32 / 195
第2章 お稲荷様とふわふわスフレ
4.教え子
しおりを挟む
周囲に漂う食欲をそそる香りは、つい先週も嗅いでいた。
きんいろベーカリー。メモを何度も見直したが、地図は確かにこの場所を示していた。
(此処に豊月さんの部下の方が……? つまりそれって……)
客足も先週より少しは落ち着いたようで店先の行列こそ無かったが、窓から見える店内はまだ混雑していた。
『二人とも騒がないようにお願いしますよ!』
私は神様に小声で念押しした。今回、こむぎは神様に抱っこして貰う事にしたのだ。
『だいじょーぶじゃ、任せておけい』
説得力など全く無い、脱力しきった様子で返答する神様の腕の中で、パンの香りに反応しているのか、こむぎはしきりに尻尾を振っている。
『とりあえず入ってみますか』
大きな木製のドアから店内へと入ろうとすると、先に中からお客さんが出てきた。
『あっ、護堂先生!』
『奏汰……?』
まだ線が細く、女の子に見えなくもない整った顔立ちをしている少年が、真っ直ぐ此方を見つめていた。
彼、神岡奏汰は私の学校の生徒だ。二年生では彼のクラス担任をしていたが、三年生でも私は彼の担任になった。
勉強が出来て真面目な性格だが、明るく周囲からも人気がある。読書が好きで、現代文担当で隠れ小説家志望の私とは話が合い、自分で言うのもなんだが彼にはかなり慕われていた。
そして、彼と私の共通点としてはもう一つ、
『こんにちは』
『おう、元気そうじゃの』
神様が見えるという点があった。
きんいろベーカリー。メモを何度も見直したが、地図は確かにこの場所を示していた。
(此処に豊月さんの部下の方が……? つまりそれって……)
客足も先週より少しは落ち着いたようで店先の行列こそ無かったが、窓から見える店内はまだ混雑していた。
『二人とも騒がないようにお願いしますよ!』
私は神様に小声で念押しした。今回、こむぎは神様に抱っこして貰う事にしたのだ。
『だいじょーぶじゃ、任せておけい』
説得力など全く無い、脱力しきった様子で返答する神様の腕の中で、パンの香りに反応しているのか、こむぎはしきりに尻尾を振っている。
『とりあえず入ってみますか』
大きな木製のドアから店内へと入ろうとすると、先に中からお客さんが出てきた。
『あっ、護堂先生!』
『奏汰……?』
まだ線が細く、女の子に見えなくもない整った顔立ちをしている少年が、真っ直ぐ此方を見つめていた。
彼、神岡奏汰は私の学校の生徒だ。二年生では彼のクラス担任をしていたが、三年生でも私は彼の担任になった。
勉強が出来て真面目な性格だが、明るく周囲からも人気がある。読書が好きで、現代文担当で隠れ小説家志望の私とは話が合い、自分で言うのもなんだが彼にはかなり慕われていた。
そして、彼と私の共通点としてはもう一つ、
『こんにちは』
『おう、元気そうじゃの』
神様が見えるという点があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
391
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる