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しおりを挟むぼーと考えていると、先輩が俺に声をかける
「河田くん?」
「あ、すいません」
先輩は特に何もいうことなく、俺の背中をトントンと叩き離れた
「じゃあ帰ろうか」
ベンチから立ち上がり俺を見下ろす
「え?もう帰るんですか?」
まさかの言葉に思わず反応してしまう
だって一緒にいたそうにしてたんじゃ…
「え?逆にもっと一緒に居てもいいの?」
先輩は嬉しそうに笑って、冗談まじりにそんなことを言う
「あ、いや
なんでもないです…帰りましょう」
「うん、帰ろう」
先輩はもう一度だけフェンスの方に近づき夜景を眺めている
その横顔はあまりにも綺麗で、その瞬間を逃すのが勿体無く感じてしまった
ポケットに手を突っ込みあるものを取り出す
カシャ
こんな写真
なんで撮ったんだろ
先輩の綺麗な横顔が携帯に映し出される
写真を撮られたのに気づくことなく、先輩は俺に向かって笑顔を浮かべた
「先輩」
「うん?」
「ありがとう
誕生日悪くないって生まれて初めて思えたわ」
なんだか、恥ずかしくてぶっきらぼうに言うと先輩は目を潤ませて口をぎゅっと摘むんだ
一体どうしたのか?
様子を伺った
「なら、良かった
本当によかった」
声を震わせて言った後、俺にサッと背中を向けて肩を少しだけ震わせて袖で顔を拭っている
本人は隠しているつもりなのかもしれないけど泣いていることがバレバレだ
泣き虫
こんなことで泣くなよ
その姿に笑ってしまう
そんな先輩に気づいていないふりをして声をかける
「帰りましょう」
「……うん、帰ろう」
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