に魔力を薄く広く伸ばしていけば良いかな? まずは、地表近くの帯水層を把握するでしょ? 温泉の掘削に障害になるのと、飲料水が濁ることを避けたいからね。そのためには、魔力を浅く広範囲に伸ばして…っと。
・
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うん。把握した。フォルツの街は帯水層にほとんど乗っかってる感じ。屋敷がある場所あたりが、帯水層を外れているから大丈夫…かな。
ただ、下水整備は急ごう。この様子だと、そう遠くない未来に井戸水に汚水が混じっちゃうわ。マズいよ)
次に、帯水層の探査のために浅く広く伸ばしていた魔力を収束し、地中深くに伸ばしていく。
少し探った感じだと、フォルツの市街地の地下には、巨大な水瓶である、浅い位置の帯水層があるだけのようだ。
ちょっとずつずらして、地中深くに魔力を伸ばしていく。私の頭の中に、フォルツ近郊の地下地層図が出来上がっていく。
しかし、探査魔力を地下深くに伸ばしても、一向に温度の高い保水の地層が見つからない。
今いる場所から半径五キロの範囲を、深さ一千Mまで探査していたが、水温の高い帯水層が全く見つからないことに、私は少し焦りだした。
(ヤバいなーぁ。フォルツ近郊にはないんだろうか…? もう少し深く探ってみるかなぁ…?)
そこで、魔力をうんと伸ばして、今いるところから半径二十キロ、深さを一千五百Mまで探査範囲を広げて、もう一度調べ直すことにした。
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(あった……。)
やがて、辺りが宵闇に包まれそうな頃、私の探査魔力が水温の高い帯水層を捉えた。
小高い丘から二十キロほど離れたところに広大な草原がある。その草原の地下深く、地下一千三百Mに巨大な帯水層を感知した。水温も高そうだ。
「先生、ありました。やっと見つけました。ここから南東に二十キロ行ったところにある草原の地下に温泉がありそうです。もう少し探ってみますね」
「アル君、やったな。まわりの警戒は任せておきなさい。でも、無理しないように。魔力がきついなら明日にすればいいからね」
「はい。大丈夫です。今からもう少し探査しますので、警戒お願いします」
「うん。わかった」
まずは、温泉を調べよう。
最初に、見つけた帯水層のまわりの状況を調べることにする。
さらに深く探っていく。六千Mくらいまで探ったが、マグマが近いとかの危険はないようだ。
単純に、地下深くになるにつれて温度が上がるとも考えられるから、この帯水層の水温がある程度高温なのも納得できることだ。
火山や断層の心配要素がなさそうだからよしとしよう。
次に調べるのは、草原の地形や環境である。
そこに温泉を掘ってゆっくり風呂に入る。前世は日本人だ。風呂には毎日入っているが、やっぱり温泉は違うんだよ。念願の温泉なんだ。ゆっくり入りたい。
この風呂に入っている時の無防備な状況と、なにより至福の時間を、魔獣やらに邪魔されたくないじゃないか。
そのためには、しっかり、じっくり調べよう。
「先生、少し飛んでもいいですか?」
「うん。いいよ」
「では、行きます」
一瞬で、草原の端まで転移で飛んだ。
この草原は広い。半径二十キロほどの平坦な地形で、そのまわりを深い森が囲んでいる。
北の森から小さな川が三本南の森に流れている。地形の探査で、北の森が少し小高くなっていて、森の中に湧水の泉があり、そこから流れ出していることがわかった。平坦な部分をすべて草原と雑木林がおおっている。
フォルツの街からそう遠くない場所にあるにもかかわらず、手付かずの状態で広大な草原と森が存在する。
それには、草原のまわりを囲む深い森に理由があったんだ。
*************
※ 温泉その他については、まったくの素人のためつっこみはご容赦くださいませ。
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