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第一章
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しおりを挟む僕の顔面に貼り付いてきた小さな生き物。
顔から離してみても、心当たりがない。
色だけでみれば過去生の知り合いにいるが、大きさが全く違うしな…?
小さな生き物を目の前にぶら下げたまま、いろいろ考え込んでいたようだ。
その生き物が何やら怒っている。
「きゅっ! きゅきゅっきゅっーー!!!(なにぃ! 我がわからぬと申すかーーっ!!!)」
さっきは、頭の中だけに響いたが、今度はきゅっきゅとうるさく騒いでいる。
(んー……。 銀色で、よくよく見れば竜の形をしているんだよなぁ。ちっっっさ過ぎだけど……。子竜よりも小さいなんておかしいだろ……。
………まさかだよなぁ…………? あいつは竜体の時は巨大だったぞ? 人化の時は大きさ自在だったけど、竜体の時はジャマなほど大きかったはずなんだよなぁ………。
でも、さっき『友よ~』って言って貼り付いてきたっけ……。
んー……。よしっ! 聞いてみるかな? )
「ねえ、僕の昔の知り合いで、銀色の竜がいたん「我じゃ!!!!!!」………………」
(思いっきりかぶせて答えてきたよ……。 やっぱりあいつなのかぁ?)
「………シュヴァルゥ?」
そっと呼んでみる。
「きゅっ! きゅきゅきゅっ……。きゅっ、きゅ、きゅきゅうっ~……。(そうじゃ! そうじゃとゆうておるのに………。 我は待って、待って、待ちわびておったぞ……)」
銀色の小さ過ぎの子竜は、僕にぶら下げられたまま、ポロポロ泣き出してしまった。
「もう……。なんで小さくなったのかは、後でじっくり聞かせてもらうからね」
いろいろ聞きたいことはあるが、今はこの子竜を抱きしめよう。
僕との再会を泣いて喜んでくれている友を、僕の小さな身体で優しく抱きしめた。
しばらくして、子竜が泣き止んだので、近くの東屋に行ってベンチに座り話を聞くことにした。
「もう一度確認するね。シュヴァルで間違いないんだよね?」
「きゅっ! きゅきゅっきゅっ~(そうじゃっ! 我が名はシュヴァル******~)」
「おっおーー! 正しくシュヴァルだわ!! 何度聞いても聞き取れない名前だぁ………っ」
今度は僕が嬉しくて泣いてしまった。
幾度も転生を繰り返してきたが、過去生の知り合いに会うなんて、万に一つもあり得なかった。
転生する世界、時代、寿命……様々な偶然が重ならなければあり得ないことだと思っていた。
でも、出会えた。
友と再会できた。
転生を繰り返す度に記憶は甦るが、忘れなければいけなかった感情があった。
今日、確かに過去生の友と再会できて、過去のそれらの感情が昇華されたような気がする。
さてさて、じゃあ、ちょっとお話ししようかな?
「ねえ、シュヴァル。ちょっとお話しよう。でも、きゅっきゅっと喋らないでね。念話にしてくれる?」
(こうか?)
「そうそう。ありがとう。ところで、なんでそんなに小さくなったの?」
(うん? あの後、我は***が転生してくるのを待つ間に、***の産声で目覚める魔法をかけて眠りについたのじゃ。傷をいやすためにも長い時間が必要じゃった。 そうして、目覚めたら子竜になっておったんじゃ……)
「え? でも小さ過ぎじゃない? 生まれたての子竜よりも五割くらい小さいと思うよ?」
(眠りにつくときに、傷を癒すために小さき姿で眠りについたんじゃが、そのせいで更に小さき姿になったと思おておる。原因はようわかっておらぬ)
「そっか。前みたいな大きさにはなれるの?」
(目覚めてから時間が経てば、大きさ自在にできるようになると思っているんじゃ)
「じゃあ、しばらくはそのままなんだね?」
(たぶん、そうじゃろうな)
そろそろタイムリミットかな?
クリスタが目を覚ます頃だ。部屋に戻らないとだな。
シュヴァルも一緒に行くだろうか?
「ねえ、シュヴァル。
僕はそろそろ家に戻らないといけないんだけれど、シュヴァルはどうする?
僕と一緒に来るかい?」
(我も行く!! 一緒に行くぞ!)
シュヴァルは必死に言う。
「もう。そんなに必死にならなくても大丈夫だよ?
今のシュヴァルに、大切な存在があるかもしれないって思ったんだ。だから、僕が一緒にいたいって思っても、シュヴァルの都合があるから聞いただけだよ」
(我はまた友といるのじゃ! ずーーーーっと一緒じゃ!!!)
「ふふふっ。シュヴァル。僕に会えて嬉しい?」
(なっ、なっ、何をゆうておるのじゃ!)
「ふふっ。僕は嬉しいよ…。とっても嬉しい!!」
(………我も嬉しい……)
「ふふふっ。じゃあ、行こうか♪」
僕は、シュヴァルを抱っこして急いで部屋に戻った。
クリスタはまだ眠っていたが、もぞもぞしだしたからそろそろ起きるのだろう。
クリスタがシュヴァルを見た瞬間が問題だ。
記憶が甦るのかどうか……。
両親への説明もなんて言おうか…。
そんなことをツラツラと考えていたら、クリスタが起きたようだ。
もぞもぞと毛布から顔を出した。
「クリスタ。おはよう」
「はよ…」
うん。まだ寝ぼけているな。
じっと見ていると、意識がはっきりしてきたのか、僕を見て二パッと笑い、それから、僕が胸に抱いているシュヴァルを見た。
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