女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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お仕事 2

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「仕事……? 家賃の代わりに働くってことか?」
「くみひもって何? あたしたちにも作れるものなの?」

 手に焼き栗を持ったまま、近くの子と意見交換を始める子供たち。

 いきなりそんなことを聞かされても、そりゃあ困っちゃうよねぇ?

 子供たちの反応から自分の説明が不足していたことに気がついたミネルヴァさんが恥ずかしそうに頬を染めるのを見て、私の提案がミネルヴァさんにとってとても魅力的な物だと判断されたんだとわかり私の頬も緩む。

 みんなもそう思ってくれるといいんだけど……。

 子供たちの不安そうな視線に気がついたミネルヴァさんが、安心させるように笑顔を浮かべながら説明を始めようとするので私が代わることにする。

 今日はその為にみんなにここにいてもらっているんだしね!

 まずは、そう。組紐の説明からかな?

 私は笑顔を浮かべてみんなに話しかけ、みんなの注意が私に向いたことを確認してからスッと後ろを向いて身を低くする。

「これが<組紐>。みんなにはこれを作ってもらいたいんだ」

 今日の私の髪形は、サイドの髪を後ろで束ねたハーフアップ。髪を束ねるのに使っているのが<組紐>だ。

「うわぁ! きれいな紐~!」
「こんなきれいな紐、初めて見た!!」
「……ぼく、こんなの作れない」
「あたしにも出来っこないよぉ……」

 スレイとニールの馬具の刺繍用に染めたアラクネーの糸のあまり。その中から赤を主体にして組んだ組紐は私の黒髪に良く映えてくれて、子供たちの好評を得ることができた。と同時に、とても複雑に組まれているように見えるようで怖気づかせてしまう。

「ふふふっ、素敵でしょう? でもね、ある道具を使えばとっても簡単にできるんだよ? それでね………」

 私は満面の笑顔で振り向くと、ラファエルさんに合図を送る。

 説明はラファエルさんにお任せして、私は子供たちの様子を観察するのがお仕事だ。

 合図を受け取ってくれたラファエルさんはおもむろにアイテムボックスから契約書を取り出すと、子供たちにもわかるように、丁寧かつ簡単な言葉を使って説明を始める。


 1.この仕事はノルマなしの出来高制であること。他にやりたい仕事のある者には選択の自由がある。ただし、どんなに苦手だと感じても、最低1本を組み上げてから判断をすること

 2.素材は私が用意し、出来たものも全て私が買い取る。が、ミネルヴァ家で資金が用意できるようになり希望があれば、素材の買い付けから販売までを執り行う権利を譲渡すること。ただし変則的ではあるが雇用関係は継続されるので、毎月売り上げの10%を納めてもらこと。

 3.<組紐>の製作方法については私が<占有登録>をするので、期間内は口外禁止であること


 これらをゆっくりと、子供たちが理解できるように丁寧に説明してくれたラファエルさんは最後に契約書をミネルヴァさんに手渡し、内容の確認をしてもらう。

 言った通りのことが書かれていることをミネルヴァさんが説明すると、子供たちは興奮したように、❝冒険者にならなくても❞❝どこかに奉公に出なくても❞みんなと一緒に稼ぐ手段ができたことを喜び合い、子供たちの様子を見ていたミネルヴァさんがこの話を受けて私と雇用契約を結ぶことを改めて伝えると、大歓声で喜んでくれた。

 ずっと観察していたけど、どの子たちも嫌がるそぶりを見せなかったので(自分に組紐が組めるのかと不安がる子はいたけどね)、私たちは安心して雇用契約を締結することができた。











 さて。無事に契約を結ぶことができた今、雇用主の私にはやらなくてはいけないことがいくつかある。

「じゃあ、<組紐>の詳しい説明は晩ごはんの後にするとして。ミネルヴァさんとマッシモは子供たちをお風呂に連れて行ってくれるかな? 
 ああ、悪いけど、ヴァレンテくんだけは残ってくれる?
 ディアーナはお買い物をお願いね? ルシアンさんはディアーナの付き添いをお願い。荷物持ち兼護衛ってことで。 お金はこれで。
 晩ごはんは私が用意するから、みんなはゆっくりとお風呂を楽しんでから戻っておいでね~!」

 やらなくてはいけないこと。それは………、福利厚生!

 子供たちは突然の展開に、

「うわぁ! 今日もお風呂に行けて、夕食はアリスちゃんのごはんなの? アリスちゃんのごはんもお風呂も、だぁいすき♪」

 素直に喜んでくれる子もいれば、

「お風呂は4日前に入ったよ。 だから、お風呂の日は明日だよ?」

 と躊躇する子もいる。

 今までお風呂は5日に一度だったんだね? 

 でもね。私があなた達を雇うからにはお風呂は毎日入るんです。毎日のお風呂代が払えない?

 その費用を支払うのが、雇い主の私の役目なんだよ? みんなは代金の事なんか気にせずにお風呂に行っておいで!

 私が<福利厚生>を説明すると、最初は躊躇っていた子も嬉しそうにお風呂道具の用意を始めた。

 ここの子供たちも、本当はお風呂が大好きなようです♪
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