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しおりを挟む近くに置いてあった自分の荷物を持って玄関に向かう
後ろから臣がついてきて部屋の扉を閉める、この家に来てからやっと2人きりの瞬間
「千秋先輩、本当に帰るの?」
その言葉に内心は満面の笑みを浮かべたい程嬉しい
けど自分から帰ると言ってしまった以上今からやっぱり帰りたくないなんていうのも自分勝手な気がする
その気持ちが出てしまったのか、声には出さず頷くことで肯定しているという合図を送った
「じゃあこれだけ」
臣は僕をそっと抱きしめると、僕の顔を覗き込み顔を近づけた
「だっ、だめだよ」
「何で?」
「だって人が…」
「誰も見てない」
臣は僕に唇を重ねる
一瞬だけ重なってすぐに離れる唇が名残惜しい
もう一度されるかと思ったのに…
がっかりしていると臣の顔がまた近づいてきたため目を閉じると、しばらく間が空いて期待してた感触とは別のものが返ってくる
背中に大きな手が当たっているような感触
僕の横に並ぶと1度だけ背中をとんと叩いた
目を開けると臣は意地悪そうな微笑みを浮かべて僕の顔を横から覗き込んでいた
「はい、じゃあ気をつけて帰ってね」
そのまま扉の方に向かおうとする臣の手を掴んで引き止める。…もう一回くらいキスしてくれても良いじゃん!!
「ねえ!臣!」
繋いでいた手に指を絡めて簡単には離れようにする
それでも玄関のほうへと進もうとする臣を反対方向へと引っ張るも、僕がひ弱なせいか全くびくともしない
面白いものを見るような目で見ていた臣もあまりに必死な僕を見て、足を止めてくれる
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