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第一章
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しおりを挟むいよいよ、僕らは明日三歳になる。
記憶の洪水にさらされるのは、誕生日当日とは限らない。
いつ、どのようなタイミングでなるのか…。
これが、全く予測がつかないんだなぁ…。はあ~…。
憂鬱だぁ………………。
僕としては、別に過去の記憶なんて思い出さなくてもいいじゃないかって思っている。
だけど、たぶん今生に限っては、過去の記憶の洪水以上に何かが起こる気がするんだ。
だって、生まれた時から自我があり記憶も少しはある状態なんて、きっと初めてなんじゃないかな?
いつもは何も知らない状態で、予告なく溢れ出る記憶に溺れそうになりながら苦しんでいたのだろう。
それが、今生は記憶の甦りに関しては気構えができるなんて、都合が良過ぎて逆に心配なんだ。
心配しすぎなのかなあ…。
クリスタのことも心配だしなぁ…。だって、同じタイミングかどうかもわからないじゃないか!
僕が寝込んでいる時に、クリスタが記憶の洪水にさらされてしまったらフォローができない。
はあ~…。憂鬱だけど、眠気も限界だからそろそろ寝るか…。
(神様、仏様、ご先祖様。どうか、僕のかわいいクリスタが、このまま過去の記憶を思い出しませんように…。今生をうんと幸せに暮らせますように。お願いいたします……)
寝入り端、目をつむって心の中でお祈りをして、ついでに拍手を打ったら、部屋の空気がキンッと澄んだ気がしたが、スーっと意識がなくなり寝てしまった。
さてさて、誕生日の朝だ。
わりとスッキリ目が覚めた。
心配ばかりしていてもしようがないしな。気持ちを切り替えよう。
クリスタも隣で眼が覚めたようで、もぞもぞと毛布から顔を出した。
まだ、ちょっとポヤポヤしているが、ホワッと笑って今朝もかわいい。
寝ぐせで前髪がひょこんと跳ねている。後で直してやらないと。
誕生日だし、編み込みにして、水色のサテンのリボンでとめようかな…。
うん。きっとかわいい。
この後の行動を考えながら、クリスタに声をかける。
「ふふっ。クリスタ。おはよう♪」
「ユーリ。はよ~!」
「うん。きょうもげんきだねぇ。さあ、したくしようか」
「ん!」
それから、顔を洗って、エマに用意しておいてもらった服を着て、クリスタの髪をかわいく整えた。
今日の昼は、お誕生日のお祝いでみんなでごちそうを食べるそうだ。
屋敷のみんなが一緒にお祝いしてくれるんだって。
とっても楽しみだ。
午前中は、クリスタに本を読んで過ごした。
冒険譚だが、これがクリスタのお気に入りで、何度か読み聞かせている。
お転婆になりそうかな…。そんな予感…。
昼にはお祖母さんもいらして、みんなとワイワイ楽しく食べた。
お昼寝の後、何かに呼ばれている気がしてコッソリ庭に出た。
クリスタはまだ眠っている。
何だろう…?
そういえば、これまでも、たまに何か聞こえる気がして、キョロキョロ見回したことが何度かあった。
ホントに何だろうね?
ゆっくり歩いて裏庭にやってきた。
すると石垣の傍にある繁みがガサガサ揺れて、なにかが光った。
えっ………………。
何かと目が合った気がした。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!
その瞬間、僕は記憶の洪水に飲み込まれた………………りはしなかった……。
この身体はずいぶんとハイスペックのようだ。
何かと目が合ったと感じた瞬間、過去生の記憶は一気に甦った。
しかし、気を失って高熱を出す様子もなく、ヒューンって頭の引き出しに吸い込まれていく感じで、あっという間に整理がついてしまった。
これまでの心配はなんだったんだろうって、ちょっぴり悔しい……。
そうして、脳内整理をしていると、またガサガサ繁みが揺れて何かが飛び出してきた。
(友よ!!! 遅いぞ!!!!!)
「へっ? ぶっ!!!」
そう言って、僕の顔面に飛びついて、貼り付いた何か……。
過去生の記憶を探ってみても、その何かは見たことがない……。
顔に貼り付いた何かを剥がして見てみるが記憶にない…。
「だれ………?」
僕は、その小さな生き物に向かって呟いた。
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