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第6章 あやかし子狐と三日月オムライス

23.親子とオムライス

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『出来ましたよ! 特製オムライス!』

 シュンと天太君が運ぶのを手伝ってくれ、直ぐに各々に料理が行き渡った。
 私はこむぎを抱き、オムライスの皿を持って縁側に座る。銀胡は隣で不思議そうに皿の上を眺めていた。

『うむ、とろりとした卵が美味そうじゃ!』

『それじゃあ、食べましょうか。いただきます!』

『まーしゅ!』

 膝の上でこむぎも手を上げた。隣にお父さんが来て居るのに、視線はオムライスに釘付けだ。

『なーや!』

 こむぎは此方を向いて、ぱくりと口を開けた。早く食べさせろという事らしい。

『はいはい、ちょっと待っててね』

 オムライスをスプーンですくって口に入れてやると、こむぎは目をキラキラと輝かせた。

(こうやって、食べさせてあげるのも最後なんだなあ……)

 こむぎのひとつひとつの動作が愛おしく、一層寂しさが募った。

『……言葉を覚えたのか』

 銀胡が静かな声で話し掛けてきた。

『あ……ええ。割と直ぐに話し出しましたよ。今まではあまり喋らなかったんですか?』

『……ああ』

 こむぎはもっと食べたいと口を開けて待っていたが、銀胡に気付くと何か言いたそうに、私と銀胡の顔を交互に見つめた。

『お父さんだよ、こむぎのお父さん』

『……とーた?』

 こむぎはくるりと銀胡に向き直ると、元気良く手を上げた。

『とーた!』

『久しぶり、とでも言っておるみたいじゃの』

 既に半分くらいオムライスを食べ終えた神様が笑った。どうやら、父親の事を何と呼んだら良いのか分からなかったようだ。
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